「熱闘」のあとでひといき

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「東京セブンズ2014」の感想

2014-03-25 00:33:30 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


ラグビー観戦どころかブログも冬眠状態に入って3ヶ月以上経ってしまった。結局、今年も「東京セブンズ」が私的開幕戦ということに。昨シーズンは寒さに震えた2日間だったが、世界の力と技に痺れた2日間は貴重だった。

天候に恵まれながらも、残念ながら今年は2日間フル観戦とはいかず、1日目も2ラウンド目が終わったあたりで用事ができてしまいあえなくリタイア。でも、全体の1/3でも生観戦できたことを喜ぶべきかも知れない。進化し続ける世界のセブンズを観た感想を綴ってみる。

◆アスリート軍団アメリカに抱く夢

競技場に着いたのは2試合目のアメリカvsサモアが始まった頃。メインからバックスタンドへ移動中にアメリカの選手達を観て、最強のアスリートが揃う国の代表だけあると思った。めちゃくちゃデカイという訳でもないのだが、上半身の筋肉の盛り上がりが凄い。そして動きも身体の大きさを感じさせないくらいに軽やか。キックオフでノット10のはずがボールの転がりでセーフになる等、多分にアメリカにラッキーな面があったにせよ、強力な(はずの)サモアをパワーとスピードでぶっちぎってしまったのには正直驚かされた。一度でいいからアメリカがトップアスリートを集めて15人制のラグビーチームを作って欲しい。ラグビー界の常識を覆すような革命的なスタイルでプレーするチームを観てみたいという夢を禁じ得ない。

◆カナダのキャプテンは今年も元気

昨年の東京セブンズでもっとも印象に残った選手の1人がカナダの主将を務める日系カナダ人のヒラヤマ選手。熱い選手が多い中で、どんな状況にも動じずに冷静にというか飄々とプレイする姿が目に焼き付いている。果たして、今シーズンも確実かつ迷いなくボールを捌き、ディフェンスの局面では最後列から指示。そしてふと思った。ジャパンでもっとも必要なのは、冷静沈着で信頼感がある司令塔ではないだろうか。2試合後に登場したジャパンの選手達を観てその想いを強くしたのだった。カナダはチームのまとまりではベストと感じたのもこの頼れるキャプテンあってのこと。



◆しなやかに進化していたケニヤ

昨シーズンのセブンズでやや期待外れだったチームはケニヤだった。身体能力の高さを活かす前にパワーで捻り潰されてしまった感が強い。しかし、そのケニヤも今年は進化していた。敗れはしたものの南アフリカとの戦いでは力強さと組織力で対抗できていたと思う。でも、このチームの持ち味はしなやかさ。サッカーでよく使われる「柔らかいボールタッチ」という表現をラグビーに置き換えてみたい。フィジアンマジックとも違った新たなスタイル(進化形)の完成に期待したい。

◆総合(格闘)球技へとさらなる変化を遂げるセブンズ

試合を観ていて他の球技を観ているような錯覚を起こすことがあるセブンズだが、よりその方向性が増しているように感じた。どんな形でもいいからボールを繋ぐことが重要なセブンズにあって、他の球技を連想させるようなプレーが飛び出すことは珍しくない。でも、それはハプニング的な感があったのだが、むしろ他球技のよい部分を積極的に活用しようという流れでもあるようだ。とくに目立ったのはバスケットボールのようなスナップを利かせたクイックパス。距離にもよるが、初動を速くすることと正確性ではラグビースタイルのパスより効果的な場合もある。また、ハイボールの競り合いではバレーボールのスパイクみたいなプレーも意図的にやっていたように見えた。ただし、これはボールの落下点にいる味方に正確に落とさないとかえって命取りになる。とにもかくにも、いろいろなスポーツの経験が活かせるのがセブンズの面白いところだと改めて思った。

◆勝つためにはマジックよりも堅実性/素早く、短く、正確にの反復

かつては「フィジアンマジック」に代表されるように、トリッキーなプレーがもてはやされた感もあるセブンズ。だが、勝利を目指すためには(楽しくても)リスクを伴うプレーよりも確実なプレーが求められるようになってきているように感じる。セットプレー重視など、15人制回帰と言ってもいいかもしれない。少なくとも、ロングパスは(教科書のお手本を見ているように)スライドでディフェンス側に対応されてしまうし、インターセプトの危険性も高い。実際にジャパンはそれでファイナルに進めなかった。

そこで各チームが考えたのが短いパスを素早く繋ぐプレー。とくに印象的だったのは、トップチームのプレーで、ウラに抜けて大きくゲインと思わせた瞬間、いやそう思わせる前に間髪入れず接近してきたフォロワーにパスを繋ぐスタイル。ある意味相手のウラをかくようなプレーでもあるが、タイミングが合えば正確かつ確実に大幅な前進が図れる。このプレーも単発でなく2つ、3つと連発されたらどんな相手もディフェンスが間に合わない。「相手が予想する前に仕掛けて動く」を正確に繰り返す。けして目新しいプレーではないし、去年は気付かなかっただけかも知れないが、セブンズの極意を観た思いがした。



◆いよいよ日本代表登場

そんな「コア15」で戦っているチームのプレーを観ていて、最後に登場する日本代表は本当に大丈夫だろうかと不安が募っていく。メンバー選考、準備期間、いやそもそもセブンズに取り組む姿勢を見ているとそう考えてしまうのが自然というもの。しかし、緒戦のアルゼンチン戦では秘密兵器の登場がそんな不安を解消してくれた。力強いランでいきなり魅せたロマノ・レメキの存在は相手はおろかホームチームのファンにとってもノーマークだったはず。(去年のジェイミー・ヘンリーの例を挙げるまでもなく、アイランダーに助けられている感の強い我が代表)。だから、期待を抱かせた分、ミスで試合をドローに持ち込まれたのは痛かった。

◆第2ラウンドにはいって一気にヒートアップ

第1ラウンドでは眠っていたかのように見えたチームもしっかり目を覚ましたと感じさせた第2ラウンド。とくにサモアが見違えるくらいに気合が入っていたのが印象的でフランスを一蹴してしまった。そして、アメリカがまたもやラッキー?の場面もあったがフィジーと引き分けたのも驚き。小粒なスコットランドが意地を見せ、カナダは好調を維持してウェールズと引き分け、ケニヤは一気に爆発ときた。日本代表の2ラウンド目の相手は優勝候補の一角、南アフリカだから今度はどうなるか。

しかし、意外と言っては失礼だが序盤は競った試合になっていた。ここでふと気付いた。もしかしたら、コア15とは違うスタイルの相手に南アフリカは戸惑っているのではないかと。しかし、敵もさるもので日本代表の弱点に気がついてからは本領を発揮出来たようだ。ディフェンスに不安があるチームはできるだけ長く攻撃していたいがそうはさせてくれない。ひとつ印象的だったのがジャパンのハイボールキャッチがことごとくチョークタックルの餌食になってしまったこと。相手に倒させてもらえないことも課題になるなんてちょっと哀しい。ここで「タイムアップ」となり秩父宮を後にした。

◆「2日目の健闘」におもったこと

日本代表の2日目の戦いはTV録画で観た。正直、1日目よりもずっといいチームになっていると感じた。もちろん緒戦でのサモアが不調だったこともあるが、2試合目でもウェールズに勝っていたはずの試合だったからフロックではない。高いレベルでの戦いの場を踏んでいない分、逆に1日目の3試合の経験が活かされたのかも知れない。ここで、ひとつ思った。日本代表は次の香港セブンズでコア15入りを果たすことが「マスト」だということ。もちろん、セブンズの進化を望むファンの立場からの要望だが。

今年の東京セブンズでさらにひとつ感じたことは、コア15のチームはランキングを争うライバル同士ではあるが、ある意味で連帯感を持って戦っているのではないかということ。トップレベルのチームを頂点に、「俺たちが世界のセブンズを面白く進化させる!」という気概を持って各チームの選手達は戦っている。その場(コア15で結ばれた輪の中)にいないことが日本代表にとって大きなマイナスに思えてくる。

戦術以前に資金面、トップチームからの選手の供出と課題山積の日本代表だが、コア15入りすることで確実に前進できるはず。まず、世界で戦う以上は無様な試合はできない。新たなファンやスポンサー獲得のチャンスになるだろうし、ラグビーファン自体のサポートの輪も拡がるだろう。東京セブンズだけで判断してはいけないのかも知れないが、強化すればコア15の真ん中レベルのチームになりそうな気もする。香港が(選手に経験を積ませる)育成の場ではなく、選手とってもチームのとっても生き残りをかけた戦場になることを強く期待したい。
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