ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『CLOSE/クロース』を観て

2023年07月26日 | 2020年代映画(外国)
『CLOSE/クロース』(ルーカス・ドン監督、2022年)を観てきた。

花き農家の息子のレオと幼馴染のレミ。
昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべる。
24時間365日ともに時間を過ごしてきた二人は親友以上で兄弟のような関係だった。

13歳になる二人は同じ中学校に入学する。
入学初日、ぴったりとくっついて座る二人をみたクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。
「親友だから当然だ」とむきになるレオ。
その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。

ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。
毎日一緒に登下校をしていたにも関わらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。二人はその場で大喧嘩に。

その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、課外授業にレミの姿はなかった・・・
(オフィシャルサイトより)

思春期のころ、誰にでも経験がありそうな、端から見て兄弟以上にみえる二人の友情。
と言うか、精神的には友情よりもっと深い恋愛に近い関係か。
それを中学に上がり、周囲から冷やかされる。

そのことをレオは意識し出すが、レミとしてはレオの態度に納得がいかない。
通常は、若かったころの一時期の二人の関係で終わりそうなものを、この作品ではそのようにはならなかった。

傷つくレミ。
そして、レミがいなくなった後のレオの後悔。
取り返しがつかなくなってしまった喪失感。
それを引きずって行かなければならなくなってしまって深く傷つくレオ。

ラスト、花畑でこちらに振り返るレオの顔。
その表情は、こちらの胸に深く染み入り、今後忘れることができないではないか。
重く響いてくるこの作品に出会ったことに感謝したい。
コメント (4)
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『子供たちは見ている』を観て

2023年07月20日 | 戦前・戦中映画(外国)
『子供たちは見ている』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1943年)を、県図書館からDVDを借りてきて観た。

中流家庭のアンドレアとニーナは、息子プリコと共にローマ郊外のアパートに住んでいた。
家庭は一見幸福そうにみえたが、実はニーナにはロベルトという愛人がいた。

その日もニーナは、プリコと散歩がてら公園に行き、プリコが人形芝居などに夢中になっている間を利用してロベルトと密会した。
ニーナはそこで、ジェノヴァ行き列車で駆落ちしようとロベルトに迫られ、夜、アンドレアの留守を見計って家を出た。

プリコを残されて困ったアンドレアは、取りあえず洋裁店を経営しているニーナの姉の許にプリコをあずけ、翌日、田舎に住む自分の母のところへ連れて行った。
母は娘パオリーナにプリコの世話をいいつけたが、ある晩パオリーナが恋人と密会している時、それを垣間見たプリコは誤って彼女の頭上に植木鉢を落してしまい、
その結果、またアンドレアの許に戻されてしまった・・・
(映画.comより修正して一部抜粋)

その後、プリコが高熱を発したためかそれを知ったニーナは、再びプリコと夫の元に戻ってくる。
アンドレアはプリコのためにニーナとよりを戻し、三人の生活は平穏となってリゾート地へ海水浴に出かけた。
ところが、どこで知ったのかそこへロベルトが現われる。

ロベルトは再び執拗にニーナを口説く。
社用でアンドレアが先に帰ったのを利用し、ロベルトとニーナは束の間の逢瀬を楽しんだ。
それを見てしまうプリコ。
母親が自分から去って行くのではないかと考えるプリコは、ローマの父の元へ帰ろうと一人、鉄道線路をとぼとぼと歩きつづける。

まだその先は続くが、プリコが母親とロベルトの仲を目撃する場面は先の公園でもあり、要は大人の事情で、頼るべき親から見放される子供の状況が映し出される。
子供の視点から大人の世界ないし社会を見たデ・シーカの名作『靴みがき』(1946年)、『自転車泥棒』(1948年)の原点はこの作品からかなと、やや甘い出来としても納得できる内容だった。
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『悪魔の発明』を観て

2023年07月09日 | 1950年代映画(外国)
DVDで『悪魔の発明』(カレル・ゼマン監督、1958年)を観た。

科学者のトマ・ロック教授とその助手アールは、新型爆弾の開発をしていた。
しかし、完成まであとわずかなところで、彼らは何者かによって拉致されてしまう。

事件の黒幕は大富豪のダルティガス伯爵。
彼はロックの開発した爆弾を使って世界征服の野望を燃やす。
ロックに爆弾の完成を急がせるダルティガス。
一方、監禁されていたアールは世界中にSOSを発信するのだが・・・
(DVDパッケージより)

ロック教授の助手アールの冒険談として、物語は進む。
場所は、大西洋航路にあるダルティガス伯爵の根拠地である死火山バックカップ島。
ここにロック教授とアールが拉致されてくる。
相手は伯爵のほかに、海底都市の設計者の科学者セルコと船長スペードたち。

伯爵たちは、所有する潜水艦によって南大西洋で最大の商船アメリアを撃沈する。
そして大破し海底に沈んだアメリアから財宝を運び出す。

片や、偉大な発明が悪魔の手に渡るのを阻止しようとするアール。
幽閉されている小屋から、早く世界に知らせようと手紙を書いて気球を飛ばす。
と、言うように話は進んでいく。

この作品は、チェコ・アニメの三大巨匠のひとりカレル・ゼマンがジュール・ヴェルヌの原作を
ストップモーションアニメ、切り絵、銅板画、実写を合成して作り上げた特撮冒険SF映画という謳い文句のしろもの。

確かに実写とアニメ、銅板画が見事に溶け込んでいて仮想空間というより、もっと現実感により近いと錯覚したりする。
今は冷静にそのような感想を述べたりしているが、例えばこの作品を10代前半に観たのならば、
そのインパクトにより後々まで私に何らかの形で影響を与えた作品だったのではないかと思える。
そんな貴重な体験を今回のDVDで得たりした。
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