ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

成瀬巳喜男・12~『女人哀愁』

2020年03月14日 | 日本映画
『女人哀愁』(成瀬巳喜男監督、1937年)を観た。

銀座のレコード店に勤めている河野広子には、母と弟正雄がいる。
新聞社勤務の従兄の北村良介とは幼なじみで、何でも話せる仲である。
今日も広子は良介を呼び出し、見合いをしたことに対し意見を聞く。

自分を古い女だからと思っている広子は、結局、見合いをした裕福な堀江家の新一と結婚する・・・

堀江家には新一の父母と、女学生の妹道子に小学生の弟がいる。
父母は、何事にもつけ広子がかいがいしく働くのを有り難がり重宝する。
わがままな道子も何かと頼み、小学生の弟は少しでも勉強の相手をしてもらおうとする。
女中がいるのに堀江家の家族は広子に、全ての用事を言いつける。
そして夫は、仕事で遅くなるからとバーから電話して、毎晩のように帰りが遅い。
そればかりか、広子がたまたま銀座に出掛けて、久し振りに良介と会っている所を同僚が見たことに、人妻なのにと咎める。

そんな中、駆け落ち同然に家を出た、上の妹洋子が帰ってくる。
洋子は、貧乏な益田との生活がいたたまれないため、会って話がしたいと訪ねてくる益田に会おうともしない。
その益田を追い返す役目を広子が担わされる。

この家では夫も含め、嫁を女中同然に使い、それに報いてくれていたら感謝するが、一家の団欒からは常に除外する。
そんな状況の中で、人に尽くすことが幸せだと思っていた広子に、疑念が湧いてくる。

益田と洋子の緊迫した状況の中で、広子は最後の最後で、新一に楯突く。
「出て行け」という新一に、「お暇させて頂く時が来ましたわ」と、異様なほどの笑みをニヤリと浮かべる。
「私は可愛がって頂きました。しかしそれは、座敷の飾り物となんの変わりがあるのでしょう」
「ただ私が居れば、この家では便利だったからです」と意志を明確にし、広子は出ていく。

そして、不幸な結婚生活から自立しようとする。

広子は、入江たか子。
なるほど、これが入江たか子かと、唸りたいほど感心する。
単純そうな話であっても、ここに映し出される映像は、何とも形容し難いほどの味わいがあり、深さがある。
それと付け加えておきたいのが、風俗として、ダンスを踊ることが当時の若者にとって一般的だったようで、
部屋で“ブルー・ムーン”の曲に乗せて踊る場面が微笑ましかった。

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