昨日、岡崎商工会議所の部会で
未来工業さんの見学に行ってきました。岐阜同友会の元代表理事でもあるので、一度は行ってみたいと思っていましたが、念願が叶いました。
この時期に無茶なスケジュールでしたが、行ってよかったです。
報、連、相、禁止の会社の相談されない相談役(笑)という山田相談役(創業者)の話をうかがったあと、工場内の見学をさせていただきしまた。
◆◆ 山田昭夫氏の講演
建築用の電気(強電)の業界は規格という<法律の縛り>があり、勝手なものは作れない。
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昭和40年の創業、競合相手は古くてでかい会社。(松下電工ほか)であり、これらと同じものを作っていてもブランドで負けてしまう。
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でも、<法律の縛り>がある。
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できることは、縛りの中で、<工夫をつける>こと。
易しい、簡単、早い、格好がよい、安い...
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開発方針(参入条件)の決定。
『品物は必ず差別化する』 = 『必ず工夫をつける』
いいか悪いかの評価はあとでする。
※作る前に良し悪しを考えるのではなく、まず、工夫をつけたものを作るのが第一で、その次に良し悪しを考えることにより、開発スピードが鈍らないと思いました。作る前に評価すると会議地獄に陥ると思います。
まず、作るという点において徹底しているところが素晴らしいと思いました。
◆◆ 他がやっていないからやる
工夫できる人が中小零細に入ってくるか?
優秀な人は大企業にいってしまい、入ってこない。だから、今いる社員を工夫できるようにするしかない。だから『品物をつくるときに差別化できる体質をつくろう。』ということで、日常から訓練をしていく。
※いざ、差別化!と言っても、とっさにはできないので、日頃から、そのクセをつけることは大切なことだと思います。
・会議室のイスの足には、全部テニスボールがついていました。床を痛めないためなのか?移動が簡単なためか?よくわかりませんが、大切なことは『他がやっていない』ということです。
・蛍光灯にはひとつずつヒモがついていて、必要な部分だけつけることができます。
・お土産にMIRAIせんべいを一枚ずつくれました。これも、みそせんべいは他にありますが、MIRAIの文字が入ったものはないからつくった。文字をつけても価値はないが、他にないからつくったということです。
・あと、け書ペンもくれました。建築現場では、インクがなくなるより先にぺん先がつぶれてしまうので、ペンチで、芯を引き出して、カッターで削れば5回使えるという代物です。ペンチもカッターも建築屋さんは普通に持っています。
これは、使う建築屋さんもコストが浮き、こちらも売れるとも儲かる、WinWin商品です。
◆◆ 差別化するのは誰か?
当然、社員である。
社員に差別化しようと思わなせないといけない。
がんばろうと思わせないといけない。
いかにやる気にさせるか?
そのためにはエサをまく。
『お客様を感動させないと商売にならない』
『まず、社員を感動させる』 ・・・ こっちが先
山田さんのいう『エサ』は『感動』というものでした。
※ネッツトヨタ南国の横田会長に教えていただきました。
満足の先にあるのは大満足。
感動とは軸が違う。
そして、満足は耐性が生まれるが、感動に耐性は生まれない。
この考えからすると、何度食べても美味しい『感動』は、最適なエサだと思いました。まさか、こんなところで、話が結びつくとは思いませんでした。
◆◆ まいたエサ
こういうことを、どれだけやれるか?
・70歳定年にしました。しかも、60過ぎても給与は下がりません。
安心した社員は頑張ります。
・子供が生まれたら、3年休んでもいい。
(実際は、早く復帰してしまうそうですが、会社の側が席を用意しておいてくれると安心できると思います。)
・正社員800名、パート・派遣なし。
仕事が同じで給与が安かったらやる気になるわけない。
戦後、日本が(GDP・GNP)世界二位(一人あたりは一位)になったとき、パートも派遣もいなかった。いたのは、学生あるバイトだけ。しかし、今、日本は(一人あたりは)17~18位にいる。
パートで給与15万、社員で30万。
社員にしてもらった人間は『がんばる』
がんばった社員は、30万しか稼がないか? → そんなことはない。
最近、大メーカーが片っ端からリコール・不具合を起こしているのは、社員がまともに働いておらず、パート・派遣に依存しているから。
・年間休日140日
毎日16:45終了(残業禁止) ・・・ 7時間15分労働
→ 年1,660時間
実際には残業が出てしまうことがあるけど、本気でなくそうとしているかどうかで差がでると思います。
※肝心なのは、こういう優遇された社員さんたちが、今の待遇を維持発展させるには、業績をあげること=時間内にきっちり成果を出すことを心得ているという前提が必要だということです。業績をあげないとこの好循環が途絶えてしまいます。
◆◆ 雇用に対する考え
・他に比べて『まぁまぁ』と思える給与なら人は働く。
・メシ食う(金稼ぐ)のは8時間でいい。あと8時間は寝るとして、のこった8時間は(一度しかない人生だから)仕事以外の自分のために使って欲しい。
・残業は25%増しというのは高すぎる。これでは儲かるわけない。
『仕事があったら人間を増やせ』・・・『残業でこなすな』
どんな会社だって、需要が多すぎ、売るところはあるはず。
売っていないだけ。
GDP500超に対し、トヨタだった1割も取れていない。
だから、人は余らない。
※ちょっと乱暴な理論ですが、一方で納得もします。サービス残業という悪行を強いないということが前提ですが、一人雇った方が25%安いというのは確かです。
全般にわたって、山田節が吹き荒れ、べらんめぇ調の話ですが、その一方で、人ほ大切にするという考えが伝わってきました。
◆◆ 見学
工場の見学をさせていただきましたが、大変面白かったです。
スイッチボックスの改良の歴史をみせていただきましたが、ここにある考え方にこそ、真髄があったと思います。
工事プロセス=人間の動きを助ける、という大切な着眼点にあふれていました。
改良を重ねることで、『あっ、未来はちょっと楽になった』と思っていただくことが大切なようです。この『あっ』が小さな感動ですね。
『問屋さんの先の工事屋さんを見る』
『他がやっていないからやる』
この二つの考えがあるので、生まれてきたのが
・シリーズ化
売れないものも多いけど、工事屋さんの利便性は増します。
・小ロット対応
◆◆ エサのひとつ
毎年、社員旅行を実施していますが、ユニークなものがたくさんあります。
感動のばらまき状態です。
40周年では、40の指令書として、文科系・スポーツ系・絶叫系の選択だけを許されて、あとはクジびき。そこにあるミッションをこなし証拠の写真を撮ってくるということをやっていました。
バンジージャンプ、ワニと記念撮影、コアラと記念撮影...
全部の写真とレポートが製本して展示してありました。
こんなことされると、来年の旅行までとりあえず、辞めずにいたくなるかも...
これを企画している委員会の人々の嬉々とした姿が目に浮かぶようです。
◆◆ 『常に考える』
工場のあちこちに貼ってある『常に考える』
これは、社是ではなく、標語だそうです。
案内してくれた方が先日、山田さんに確認したら、そう言われたそうです。
未来工業さんの『常に考える』は有名で、私も社是の一部と思っていました。(笑)
特許・実用新案・意匠・商標で過去に6000件を取得、生きているのは2,800件程度だそうです。
改善提案は一件500円、審査して最高3万円ということで、タニサケさんと同じような形でした。トップの人で年間200件ぐらい出しています。多数提案しているのは200人ぐらい(約1/4)だそうです。
一方で絶対出さない人もいるそうです。(まぁ、いろいろですね)
特許等に至った場合には会社に帰属し、社員さんにはロイヤリテイを支払うそうです。
山田さんと一緒に創業した清水さんという方がアイディアの塊だったようで、山田さんが経営・販売、清水さんが開発・製造という分担で発展してきたようです。
ただ、それは昔のことで、未来工業の今を支えているのは、社員さんです。長く続けるというのは一人の力では無理があります。
『常に考える』『他がやっていないからやる』『工夫をつける』
この風土あっての、現在です。
風土はすぐにマネはできませんが、参考になることは山ほどあります。
企画してくれた岡崎商工会議所さんに感謝します。
話をしてくれた山田さんに感謝します。
受入をしてくれた未来グループのみなさんに感謝します。
この本、お勧めです。
夫婦とも読みましたが、面白いです。
感想を交換しあうと、新しい気づきも生まれます。
是非、どうぞ。
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