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鴨渡る鍵も小さき旅カバン 草田男

2016年08月28日 | 俳句
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中村草田男
鴨渡る鍵も小さき旅カバン

旅する鴨が空を渡ってゆく。ふと思い立った小さな旅の小さな鞄を携えて旅人は空を見上げている。お前も旅人かと呟いたとき、鴨の列は底抜けに青い空に吸い込まれる様に消えて行った。日々の愚行に汚がされた小生にとっては消え去ることに一種の憧れを感じている。小生の住まいは利根川と江戸川とそれを繋ぐ利根運河にほど近い。何かにつけて土手へ出る事が多い。草叢は日々四季の表情を変えている。そんな所に佇んでいるある日ふと空が騒がしくなった。見上げると長い長い渡りの列である。やがて鳥たちも空に沁み込む様に消えて行く。無性に旅に出たくなる。机の下には何時もの旅鞄。最小限のグッズが常備されている。いざ日常を消さん。『長子』(1936)所収。:やんま記

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