ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

清水宏・9~『蜂の巣の子供たち』

2023年11月21日 | 日本映画
最近、DVDを鑑賞して感想を書こうとしても下書きのままになってしまう。
そんな中、先月、隣県で名作映画鑑賞会として上映された作品『蜂の巣の子供たち』(清水宏監督、1948年)を観てきた。

復員兵の島村は、下関の駅で晋公たち戦災孤児に出会った。
子供たちは叔父貴と呼ばれる男の手下となって盗みなどをしていたが、働くことの大切さを説く島村と一緒に旅するようになった。

一行は、知人を訪ねて島に渡るという夏木弓子を船着き場で見送った。
その時、義坊が彼女と一緒に船に乗っていってしまった。
島村と子供たちは塩田で働いた後、広島で弓子と義坊に再会。
島村は、自分がいた“みかへりの塔”で子供たちに勉強させてやりたいと弓子に語った。
弓子は東京へ行くと言い、義坊も涙ながらに彼女と別れた・・・
(「映畫読本 清水宏」より一部抜粋)

その後、島村と子供たちは、四国の山で木の伐採を手伝い、そんな中、義坊が病気になる。
熱にうなされる義坊が母の思い出につながる海が見たいと言うので、豊は義坊を背負って山を登る。
が、頂上に着いた時、義坊は息絶えている。

島村と子供たちは、叔父貴にだまされようとしていた弓子と再会し、旅を続ける。
最後に、非行児童の救護施設“みかへりの塔”に着いた彼らは、先生や子供たちに温かく迎えられた、というのが筋である。
戦後の世相を反映しオールロケで作成されたこの作品は、出来そのものもさることながらその時代の風景にも興味深い。

出演者はすべてシロウトであり、そこに登場する子供達は監督・清水宏が引き取った戦災孤児たちだと言う。



その子供たちが演じる内容はシロウトぽさがありながらも、実体験に裏打ちされた朴訥とした行動から目が離せない。
特に、病気の義坊を背負った豊が急な斜面を、これでもかこれでもかと山を登る長いシーンは胸を打つ。

偶然に上映会を知って、この作品を観に行った。
そのようなチャンスに巡り会えて幸せだったと思う。
そしてこのような作品を地道に上映される方々に頭が下がる思いがした。
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『シチリア・サマー』を観て

2023年11月17日 | 2020年代映画(外国)
初めてオンライン試写会に当選したので、早速観てみた。
題名は、『シチリア・サマー』(ジュゼッペ・フィオレッロ監督、2022年)。

1982年、初夏の日差しが降りそそぐイタリア・シチリア島。
バイク同士でぶつかり、気絶して息もできなくなった17歳のジャンニに駆け寄ったのは、16歳のニーノ。
育ちも性格もまるで異なる2人は一瞬で惹かれあい、友情は瞬く間に激しい恋へと変化していく。
2人で打ち上げた花火、飛び込んだ冷たい泉、秘密の約束。
だが、そんなかけがえのない時間は、ある日突然終わることに──。
(公式サイトより)

観た後で感じたのは、甘い同性愛の感じを受ける公式サイトのストーリーの違和感。
実際の内容は、ニーノの家族絡みの話であり、片やジャンニの家庭の内情。
そこの辺りが十分に描かれている上での、ゲイであるジャンニに対する周囲にいる若者たちや世間の反応。
そんなジャンニと偶然知り合ったニーノ。
新しい仕事を求めるジャンニとそれに関わるニーノの、二人の心の交流。
だから決して、公式サイトのストーリーにあるような、あからさまな感じの関係ではなく、秘めたままの友情以上の心情と言ったところ。

最近は同性愛者に関する作品もたくさん作られるし、世の中もまだまだと言え、その事に以前より理解が進むようになってきた。
だから、この作品も主人公であるニーノとジャンニに対して肯定的な作りとなっている。
ところが公式サイトでは、“2人の美しい少年が死んだ──。”と、おっぴらげに披露しているから、これは作品に対するルール違反でないかと思う。
そのことがわかるのは、映画が終わってからの字幕である。
そして実際にあった話ということも。
そのことは本来書いてはいけないと思うけれど、公式サイトがバラしているから、まぁいいかとも思う。

いずれにしても、作品としてはよく出来ていて一気に観れたけど、最後の字幕にあった二人の死に至る実情が知りたいと、心残りもした。

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