「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

東海大学 vs 大東文化大学(2012.11.04)の感想

2012-11-05 01:53:45 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

本日は晴天微風の絶好のラグビー日和。秩父宮ラグビー場に行く場合、いつもなら地下鉄の外苑前下車なのだが、今日は午後1時過ぎに渋谷に着いたので青山通りを歩いてみることにした。千駄ヶ谷、信濃町あるいは原宿といろいろな徒歩ルートがあるが、歩いていて一番華やかで楽しいのはやっぱりこのルート。秩父宮が賑わっていた頃は地下鉄を諦めてよく歩いていたことを思い出す。それでもキックオフ30分前には到着。今日の試合も一方的な試合になりそうだが、先週ほどは足取りが重くない。やはり、調子は出ていないとはいっても大東大の頑張りに期待したい部分があるからだろう。

さて、東海大と大東大の対戦では、忘れられない試合がある。それは10年以上前の2001年の同じ時期に行われた試合。場所は東海大が1部昇格を決めた時と同じ熊谷ラグビー場のBグランドだった。その試合では、1部に復帰して2年目の東海大が大東大を破ったのだが、選手達の喜びようは半端ではなかった。「目指せ!大学日本一」のスローガンのもとに新たな歴史を作り始めた東海大にとって、日本一に3度輝いている大東大を倒すことはひとつの目標だったのだろう。

だが、この試合のことをよく覚えているのは東海大に「その後」があったから。そのまま勢いに乗れば上位グループ入りも夢ではなかった東海大だったが、僅か1週間で失速して中央大に大敗。そこで完全に勢いを失って7位となり、しかも入替戦では大苦戦を強いられた。後半38分に起死回生の逆転トライを奪って29-26で拓大を破り辛くも2部降格を免れたのだった。場所は同じく熊谷ラグビー場のBグランド。当時は大東大の方が格上だったが、それも完全に昔話になってしまった。大東大の最高に楽しいラグビーが目に焼き付いている者としては、大東大に何とか当時の輝きを取り戻して欲しいと願っている。FW、BK関係なく奔放にボールを繋ぎ、フィニッシャーにボールを渡すラグビーはリーグ戦Gの貴重な財産だと思っているので。

しかし、現実は厳しい。大東大のメンバーはおそらく主力メンバーの半分くらいが負傷で欠けている状況。中でもテビタ、フィリペの不在が続いているのが痛い。そして、本日はSHの茂野主将の名前もメンバー表から消えた。正に緊急事態で、SHにはここまではリザーブだった木藤古(2年生)がスタメンで起用された。ずっとスタメンで頑張っているルーキーのSO碓井とのフレッシュなHB団誕生。というように置かれている状況は厳しくても、大東大は前を見て戦うしかない。幸いにも、ルーキー長谷川が既に中核を担わんばかりに頼もしくなっているし、PRの必殺タックラー高橋も元気だ。とにかく意地を見せて欲しい。

対する東海大はLO三上の完全復帰により盤石のメンバーになった。リザーブに選手もいざというときにはスタメンの選手以上の仕事ができる豪華布陣。ただ、東海大は最後の1ピースが埋まらない。それは強力FWと快足BK陣を繋ぐ重要な役割を担うSH。ここまでの戦いでは2年生の松島(緒戦スタメン)と小泉(2~4戦スタメン)の二人の併用といった感じだが、まだ決定打は出ていないようだ。そして、本日は4年生の尾崎が初スタメン(リザーブは松島)となる。東海大のチーム作りに関してはおそらく本日が最終テストのタイミングのはず。決定力のあるバックスリーで取ることを目指している東海大としては、FWをしっかりコントロールでき、BKにテンポよくボールを供給できる選手を早く固定したいところ。東海大の本日の注目ポイントはSHの動きと言うことになる。明確な力の差はあっても見どころはいろいろあるのがこの両チームの対戦だし、またそうあって欲しい。

[前半の闘い]

メインスタンドから観て左側に陣取る東海大のキックオフで試合開始。僅か22秒で勝負が決まってしまった先週の関東学院戦とまったく同じ設定だが果たして大東大はどうだろうか。開始早々から東海大が強力なFWのタテとBKのヨコを組み合わせる形で大東大に襲いかかる。しかしながら、大東大も渾身の組織ディフェンスで簡単には東海大の前進を許さない。まずはこの攻防でこの戦いが先週の試合とは明らかに違っていることが明確になった。攻め込まれてもしっかりと相手を止め続けることで締まった内容の試合になる。とりあえずは一安心だが、東海大の攻撃は止まない。ただ、立ち上がりの堅さもあってか大東大は東海大のノックオンなどのミスに助けられている形。

とはいえ、得点ボードが動くのは時間の問題だった。自陣で守勢に回る大東大はマイボールもキックを使うしかなく、必然的に東海大にボールを渡す形になってしまう。10分、東海大はカウンターアタックからの連続攻撃で大東大ゴール前まで攻め上がり、ラックからPR五十嵐がトライ。GKも成功して東海大が7点を先制した。しかしながら、東海大はまだピリッとしない。リスタートのキックオフで東海大にノックオンがあり大東大が東海大陣22付近に入ったところでチャンスを掴む。東海大再度からは「エイト、エイト」という声がしきりに飛ぶ。やはり、大東大のNo.8長谷川は相当に警戒されているようだ。

大東大が攻勢に出るものの、東海大の堅陣をなかなか崩すことは出来ない。16分にはマイボールスクラムを完璧にプッシュされてターンオーバーを許す。東海大のキックはダイレクトタッチとなり、大東大はラインアウトからオープンに展開。WTB福津までボールが回ったが、勝負所で福津はタッチに押し出されてしまう。18分にも大東大はカウンターアタックからのオープン展開で東海大陣の22m内まで攻め上がるが惜しくもオブストラクション。さらに19分には東海大のミスパスをもらったNo.8長谷川が力強く前進してビッグゲインを稼ぐが東海大陣10m付近でタックルに遭い止められる。ここは厚いフォローが欲しいところ。東海大はスクラムから反撃に転じて連続攻撃からボールがWTB小原に渡る。大東大陣22mの手前に到達した段階で前に二人ディフェンダーが居たが、小原は巧みなステップと力強いランでタックルを振り払い一気にゴールラインまで到達。やはり自信を持っているランナーにいい形でボールが渡れば前に何人居ても関係ない。小原は観る者をワクワクさせてくれる選手のひとりだ。

FB高平のキックは不調でGKは失敗するが、東海大のリードは12点に拡がった。ただ、時計は既に20分を越えている。先週の試合なら24分の時点で29点入っていたことを思えば、大東大のディフェンスでの健闘ぶりがよく分かる。東海大は圧倒的に攻める中でもミスがなかなか減らない。FWで力強く前に出ることは問題なくてきているのだが、BKへのスムースな展開に繋がらない部分も目立つ。やはり、SHが今期初スタメン選手である部分が影響しているようだ。相手陣で試合をする時間帯が長いため致命傷にはならない。34分には大東大陣22m内での大東大ボールラインアウトでのこぼれ球を拾う形で、そして、38分には大東大陣22m付近のスクラムからの連続攻撃からそれぞれFL谷がトライを決めた。No.8村山、FL扇に谷を加えた3人による合計300kgトリオは大学最強のFW第3列と言ってよさそう。GKは3つ続けて外れたが、22-0で前半が終了した。アタックのチャンスは少なかったものの、大東大のディフェンスでの頑張りは目を惹く。どうやら本日は先週のようなこと(100点ゲーム)になることはなさそうだ。

[後半の闘い]

後半、東海大はSHに尾崎に替わって松島を投入。左PRにもルーキーの平野が入ったが、こちらは前半に五十嵐が負傷したことによるもの。このSHの交替により、ようやく東海大の攻撃にリズムが出てきたように感じられた。開始早々の2分、東海大はPKからタッチにボールを蹴り出さずにタップキックからオープン展開で攻め、FL谷が3連続トライを記録。GKも成功して東海大のリードは29点に拡がった。前半は1/4と不調だったFB高平のGKだが、後半は持ち直して失敗は1回のみだった。大学選手権のことを考えればGKも大切にしたいところ。後半から起用された松島も期するところがあったのか気迫のプレーを見せる。

後半開始早々に失点したことで意気消沈するかと見られた大東大だが、ディフェンスに対する気迫は緩まない。また、何とか一矢報おうとアタックにも意気込みを見せる。リスタートのキックオフからカウンターアタックで東海陣に攻め込むが惜しくもノットリリース。6分にも東海大のパスミスに対するカウンターアタックで逆襲に転じる。そして、東海陣10mラインを越えたところでラックからオープンに展開しオーバーラップを作るが惜しくもノックオン。東海大の堅陣をなかなか打ち破ることが出来ない。

12分、東海大はFWのパワーを見せつける形で追加点を奪う。大東大ゴール前ラインアウトのチャンスからモールを押し込みNo.8村山がトライ。15分には連続攻撃からWTB石井がノーホイッスルトライで着々と加点し、東海大のリードは41点となった。大東大は17分に東海大ゴール前でラインアウトの絶好のチャンスを掴むがボールをスティールされてしまう。東海大のタッチキックに対するやり直しのラインアウトもモールを押し込む過程でノックオンがありゴールラインまで届かない。ここから大東大は東海大に攻め込まれて自陣を背にしてスクラムの苦しい展開となる。FW戦で圧倒的優勢に立つ東海大はPKからも迷わずスクラムを選択する。コラプシングが重なったところで、25分に東海大はスクラムを押し込んでNo.8村山がグラウンディングに成功する。8人で塊を作って相手と組んだ瞬間から一気にプッシュをかける東海大のスクラムは破壊力は満点。

こうなると大東大は殆ど抵抗出来ない。33分にもラインアウト→モールからLO三上がトライ。東海大にとっては、三上の戦列復帰は本当に大きい。スクラムやモールの核になっているだけでなく、ライン参加してもいい位置でボールの繋ぎに貢献する。それでも、大東大の「何とか1トライ」にかける意気込みは変わらない。振り返ってみれば、ここまでに奪われた9トライで抵抗らしい抵抗も見せられずに取られたものは少ない事に気付く。ミスは出るものの、気が緩む(東海大)/集中力が切れる(大東大)といった時間帯が殆どない。点差はついているものの大味なゲームにはなっていないのは驚きだ。終了間際に大東大が最後の攻撃を試みるが、パスが長谷川の顔面にあたる不運があり、ボールを拾った三上を経て村山がトライ。40分にはカウンターアタックから小原が決めて試合終了となった。

予想通りの東海大の圧勝ではあるが、先週のような悲惨な印象を受けないのはなぜだろうか。やはり、それは東海大の組織的なパワーを引き出した大東大の粘り強い(諦めない)ディフェンスに尽きると思う。普段は対抗戦グループの試合を重点的に観ている友人も、「こんなに80分間ディフェンスで頑張ったチームは殆ど観たことがない」と感嘆していたくらい。結果的に僅差になっても実は中身は大味なゲームだったりすることもある。ラグビーは点差で判断することが難しいスポーツであることを改めて感じた。

[試合後の雑感]

件の友人はこうも言っていた。「大東大はFWのフィットネスが上がったら恐ろしいチームになる可能性がある。」 確かにそうだ。BK展開は止められても、FW戦(スクラムやモール)で完敗したことがこの点差に繋がった。すぐには解決できない問題ではあるが、ディフェンスにかけた今日の気持ちがある限り大東大は大丈夫だと思った。このベースがあれば、強力な二人(テビタとフィリペ)が戻ってくることで大東大の攻撃力は確実に上がる。そうなれば、長谷川の能力も活きる。負傷者を減らすことも含め、(東海大のパワーを引き出したことで)復活に向けて本格的に取り組んで欲しいテーマが明確になったことがこの試合の大きな収穫かも知れない。

東海大はようやくチームが仕上がってきたようだ。第3列を中心としたFWのパワーを活かしつつ、最後は決定力のあるバックスリーで決めるのが東海大の目指している形だと思う。とくにこの試合で印象に残ったのは、コンタクト寸前でボールをフォロワーに渡す細かい繋ぎ。また、BK展開でもFWの選手がライン参加してショートパスで無理なくボールWTBまで展開する。この部分の精度がさらに上がれば文字通りFWとBKが一体化した継続ラグビーが完成する。課題として挙げたSHについては最終テストがあるかどうかは分からないが、そろそろ結論を出したいところ。そういった意味で、次の中央戦に注目したい。

先週は暗澹たる気持になって帰途についたのだが、今日の大東大の頑張りには救われた気持になった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする