アヴィニョンの夫妻の、いよいよ私の得意分野、奈良の案内である。
朝、旅館に迎えに行き、一緒に東大寺へ。
「大仏様」が奈良にあってよかったと思う瞬間である。
まずは皆、この世界最大の木造建築に感動される。
ベストスポットからの写真を勧める。
大仏殿の「柱くぐり」にムッシュは挑戦しようとしたが、とても無理だった。入ったのは「頭だけ」というところだった。
時間があれば、建立時にあった七重の塔の場所を教えることもあるが、一回目の来日では無理なことが多い。
次に向かったのはお水取で有名な二月堂である。
二月堂にまつわる伝説を三つほど話す。
反応が楽しみな瞬間である。
真夏の観光は暑い。
テラスのあるレストランで食事を考えたが、あいにく満席だった。
しかし「こんなレストランが奈良にあるの?」と言わんばかりだったので、とりあえずお茶だけなら席があると言うのでお茶にした。 そして新公会堂へ行き、食事した。
当時はまだ奈良ホテルの経営のレストランが入っていて、和食の苦手な人には好評だとこの時知った。
前もって日本的な所へ予約を入れては失敗続きだったが、行き当たりばったりで入った洋食系は、この夫妻には一番のおもてなしになっていた。
特にこちらは奈良ホテルほど高くなく、味・サービスは奈良ホテルとほぼ近いものなのだ。
確か海老フライランチをオーダーしたと思うが、魚が苦手でも海老は大丈夫なこともわかった。 春日大社、
奈良公園を抜けて、奈良ホテルが精いっぱいの夏の案内であった。
夜は町屋を利用した豆腐料理のお店へと案内したが、残念ながらこちらも不評であった。ただ町屋の趣は大変気に入ったようだ。
この夫妻、京都・奈良以外で、ムッシュのたっての希望で、高野山宿坊に泊まり、あいにくの雨だった。
私から見ればどこが面白いのだろう?というような光景でしかないのだが、
日本の瓦の屋根からの落ちる雨だれの音に感動し、動画を撮って満足していた。
しかしやはりここでも食事は一番のネックだったようだ。
「日本に住む夢を見る」とまで言うムッシュだが、「それには日本食を克服しないと」と言うと、「カレーと焼そばは食べられるから」と笑った。
まあ日本のカレーは評判で、独自なものと言えないこともないが、これらを日本食と言う彼にとっては、残念ながらその夢は実現されることはないだろう。
若いフランス人の中には、若い日本人より日本食通のがいるが、年配のフランス人には、ビールでさえ飲まない人もいるくらい、食に関しては消極的なことが多い。