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立教大学 vs 山梨学院大学(第3回関東大学春季大会-2014.5.11)の感想

2014-05-11 20:35:39 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


リーグ戦グループで今シーズンとくに注目しているチームは3度目の1部リーグ昇格を果たした山梨学院大学。過去1998年度、1999年度および2003年度の3つのシーズンを1部で戦ってきたわけだが、一度も勝利の美酒を味わっていない。だから、注目ポイントは、ずばり3度目の正直ではないが今シーズンこそは悲願の初勝利なるかということになる。

山梨学院の戦いは2部降格後も何度か入替戦で観ており、中にはラグビーの内容では1部リーグのチームを凌ぐとさえ感じさせた試合もあった。そして昨シーズン、入替戦で拓殖大を撃破し1部復帰を果たす。この試合では過去の山梨学院のイメージ(組織的に戦えるものの、パワー不足に泣く)を払拭した感があり、そのまま1部リーグで戦える力を持っているとすら感じさせたものだ。

ただ、昨シーズンのチームには、SOに1部も含めてもリーグ戦Gナンバー1と言ってもいいティモシー・ラファエルがおり、CTBにも卓越したリーダーシップを発揮した後藤がいた。彼ら2人が2枚看板としてチームを引っ張っていたのが昨シーズンの山梨学院だったのではないだろうか。だから、キーマン2人が卒業したことでチームがパワーダウンしていないだろうか。しかし、そんな不安もセブンズとはいえ、コンソレーショントーナメントで見事優勝に輝いた東日本大学セブンズを観て払拭されつつあった。また、春季大会の緒戦では目下のライバルである立正大学を壮絶な撃ち合い(あくまで推測だが)の末撃破している。

果たして(悲願の1勝は別にして)山梨学院はどんなチームに仕上がっている(あるいは、仕上げようとしている)のだろうか。春季大会の試合は山梨で行われることが多いため、我が家から最も近くにあるグランドに観戦に出かけることにした。対戦相手は、奇しくも対抗戦GでAに復帰を果たしたばかりの立教大学で、リーグこそ違うものの因縁の対決と言えなくもない。立教はステディなラグビーを指向しているチームであるだけに、山梨学院の現状の力を測る上でもいい対戦相手と言える。実際に、一昨年には同じ場所で拓大の変化(進化)を確認できたことが記憶に新しい。



◆風薫る天然芝のグランドに到着すると

この試合(公式戦でAマッチ)に先駆けて、11時から練習試合(Bマッチ)が組まれていた。その第1試合のキックオフに間に合うように家を出る予定だったが、突如野暮用が入ってしまい予定時刻の出発を諦める。用事が終わった段階では12時20分になっていた。このままグランドに向かっても後半のキックオフに間に合うかどうかなので、どうするか。結局、チャンスはこの日しかないだろうということで、40分だけでもいいから試合を観に行くことにした。幸いにも一昨年の拓大戦での(あわやロストの)経験から、グランドに行く道もわかっている。自宅から20km余りの富士見総合グランドに辿り着いたのは、ちょうど前半の戦いが終わった時だった。

さて、立教大学のグランドは大学では数少ない天然芝。風薫る5月そのものといった感じで、何とも言えない懐かしい香り(少年時代にはすぐ近くの芝生のグランドで野球を楽しんでいた)が漂ってくる。試合のレベルが上がるのとは反比例する形でコンディションが悪化していく秩父宮のことを思うと、いずれラグビーも国際マッチを含めて人工芝が当たり前になるのではないかという気持ちになる。しかし、ワイルドな自然そのものといった天然芝のピッチだからこそラグビーも盛り上がるのではないだろうか。立教大学でラグビーを観ることは、ある意味でラグビーの原点を振り返ることでもあると思う。

前置きが長くなってしまった。前半終了時点で31-5と山梨学院がリードしている。立教ファンには申し訳ないが、これは想定内といえる。ただ、強力な留学生がリザーブに1人という状況。スタメンの選手達の体格のデータを見比べても、山梨学院の選手達の方が概ね小さい数字が並んでいる。前半は観てはいなくても、このまま行けばハイスコアの一方的な戦いになるのではと予想してしまうのが自然だと思う。前半の戦いのことに想いを馳せているうちに後半のキックオフとなった。



◆立教が建て直しに成功?/後半は接戦に

前半のリードで和やかや雰囲気が漂う山梨学院応援席に対し、緊迫感がみなぎっているように見える立教サイド。後半も序盤は前半の勢いを踏襲する形(あくまで推測)で山梨学院が立教にプレッシャーをかける。全般的に170cm台前半の小柄な選手が多い山梨学院にあって、一際大きな選手は主将を務めるFL6の大石力也。去年まで拓大(このチームも小柄な選手が多かった)に在籍していたウヴェのことを連想させるガリバーのような存在と言える。実際に大石がボールを持つとパワフルでなかなか止められない。リーグ戦Gの各チームが留学生以外にマークすべき山梨学院の選手はこの選手と言うことになるだろう。大東大に例えれば長谷川をイメージさせる選手ということになる。

早速キックオフから僅か1分にして、山梨学院は立教陣22m付近で相手ボールスクラムを強力に押し込みコラプシングの反則を誘う。ここから山梨学院はPKからゴール前でのラインアウトを選択。モールをぐいぐい押し込んでトライを奪い36-5とリードをさらに拡げる。このまま行けば、得点ボードの山梨学院の側のみの数字が変わっていくだけかと誰もが思った、体格を感じさせないパワフルなプレーで奪ったトライと言える。リスタートのキックオフでもFL大石が自陣から力強くボールを運び立教陣22m付近まで到達。フォローしたFL7渡辺にフィニッシュを託すものの、惜しくもノックオンとなる。

立教ボールスクラムでのリスタートもサイド攻撃で反則があり、再び山梨学院がゴール前ラインアウトから追加点を狙う。しかし、ここはモールを押し切れず、ラックからオープンにボールを展開したところで山梨学院にオーバーザトップの反則。立教は、すかさずタップキックからの速攻で一気に攻め上がり、再び山梨学院の反則を誘う。この積極的なプレーがゲームの流れを変え、テンポ良く仕掛ける立教がペースを掴んでいくからラグビーはわからない。立教には山梨学院の大石のような選手こそ居ないが、左WTB諫山と右WTB青木の2年生コンビが俊足を活かして再三ウラへ抜ける展開が増えてきた。

ハーフタイムの指示で立教ベンチからは山梨学院のブレイクダウン周辺のディフェンスの甘さを突くようにというような指示が出たのかも知れない。立教がHB団を中心にヨコとタテをまじえたアタックを試みるごとにFB篠崎(前半30分に中島と交替)も加わったバックスリーの快走が目立つようになってくる。9分には諫山からラストパスを受け取った青木が、また17分にはPKからの速攻でウラに抜けた諫山からラストパスを受けた篠崎がゴールラインを越える。さらに24分にも立教は自陣からのFL小松の突破をきっかけに、フォローしたHO眞壁主将がゴールポスト直下までボールを運ぶ。

立教の鮮やかな3連続トライで24-36と立教のビハインドは8点に縮まり、逆転も視野に入ってきた。逆に山梨学院はオープンに展開してもなかなかラインブレイクできず、FWのタテ突破意外に有効な攻撃手段が出てこない。立教のトライラッシュと山梨学院の攻めあぐみの中で時計が進んでいく。しかしながら、山梨学院は29分には立教陣ゴール前で得たスクラムからサイド攻撃を繰り返してFL渡邊が、32分にも相手キックオフに対するカウンターアタックからオープン展開で攻めてCTB曽根がノーホイッスルトライを奪い、粘る立教を一気に突き放す。

立教は終了間際の40分に山梨学院陣でのラインアウトを起点とした連続攻撃からLO民部田がゴールラインを越えて一矢報いるがこのまま試合は終了。最終スコアは31-48だが、後半に限っては26-17で立教の得点の方が山梨学院を上回った。また、トライの形もボールを動かし続けてバックスリーの決定力に託す理想的な形と言える。後半40分のみの観戦なので多くは言えないが、敗戦の中にも光明が見えた立教に対し、勝利の中にも課題が多く見つかった山梨学院といった、スコアとは逆の形の試合内容になったという印象を強くした。



◆前途は厳しいが楽しみな立教

立教のラグビーは殆ど観ていないのだが、後半に見せた明確な意図を持ったゲームの組立と修正能力はチームの持ち味と言っていいのではないだろうか。卓越した選手こそ居ないが、HB団のパス回しとバックスリーのスピード、そしてそこに絡むFWの走力のある選手を活かしたコンビネーションラグビーという形はできていると思う。ただ、対抗戦Gの上位校との対戦を考えたら、それがどこまで通用するか?という部分は確かにある。とはいえ、筑波の次に追いかけてみたいチームがまたひとつ加わった。

◆ホロ苦勝利で前途多難?を感じさせた山梨学院

乱打戦?の末、立正大に勝利して期待が高まった山梨学院だったが、本日の内容なら秋のリーグ戦では前途多難と言わざるを得ない。アタックの意図が明確になっていた立教に比べると、チームの仕上がりはまだまだという印象が強い。とくに、再三突破を許した脇の甘いディフェンスの強化が最重点課題のように思われる。もちろん、秋のシーズンでは2人の留学生を軸としたパワーアップしたラグビーで「下克上」を果たすことも夢ではない。ただ、リーグ戦で戦うことになるチームの選手達に比べれば全般的にパワー不足の感が強く、コンビネーションを磨いていかないとゴールラインは遠いという現実が待ち受けているように思われる。1試合のしかも40分のみで、かつ主力抜きという状況ではあるがそんな印象を持った。

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