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新涼や父の形見の竿を振り 鶴巻和男

2017年10月11日 | 俳句
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鶴巻和男
新涼や父の形見の竿を振り

涼しさが秋に入って肌に感じられる様になった。初秋の空の下釣りに出る。竿は父の形見の和竿である。川であれば落ち鮒とか落ち鮎といったところ。河口の鯊釣りもこの時期佳境を迎える。昔和竿の伝統工芸師と江戸前鯊釣りの会で船を仕立てたことがある。漆を塗る前の竹竿の試し釣りであったが全舟入れ食いの釣果であった。今でも七不思議と言われるのは両側に座った名人が入れ食いで中の私がぜんぜん釣れなかったのである。私の周辺の鯊を見事に掬い取ってしまった名人の技には脱帽以外なかった。往時茫々。:俳誌『百鳥』(2016年12月号)所載。


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