政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

無能な政府と無力な日銀・麻生の経済対策の先に待つもの

2008-10-13 11:46:01 | 麻生太郎
「解散より経済対策」というのがすっかり定着したかの感がある自民党。
国民もなんとなく納得してしまいそうな雰囲気に陥る。
しかし、自民党の言うところは減税と公共事業、付け足しのように中小企業の資金繰り対策。財源が足りなければ赤字国債。
今起こっている世界的な金融危機対策としては、あきれるほどミミッちくて話にならない。
追加経済対策の検討も始めるようだが、聞こえてくるのは高速道路の期間限定値下げ、証券優遇税制の延長とか自社株買いの一時的な緩和程度。
世界的な金融危機はますます規模を広げ、深刻度をましているが、出てくるのがこの程度の些末な対症療法。
いずれこの危機は納まるだろうが、そのときこの国はさらなる悪状況に陥っているだろう。
この危機を乗り切るために日本もかなりの犠牲を払わなければならないのは間違いないが、その先に待っているのがもっと暗い未来では悲しくなる。
自民党の出す小手先療法では、下り階段に踊り場をチョビッと作る程度。その先はますます急角度の下り階段。

こんなことを繰り返してきたのが自民党であった。
その場しのぎを繰り返した結果が国・地方・債務保証等合わせて1000兆円の借金。
解散前提の麻生内閣では本格的な経済政策は打ち出せないし、この国のかたちを根本から変えていこうという意志もない。また変えなくてはいけないという認識もない。

今回の経済危機に際して、日本政府は具体的な行動はまだなにもとっていない。日銀がわずかに資金供給を増やしているだけである。
無能な政府と無力な日銀。

欧米主要6カ国中央銀行が協調利下げ (日刊スポーツ・共同 10/8)
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など主要6カ国・地域の中央銀行は8日、協調利下げすると発表した。いずれも政策金利を0・5%引き下げる。日銀は利下げには参加しないものの、強い支持を表明。市場へのドル資金供給などを通じ協力を続ける。


今回の協調利下げは中国なども加わり合計10ケ国の前代未聞の規模のものだった。

これに日銀が加わっていない。
日銀の判断は正しかったのか?
たしかに日本の政策金利は各国に比べて低すぎる水準にある。下げ余地はない、という理屈も一応うなずけないこともない。
0.5%という利下げ幅は、もし日銀が同調すれば、ゼロ金利になってしまう。
日銀がためらうのも無理のないことかも知れない。
しかし、その結果は海外との金利差の縮小となってあらわれ、間違いなく円高要因になる。
日銀白川総裁の発言も不思議なものだった。

白川日銀総裁記者会見の一問一答 (10/7)

 ──協調利下げの可能性があるのとの見方が浮上している。 

 「金融政策の協調という場合に、各国の経済物価の状況からすると、本来は望ましくないことを協調して行うということが協調という言葉のニュアンスだと思われるが、そういう意味での協調はむしろ望ましくないと思われる。たまたま各国が判断して、金利の変化の方向がそろったケース、それは協調という言葉で表現できるものではなく、そのような政策が適当と判断したということなので、あえて協調という形容詞を使う必要はないと思われる」

”協調”という行動自体を否定している。この理屈でいうと、今回の協調利下げは各国の個々の判断が偶然重なったもの、ということになる。
しかし、こんな姿勢でG7の舞台で何か発言できるのか?
”協調”を否定しておいて、何を目指すのか?
案の定、G7での日本の姿勢は全く伝えられていないし、出てきた声明は意欲の表明にすぎず具体的な方策はゼロ。世界の市場の評価は今日開かれるアジア・ヨーロッパそしてアメリカの株式市場を見てみなくては分からない。残念ながらといおうか幸いにもと言おうか、日本市場はお休み。
世界の反応をみてから、ということになる。
実際には各国が具体的な数字を出してからでないと、本格的な動きは表れないだろう。

ところでこの無力な日本銀行である。
民主党の拒否にあって副総裁一人が欠員のまま。現総裁は立て続けに総裁候補を拒否された自民党の窮余の一策で副総裁を昇格させた間に合わせ人事。
しかし、日銀のこの体たらくの背景にはこれまでの大蔵省(財務省)の日銀支配の歴史がある。
総裁は大蔵省と日銀出身者の交代制。実質大蔵省の支配が続いていた。
(今回の総裁人事のごたごたは民主党が財務官僚の天下りを拒否したことに始まっている)
つまり財政政策が金融政策に優先していたのである。
借金1000兆円の国家財政。
諸外国並みに5%の金利にでもされたら金利払いだけでも国・地方合わせて50兆円の支出になる。財務省は日銀支配をやめられるはずもない。
自民党内閣も景気対策として国債発行に頼り続けてきた。財政悪化を無視して目先の景気対策を重視し、低金利を日銀に押しつけてきたのである。
 日銀としては長年続いたゼロ金利を抜け出したばかり。利下げの余地がないというより、下げたくなかったのであろう。
去年から二度の金利上げで0.5%まであげたのだからその分だけは下げられる理屈なのだが、白川総裁の発言はその意志がないということを示している。
低金利維持という自民党・政府、金利正常化という日銀の命題。矛盾する二つの命題に挟まれてなすすべのない日本。

この危機を乗り切ったとしても、また次の危機がいずれ訪れる。
このままでは、そのときまた同じ愚を繰り返さなければならない。
中央銀行たる日本銀行の在り方を根本的に考える時期にきていることは間違いない。

これは麻生内閣に求めることではない。
1日も早く本格政権をつくり、国会での十分な議論を経て、あるべき政府と中央銀行の関係を打ち立てなければならない。




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