ポケットの中で映画を温めて

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『突撃』を観て

2021年02月20日 | 1950年代映画(外国)
『突撃』(スタンリー・キューブリック監督、1957年)を観た。

1916年、独仏戦争。
戦線は膠着状態となり、前線では強固な要塞と塹壕が造られていた。
その頃、パリから師団司令部に来たブルラード大将は、ミロウ将軍に「前線を完全突破するため、明後日までに“アリ塚”を奪え」と司令部が決定したと伝える。

ミロウ将軍から命令を伝達された歩兵連隊長のダックス大佐は、「無謀な攻撃は兵士を犠牲にするだけ」と抗弁するが、作戦は実行に移される。
しかし、ドイツ軍の応戦が激しくて隊は前進できなくなる。
それを知ったミロウ将軍は我慢ならず、味方陣地に砲撃を加えるよう命令する。
だが砲兵指揮官は署名文書がなければと抵抗し、結果、隊は敗退し元の壕に退却する羽目になる。

ミロウ将軍は作戦が失敗したことに怒り、翌日、軍法会議を召集することに決定した・・・

3中隊から1名ずつ、見せしめのために、罪人として3名が選ばれてくる。
一人目のパリス伍長。
上官のロジェ中尉とパリス、もう一人ルジューンが作戦前段の偵察に出た時、臆病風に吹かれたロジェ中尉の投げた手榴弾によってルジューンは死に、
それを知っているパリスは中尉から指名を受けた。
二人目のアーノー二等兵は、、過去に2回も表彰されているにも関わらず、くじ引きで決まった。
そしてフェロル二等兵は、上官から社会的に好ましくない人物として選ばれている。

軍法会議で弁護人を買って出たダックス大佐は鋭く問題点を突くが、所詮は形だけの裁判である。
当然のごとく3人は、敵前逃亡の罪名の下に死刑を言い渡される。

ダックス大佐は、いろいろと手を尽くそうとするが為す術もない。
獄中のアーノー二等兵は、やって来た教誨師を偽善だと殴りかかり、そのためパリスから殴られて頭蓋骨骨折をする。
処刑は翌朝7時である。
ダックス大佐は、ロジェ中尉を射殺隊長に選ぶ。
ロジェが生け贄としてパリスを選んだように、ダックスは臆病なロジェにわざと任務を与える。

組織の中の絶対命令。その理不尽さ。
それが戦時中の軍隊で剥き出しとなる。
アーノー二等兵は、頭蓋骨骨折してほどんど意識がないにも関わらず、ベットに縛られて立った形で銃殺される。
要は、上部権力者の野心と名声のために、下部組織の人間の命は取るに足らないもの、単なる駒となっている。

そのことを、まだ30歳にもならないキューブリックが、主演カーク・ダグラスとチームを組んで痛烈な表現で教えてくれる。
昔、テレビで見て朧気ながらの印象しか残っていなかったが、今回観て、これ程までの傑作かとの印象を新たにした。

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