ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

小学生のころ・3〜『つづり方兄妹』

2015年07月10日 | 日本映画
当時、我が小学校では年に何本か、映画鑑賞の日があった。
学校の近くには映画館がないので、音楽室で暗幕を引いて観るのである。
今でも2、3本の作品が記憶に残っているが、その中の1本に『つづり方兄妹』(久松静児監督、1958年)がある。
この映画は、題名を高峰秀子主演の『綴方教室』(山本嘉次郎監督、1938年)と、随分後まで錯覚していた作品である。

あらすじはこうである。
近畿地方のある町に、ボロボロな小さな家がある。
そこには、夫婦とその子供6人が住んでいる。
主人公の「フーフ」は小学校2年だったか3年生。作文が上手である。
中3の兄や、5年生の姉も作文がうまい。
家の中にはラジオなど、貧しい割には立派ないろいろな物がある。
これは全部、作文が当選し、賞品として貰った物だからである。
兄は中学生なのに、賞品の自転車で新聞配達をしながら家計を支えている。
姉はみつ口で障害を持っているが、学校の先生になりたいと言う希望を持っている。
ブリキ職人の父は頑固なため、仕事で衝突があると、すぐ酒を飲んでゴロ寝をしてしまう。
そんな貧しい生活の中で、ある日、モスクワの国際作文コンクールに送ってあった三人の作文の内、兄と姉の分の受け取りの通知が来る。
しかし、フーフのは、返事が来ない・・・・
後半の場面。
フーフは学校の帰りに捨て犬の子犬を拾う。
しかし、飼うことを父親に反対され、仕方なく小屋の所で世話をすることにした。
名前は「マル」。
その翌日、授業中に雨模様になって来た。
雨に濡れるマルが心配なフーフは、下校と同時に土砂降りの中へ、傘もなしに飛び出す。
マルはいない。
ずぶ濡れになったフーフは、その夜、高熱を出し寝込む。
医者に診せても、熱は一向に下がらず、向かいにある病院に診せようとしても、金がない。
そんな中で、とうとうフーフは死んでしまう・・・・
その後、フーフの作文がモスクワのコンクールで一等になったと、先生が生徒たちに知らせた。

私がこれを観たのは小学4年生の時である。その感想文が今でも残っている。
それまで思ったこともない同じ年頃の子が死ぬということ、
当時の私たちも決して裕福ではなかったけれど、もっともっと貧しい故に死んでしまうということ、
そのことが、この映画を観て私には衝撃だった。
それと、フーフの仲のいい友達の二木てるみの存在がとても強烈だったのか、今でも鮮明に、当時の彼女の顔が私の脳裏に焼き付いている。

この映画の基は実在の兄弟の話で、調べてみると「つづり方兄妹ー野上丹治・洋子・房雄作品集」として出版されたが、現在は絶版となっている。
映画の方もDVD化にされておらず、もう一度観たくても観れないのが残念である。

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