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2014年度1-2部入替戦/関東大学リーグ戦Gは新たなステージへ

2014-12-15 01:58:15 | 関東大学ラグビー・リーグ戦

大学選手権セカンドステージ開幕戦とほぼ同じ時期に行われることになった入替戦。5位と7位とたった2つ順位が違うだけで天国と地獄になってしまう訳だが、リーグ戦Gにあってはシーズンの締めくくりとなる戦いでもある。普段は1部リーグを観るだけで手一杯だけに、2部リーグの実力を知る上でも貴重な試合。もっとも関係者にとってはそんなことも言っていられない。内容は問われず、とにもかくにも勝つことがすべて。だが、実は中身が濃い試合を観ることができるという私的楽しみがある。1997シーズンからリーグ戦Gの本格的な観戦を始めた中で、入替戦を観ていないのは2シーズンのみ。観戦した試合は心に深く印象を刻んだものが多い。

さて、一昨年の関東学院に続き昨年は拓大が降格した2部リーグは、近年でも希に見るレベルの高さを誇る(と言っては語弊があるが...)リーグになっている。拓大、関東学院、専修、國學院が鎬を削る中で東洋大も躍進と、1部昇格にかける熱き戦いが展開された。最終的には拓大が圧勝で1位という形になっているが、専修もYC&ACセブンズでの奮闘ぶりが強く記憶に残る。その拓大と専修がチャレンジャーとして熊谷に登場。今シーズンは2校同時入替もあるのではと予想していたが、リーグ戦の戦績を見て専修は厳しいかなと思っていた。また、拓大は優位に試合を進めて昇格とも予想していたわけだが、リーグ戦Gの歴史に残る2校同時昇格(2校同時降格)。リーグ戦Gはますます混沌としてきた。



◆第1試合 日本大学(1部7位)vs 専修大学(2部2位)



1部復帰を待ち焦がれている多くの専修大学ファンがスタンドを埋める中、日大のキックオフで始まった試合。誰もが日大が1部仕込みのパワーで専修を圧倒するはずと思ったが、キックオフから数分にして早くも専修のラグビーの質が日大のそれを上回っていることが明確になる。春のYC&ACセブンズでの活躍ぶりを彷彿とさせるようなテンポよい球回しと果敢なアタックに対し、チームが未完成状態の日大はディフェンスの対応が遅れ気味となってプレッシャーをかけられず翻弄される。専修はディフェンスでも低くしっかり刺さるタックルで日大の前進を許さない。10分に専修が先制した後、日大が攻め込む時間帯が続き31分にようやく1トライを返して5-5。しかし専修は前半終了間際にPGによる得点で3点を追加して8-5で折り返す。ラグビーの内容からはよくこの点差で収まったという印象が強い前半の戦いだった。

後半は開始早々に自陣からも展開して攻める専修のミスにつけ込む形で日大が5分に得点。日大はさらに8分、パスを繋ぐアタックで加点して17-8と逆転に成功。日大がこのまま1部リーグの貫禄を見せて勝利を収めるかに見えたが流れを掴みきれない。前半の戦いで自信を深めた専修は果敢に攻め続けて16分にPGを決めた後、22分、32分、36分と3連続トライを奪って悲願の昇格に大きく近づく。ただ、13点リードの30-17は2T2Gで逆転されるので安心できない点差。残り数分となったところから、日大の1部残留に向けた怒涛のアタックが始まる。38分には専修反則に対する速攻からトライ(ゴール成功)により7点を返し、日大のビハインドは6点に縮まった。残り時間が僅かとなったところで日大が攻撃権を保持しながら攻め続ける展開となり場内は騒然となる。しかし、インジュリータイムに入ったところで日大はアタックを全うできずに無念のノックオンで試合終了。スタンドを埋めた専修ファンからは13年ぶりの1部復帰を喜ぶ大きな歓声が沸き起こった。



◆第2試合 立正大学(1部8位)vs 拓殖大学(2部1位)



専修の復帰と日大の降格が決まり興奮冷めやらぬ中で始まった第2試合。リーグ戦2部で圧倒的な力を示して1位となり復帰を目指す拓大に対し、実力を十分に発揮出来ず最下位に沈んだ立正大ということで多くのファンが拓大有利を予想するのも無理はない。しかし、結果が出なかったとは言え、東海大を崖っぷちに追い詰めるなどリーグ戦後半で調子を上げてきた立正大の力は侮れない。4分に拓大がラインアウトからのモール攻撃で幸先よく先制するものの、立正大は10分、14分に2トライを連取してあっさりと逆転に成功する。立正大には大外で決定的な仕事ができるコマ(早川とレイモンド)が揃っており、彼らの持ち味が発揮された形。その後は両チームが交互に得点を挙げるシーソーゲームとなり、前半は19-15と拓大が辛くも4点リードする形で終了した。

第1試合ではほぼ無風状態だった熊谷だったが、第2試合ではいつのもの赤城おろしの強い季節風が吹く状態となっていた。後半は風下に立つ拓大にとって僅か4点のリードでは安心できない。しかし、拓大には強力な武器がある。それはリーグ戦Gでもおそらく最強と思われるPR3に具を擁するスクラム。自陣で立正大ボールスクラムの場面でもことごとくターンオーバーに成功してピンチを救う。拓大は立正の食い下がりを許して一時2点差まで迫られるものの、立正大の終了間際の猛攻を1トライで食い止めて34-29で1部昇格切符を掴み取った。立正大はおそらく今シーズン最高の仕上がりでこの試合に臨んだが、拓大が(観客席はハラハラだったものの)落ち着いて試合を進めることができたのは、スクラムの強さとパワーアップしたBKアタックによるところが大きかったように思われる。入替戦という究極の状態の中で両チームがそれぞれの持ち味を発揮した接戦は、今シーズンに観た試合の中での私的ベストゲームとなった。

◆2014入替戦雑感

1部リーグ7位のチームが入替戦に敗れて2部に降格するのはリーグ戦Gで初めてだそうだ。当然のことながら2校が同時に降格するのも初めてというとこになる。今シーズンは2部のチームの実力が高かったとしても、1部リーグのレベルが問われかねない非常事態と言わざるを得ない。しかし、2試合を振り返ってみれば、1部昇格(復帰)に向けてしっかり準備を整えたチームが順当に勝利を収めたと言っていいと思う。とくに第1試合は専修がほぼ完璧と言えるラグビーを展開したのに対し、日大はチームができあがっていなかったことが大切なところで露呈した妥当な結果と言える。スコアは競った形になっているが、実際に試合を観た人はそんな印象を抱いたのではないだろうか。

1997シーズンからずっと入替戦を観てきて感じることは、総じてラグビーの内容では2部のチームの方が上回っているということ。殆どの場合は選手個々の力の差が反映される形で1部のチームが勝利を収めることになるのだが、ラグビーの宿命的な部分とは言え、理不尽な想いに駆られる。しかし、近年は1部と2部の力の差が縮まっていることもあるかも知れないが、徐々にラグビーの質が勝敗に反映されるようになってきているように思う。昨シーズンの山梨学院に続き、今シーズンは拓大と専修大学が昇格を果たしたことは、偶然が重なったと言えるだろうか。今シーズン、劣勢が予想されながら入替戦回避に成功した山梨学院の戦いぶりからもそんなことを考えてしまう。

◆リーグ戦Gは戦術を競う場へ

ここ3シーズンは必ずチームの入れ替えが起こり、来シーズンはさらにリフレッシュされた陣容となるリーグ戦G。しっかりプランを練ってそれを実行し、おそらくは重点目標だった入替戦回避を果たした山梨学院。「戦術」を意識して試合観戦を始めた今シーズンで、もっとも印象に残る戦いを見せてくれたチームと言って間違いない。上位校を相手にしても、戦術を持つことでゲームコントロールが可能となることを示したくれた山梨学院がリーグ全体に与えたインパクトはけして小さくないと思う。

緻密なサインプレーと果敢なカウンターアタックによる継続という形でリーグ戦Gに新風を吹き込んだのが初昇格を果たした時の流経大。そして、2部への降格を経て組織を見直したのが東海大だった。長期間低迷状態にあった大東大を復活させたのも青柳監督がもたらしたトップリーグ仕込みの戦術と言える。同じく結果がなかなか出せなかった中央大も酒井氏をヘッドコーチに迎えることで組織的な戦いを指向するチームへと生まれ変わった。山梨学院は上に書いたとおり。そこに、降格の憂き目にあったものの戦術を見直すことで復活を果たした拓殖大学と専修大学が加わる。そう考えると、法政の戦術面への取組が遅れ気味に感じられることが気になる。

フレッシュ(というよりは「リフレッシュされた」の方が適切かも知れないが)なメンバーがさらに2つ加わることにより、上で書いたようにリーグ戦Gは「戦術」を意識しないと戦えない集団へと変貌を遂げつつあると感じる。チームカラーを前面に出すことでファンを集めていた大学ラグビーにあって、それに飽き足りないファンの心を掴むような魅力的なラグビーが展開されることを期待したい。

いつもは理不尽さを胸に帰路に着くことが多かった入替戦。日大の降格はショックだったが、すっかり魅了されてしまった専修の戦いぶりと一回り逞しくなって戻ってきた拓大に明るい未来を感じた。この日は気分が天候と同様に晴れやかだったのもそんなところに原因がありそうだ。

ラグビー「観戦力」が高まる
斉藤健仁
東邦出版
コメント (1)
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