「がん」になる人は2人に1人で、「がん」で死亡する人は3人に1人という話をテレビやラジオでよく聞きますが、あれはどういう意味でしょうか?言葉どおりにまともに受け取ったら国家として成り立たないとんでもない事態になります。公共の電波で不特定多数の人に伝える時は、誤解のないような表現方法にしないといけませんよね!そこで、正しく理解したいと思いました。
国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計・総合解析研究部のデータを見てみました。
まず、罹患率ですが、次のようにして算出しています。
・実際に計測できるわけではなく、年齢階級別のがん罹患率。全国がん罹患モニタリング集計)と全死因死亡率(人 口動態統計)を用いて「生命表法」(平均寿命の算出方法と同じ)で数理的に算出される。
• 0歳の人100人からなる集団を想定し、その集団を加齢させて、がんに罹患した者と死亡した者を減らしていきa 、最 終的に0人になった時点で、それまでのがん罹患者の数を 合計する(100人中何人罹患するか)=0歳の人が一生のうちにがんと罹患する確率(%)
表にしていたので使わせていただきました。

年代別に見た罹患率です。現時点で例えば70才女性は10年後までに罹患する確率は14%でそれ以降は36%。同じく男性は29%でそれ以降は59%。女性と男性の生涯罹患率を足して2で割るとおおよそ50%で2人に1人となる。
次は死亡率。
・生涯累積罹患リスクと同様に、実際に計測できるわけではなく、年齢階級別のがん死亡率と全死因死亡率を用いて 「生命表法」 (平均寿命の算出方法と同じ)で算出される。
• 0歳の人100人からなる集団を想定し、その集団を加齢させて、がんで死亡した者と他の死因で死亡した者を減らしていき、最終的に0人になった時点で、それまでのがん死亡者の数を合計する(100人中何人がんで死亡するか)=0歳の人が一生のうちにがんで死亡する確率(%)

「3人に1人ががんで死亡」という数字は、現在の人口で死亡した人のうちがん死亡が何人かという割合(死亡者130万人中がんが37 万人=3人に1人)。この割合は現在の年齢構成に依存するもので、将来のリスクとは異なる。生涯累積死亡リスクは0歳の人を生涯追いかけた場合を想定しており、将来のリスク。 「生涯」の欄を見てみると男性は25%で4人に1人。女性は6人に1人。
歳を取ると癌になりやすいのは、新しい細胞を作り出す力もなくなり、DNAのコピーミスも増えてくるから。いたしかたない面もある。
ただし、のんきにただ加齢により癌の罹患率と死亡率が増加している。と考えるだけでなく、他の要因を見落とさないように警戒していかなければいけないことに変わりない。例えば、女性の乳がんの発生率等。
参考までに、がんによる死亡者数と罹患率を見てみました。
- 2017年にがんで死亡した人は373,334人(男性220,398人、女性152,936人)。
多い部位順 これは平均なので、年齢別にみる必要がある。
男性 肺 胃 大腸 肝臓 膵臓
女性 大腸 肺 膵臓 胃 乳房
男女 肺 大腸 胃 膵臓 肝臓
・男性は40歳50歳代では消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の死亡が多くを占めるが、高年齢になると肺がグンと多くなる。
・女性は40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占めるが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加する 。
医療技術の進歩で死亡者数は抑えられていると思う。
- 少し古いデータですが、2014年に新たに診断されたがん罹患全国合計値は867,408例(男性501,527例、女性365,881例)。
- 男性では、40歳以上で消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の罹患が多くを占めるが、70歳以上ではその割合は減少し、前立腺がんと肺がんの割合が増加する。
- 女性では、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの罹患が多くを占めるが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加する。