出場メンバーも発表され、あとはキックオフを待つだけとなったサンウルブズの開幕戦。先日行われたトップリーグオールスターチームとのプレマッチを観ても、準備万端とまではいかなくても今シーズンも熱き戦いを見せてくれるに違いないと期待させるものがあった。
時計の針を1年半くらい前のW杯前に戻す。スーパーラグビー参戦がアナウンスされたものの、多くのラグビーファンは「本当に戦えるのだろうか?」いや「実際にチームが成立するのだろうか?」と疑心暗鬼になっていたことは間違いない。エディー・ジョーンズが指揮を執ったW杯の活躍で吹いた強力なフォローの風にも乗れず、なかなか実体を現さないチーム対してファンの心配は募る一方だった。
しかしながら、1勝1分13敗と戦績こそ散々だったものの、初年度の戦いぶりは「日本にサンウルブズあり」を印象づけるものだったように思う。W杯で活躍した日本代表メンバーの参戦が思いの外少なく、多国籍軍での戦いを余儀なくされたチームから「サンウルブズ・オリジナル」と言ってもよい「美しい」トライがいくつも産まれたことは特筆に値する。
とくに不安いっぱいで迎えた序盤戦での熱き戦いぶりが新たなファン獲得に繋がり、ラグビー場の雰囲気を変えてしまったことは新鮮な感動を呼び起こした。だからこそ、2シーズン目も迎えるサンウルブズへの期待は否が応でも高まる。とくに今シーズンはジェイミー・ジョセフが指揮を執る日本代表チームとの連携が明確に打ち出されたことも追い風になるだろう。
もちろん、ここで何度が書いているように、「サンウルブズは(プロチームである以上は)世界一を目指すべき」という持論は変わらない。ただ、昨シーズンのままの状態ではそれもままならないことを実感させられた。負傷者の戦線離脱によりチーム力が低下した終盤戦の戦いぶりが選手層の薄さ(チームの基盤の脆弱さ)を露呈したと言える。そういった意味で、「日本代表との連携強化」はチームの安定に寄与するに違いない。
昨シーズンのサンウルブズの熱き戦いぶりを振り返ると、その根底には3つの重要な要素があったのではないかと思う。ひとつは強い使命感。「俺がやらなくて誰がやる」という熱い気持ちを持ってサンウルブズに参加した選手がいたことはメンバーを大いに元気づけたに違いない。2つ目は強い危機感。W杯の活躍でようやく注目が集まったのに、スーパーラグビーで躓いたら日本のラグビーの将来はなくなるかも知れないという意識を胸に戦った選手も居たはずだ。
3つめはサンウルブズに限った話ではなく多くのチームに共通することだが、強烈なプロ意識。試合に出て活躍することで自分のプレーをアピールし、世界に認められること。事実、サンウルブズでのパフォーマンスで日本代表キャップを掴んだ選手がいたことからもそのことは裏付けられる。そのような状況の中でカークやデュルタロやモリやフィルヨーンといった選手達が真摯なプレーでファンの心をガッチリ掴んだことも忘れてはならない。サンウルブズが多国籍のメンバーの協力のもとに成り立っている「国際宇宙ステーション」になぞらえた理由もここにある。
持論(サンウルブズは世界一をめざすべし)は変わらなくても、日本代表とサンウルブズの連携強化は「世界一」へのチーム基盤の強化に向けた1ステップになるものと期待している。2年目のある意味安心感が出てきた状態での旅立ちとなるが、1年目の戦いで苦労を重ねた選手達の精神はしっかりと受け継いで欲しい。困難な状況の中、選手達が強烈な反骨精神を胸に秘めて戦ってきたことはサンウルブズの精神的支柱となっているはず。立川と主将を分かち合う形にはなるが、カークが文字通りキャプテン(船長)としてチームを引っ張る存在になったことをとても心強く感じている。
もっとも新しいラグビーの教科書―今、鮮やかに最新理論として蘇る大西鐵之祐のDNA | |
土井 崇司 | |
ベースボールマガジン社 |