映画とライフデザイン

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韓国映画「殺人の疑惑」 ソン・イェジン

2015-01-03 08:32:37 | 映画(韓国映画)
映画「殺人の疑惑」は2014年日本公開の韓国得意のクライムサスペンス映画だ。


韓国には「韓国三大未解決事件」と呼ばれている事件があるという。その中の一つが「イ・ヒョンホ誘拐殺人事件」である。昨年日本公開の「悪魔は誰だ」はこの殺人事件が題材になっている。別の「華城連続殺人事件」はサスペンスの大傑作「殺人の追憶」で映画化されている。今回は「悪魔は誰だ」とは視点をかえてその誘拐殺人事件を題材にしている。

自分の父親が誘拐事件の犯人ではないかという疑いを抱き、真実を求めて動き出す女性の姿を、「私の頭の中の消しゴム」「四月の雪」のソン・イェジン主演で描く。韓国クライムサスペンスはどれもこれもよくできている。この作品も観客を幻惑させようとストーリーを振りまくる。結末作りもお見事であるが、満点というわけではないなあ。


15年前、韓国全土に衝撃を与えた「ハン・チェジン君誘拐殺人事件」が起きた。世間では、公訴時効を目前に控えて「ハン・チェジン誘拐殺人事件」の話題で持ちきりである。大学卒業を控えた主人公ダウン(ソン・イェジン)は、マスコミ系への就職活動をしている。就職の面接でそのテーマを尋ねられるかもしれないので、「犯人の肉声」を入れ込んだ映画を後輩とともに見にいった。犯人の肉声を耳にしたダウンは、父親スンマン(キム・ガプス)の声とよく似ていることに気づく。しかもしばしば聞いたことのあるフレーズだ。

その後、母親の祭壇の前で父と二人で拝礼している時、突然訳のわからないことを話して家の中を荒し回る男シム・ジュニョン(イム・ヒョンジュン)が現れ、スンマンに対してカネを要求し始めた。横で見ているダウンはあぜんとする。目の前で、「娘に知られてもいいのか?」と父親が脅かされる様子を見て、娘が調べはじめる。警察官志望の後輩ジェギョン(イ・ギュハン)を通じて、警察に自分の父親と死んだ母親の名前を伝えて、何か情報がないかと調査依頼した。


そこで父親が前科三犯であることと、母親がまだ生きていることがわかる。ダウンは驚いた。母親の住所あてに訪ねていくとそこには先日家で大暴れをしたシムがいた。寝たきりになっている母親をシムが面倒見ていたのだ。ダウンは母親の母子手帳を探しだして、自分が生まれた産婦人科の院長のところへ行く。その院長は誘拐された子供の父親だったのだ。そこで院長から犯行時に犯人が書いた1枚のメモをもらう。そこに書いている文字は子供が書いたものだ。しかも、ダウンはその文字に見覚えがあり動揺するのであるが。。。

韓国は熱血刑事が犯人を執拗に追うといったストーリーが好きなようだ。韓国版「容疑者xの献身」も探偵ガリレオが追うのではなく、熱血刑事が追う展開になっていた。この映画でもその後父親が呼ばれて取り調べを受けるが、いつものパターンとは違う。今回の証拠は「犯人の肉声」だ。「声紋鑑定」が「悪魔は誰だ」でもポイントになる。でもどちらかというと、韓国警察のだらしない部分ばかりが目立つ。


誘拐の被害者である父親(産婦人科の院長)が被疑者であるスンマンを警察で殴ってしまう。すると、スンマンは頭を打って意識を失ってしまうのだ。暴力好きの韓国ではこれが是認されるのであろうか?殴った本人は別に傷害で捕まるわけではない。何もなかったような顔をしている。しかも、娘のダウンにもつかみかかる。こんなこと日本ではないでしょう。日本の常識ではありえないけど、韓国では誰も不自然に思わない現象なのかと思った。
他にも昔の日本ならあり得るけど、今はないだろうという暴力描写の場面がいくつもあった。

あとは映画の中で剣道をやっている場面がでていた。これにはビックリした。柔道はともかく剣道を韓国人が今もやっているとは知らなかった。剣道の胴着で名前の書いてあるところは漢字で書いてあった。今の韓国では漢字を見ることが少ない。自分の名前を漢字で書けない人もいるんじゃないかなと思うんだけどどうかな?

それは別として、脚本のゆさぶりが相変わらずうまいのはさすが韓国クライムサスペンスだ。いったん結末をつくっておいても二重三重に観客の目をごまかそうとするのはお見事。残念ながらこのレベルまで日本のサスペンス映画は達していない。

(参考作品)


殺人の疑惑
父親を殺人犯と疑う
悪魔は誰だ
同じくイ・ヒョンホ誘拐殺人事件を題材にしている傑作(参考記事)


殺人の追憶
未解決事件「華城連続殺人事件」を題材


チェイサー
韓国クライムサスペンスの最高傑作(参考記事
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映画「仁義の墓場」 深作欣二&渡哲也

2015-01-02 10:20:06 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「仁義の墓場」は深作欣二監督による1975年公開の実録バイオレンス映画である。
これは傑作だ。


昨年亡くなった菅原文太主演「仁義なき戦い」は戦後の日本映画史において重要な位置を占める。「仁義なき戦い」の持つスピード感はすばらしく、深作欣二監督が手持ちカメラ中心に撮る映像は敵味方入り乱れてすさまじい迫力を放っている。「仁義なき戦い」シリーズ全般にわたってハズレはないが、警察側の視点からみた深作作品県警対組織暴力も優れた作品だ。その「県警対組織暴力」の前に撮られたのが「仁義の墓場」である。

渡哲也が主演というと、テレビでの二枚目役のイメージが先行して、外してしまいがちだ。しかも笠原和夫の脚本ではない。それでご縁がなかったが、見てみてビックリ、これは凄い映画だ。深作欣二は実在した石川という狂犬のようなヤクザを戦後の闇市に放つ。自らの親分を刺したり、兄弟分を殺したり、同じ極道でも杯を分けた身内にここまでやるやつはそうはいない。その暴れん坊を深作欣二の指導のもと、渡哲也が絶妙の演技をみせ、思いっきり暴れまわる。最近のエリッククラプトンしか知らない人が、クリームを聴いてそのワイルドなギタープレイにおったまげるというような気分みたいな感覚をもつ。


昭和二十一年。終戦直後の新宿では、戦勝国という名のもとに第三国人たちが好き勝手し放題であった。テキ屋一家「河田組」の石川力夫(渡哲也)は連中がのさばるのを見過ごさず、痛い目にあわせていた。河田組は、河田修造(ハナ肇)を組長に、組長(安藤昇)が衆議院選挙に立候補をする最大勢力野津組に次ぐ勢力を誇っていた。


兄弟分の今井幸三郎(梅宮辰夫)、杉浦(郷治)、田村(山城新伍)らを伴った石川は、中野を拠点とする三国人の愚連隊「山東会」の賭場を襲い金を奪った。山東会の追手から逃がれ、忍び込んだ家で、石川は置屋の若い娘、地恵子(多岐川由美)を衝動的に犯した。

この抗争によって双方摘発される。しかし巧みに警察を利用して自分らのみ釈放され、まんまと山東会を壊滅に追い込んだ彼らは中野今井組を興す。兇暴な石川に手を焼く河田は、縄張りを荒らす「池袋親和会」の青木政次を消すように示唆した。石川は青木の情婦夏子を強姦し、駈けつけた政の顔を叩きのめす。


報復のために、幹部の梶木(成田三樹夫)率いる兵隊が新宿に進出して来て、にらみ合いとなる。だがこの抗争は、野津組組長野津の発案によって、進駐軍に鎮圧するよう仕向けることで事なきを得た。
それから間もなく、兄弟分杉浦は野津の盃を受ける。一方、無鉄砲な石川は、賭場で悶着を起こし、野津から一喝される。


その腹いせに野津の自家用車に火をつけた。この一件で怒った河田は石川に猛烈な制裁を加えたが、逆上した石川は河田を刺してしまう。一時は今井の許に身を隠した石川だが、今では石川の女房になった地恵子が彼の身を案じ警察に報せたために、石川は逮捕され、一年八カ月の刑を受ける。

出所した石川は、河田組から関東の渡世の世界からの追放を意味する十年間の関東所払いになっているため今井に説得され大阪へ流れた。この地で肺を病んだ石川は、釜ヶ崎のドヤ街で娼婦からヘロインを覚え中毒となり、売人を襲撃しようとしたところでやはり中毒患者の小崎(田中邦衛)と出会い、意気投合する。


そして一年後。石川が小崎とともに無断で帰京し、今井組の賭場で騒動を起こす。だが、石川は兄弟分の今井からも説教されると、狂ったように石川は今井を刀で斬りつけ重傷を負わす。そしていったん逃走した後に今井を撃ち殺した。

アパートに潜伏していた石川と小崎を、警官隊と河田組員、今井組員が包囲する中、石川は無差別に発砲を繰り返す。追い詰められ石川は、弾も尽き自棄になって表へ飛び出したところを取り押さえられる。警察病院に収容された後、彼は殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。昭和二十六年一月二十九日、肺を病んだ体に鞭を打って保釈金を工面するなど石川を献身的に支え続けた地恵子は、心身を磨耗し尽くして自殺した。刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか三日前のことであったが。。。

映画がはじまってまもなく、「仁義なき戦い」ファンなら誰もが好きになるような、ハチャメチャな乱闘シーンが続く。
敵味方入り乱れて暴れまくるスピード感あふれるシーンだ。どっちがどっちだかよくわからない。
狭い場所での乱闘を的確に手持ちカメラがとらえる。すげえなあ!こんなの何回もできないよなあ。
すげえ衝撃を与えてくれる。

今までいじめられてきた腹いせに日本人から金をむしり取る第三国人を懲らしめてやろうとする姿には「もっとやっちまえ!!」と叫んでみたくなるが、この男普通じゃない。渡世の義理で生きようとする気持ちは持っているが、一度キレてしまったらまったく見境がつかない。敵味方が入り乱れる姿は「仁義なき戦い」でよく見る展開だが、狂犬のように親分や兄弟分に切りかかる姿ってそうはない。粗暴で凶悪な姿は「仁義なき戦い」第二作の千葉真一演じる大友勝利のようだ。



日活で活躍してきた渡哲也が、ポルノ路線に日活を飛び出し新天地を求めて東映に移ってきたころの作品だ。やる気も満々だ。
脇役もいい味出している。多岐川由美は可憐な印象、後年はいやな女が似合う顔立ちになったがこの映画ではかわいいなあ。東映ピンク映画の女王池玲子はヤクザの姐さんがよく似合う。。

まさに「本物」だった安藤昇が持つ貫禄、成田三樹夫の苦味つぶした表情、ヤク中常習者になりきった演技を見せる田中邦衛、裏芸をもつ親分という役がまさに適役のハナ肇、兄弟分梅宮辰夫、山城新伍を含めて最高のキャストである。

後半堕ちていく石川の姿はエレジーじみているが、さすが深作欣二といいたい傑作である。
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映画「美しい絵の崩壊」 ナオミワッツ&ロビンライト

2015-01-01 11:52:11 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「美しい絵の崩壊」は2014年公開のナオミワッツとロビンライトの主演映画


子供のころからよく知っている親友の息子とできてしまう話だとは知っていた。大好きなナオミワッツ作品とは言え、映画館までは行く気にはなれなかったのでDVDスル―。近親相姦みたいで何かキモいなあ!映画は最後まで見てしまう。映画としては普通の粋を超えない。


女性監督による作品だからというわけではないが、ロケ地をとりまく風景は非常に美しい。撮影の腕もいいのだろう。アングルもよく、映像では十分楽しめる。一体どこかな?と思っていたが、オーストラリアのようだ。以前は映画でバストトップを出しまくっていたナオミワッツも40代半ばまでとなると見せるものを見せない。仕方ないか。

オーストラリア東海岸の入り江に建つふたつの家。ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は姉妹のように同じ時を過ごしてきた。今では、それぞれに同い年の男の子がいる。ロズの息子トム(ジェームズ・フレッシュヴィル)とリルの息子イアン(ゼイヴィア・サミュエル)は、母親たちと同じく親友としての絆を深めていた。


美しい男に成長した息子たちを誇りに思うふたりの母親。子どもたちもまた、母たちとの海辺の生活を満喫していた。イアンは幼少期に父親を亡くし、それからはロズをセカンドマザーとして慕っていたが、いつしかロズへの気持ちは強い恋心へと変わっていく。
ロズの夫ハロルド(ベン・メンデルソーン)は、シドニー大学で演劇の専任講師の職を得たと、家族揃ってシドニーへ転居することを提案する。トムの為にも都会で暮らした方が良いと主張するハロルドだが、入り江の家やギャラリーでの仕事を手放したくないロズは、即答を避ける。迷いながら日々を過ごすロズにとって、海辺の生活は愛おしさを増していく。 ある夜、深酒をしたトムの介抱のためにロズの家に泊まったイアンは、ロズへの気持ちを抑えきれず、ふたりは一夜を共にする。母とイアンがしたことに気付いたトムはショックを受け思わぬ行動に出る。


おいおい自分の母親と友達がやってしまったからといって、友達の母親に手を出さなくてもいいじゃない。
凄い展開である。そこいらへんのAV映画とかわらないじゃない。
片方の父親は若くして死んでいて、もう一人はシドニーで大学講師の職を得ている。結局父親不在の状態で無法地帯になってしまっている。これはまずいとお互いの母親が感じるけど、結局泥沼だ。関係が続いていく。

演劇俳優になりたいロズの息子トムが、シドニーの父親のところにいく。舞台女優の1人の女性と知り合う。なかなか手を出してくれないトムが、彼女からゲイなの?といわれ、そうでないとくっついてしまう。一気に盛り上がりトムはリルへの気持ちを立ちきり、結婚してしまう。一方のイアンも同じように若い女性とくっつく。そして時がたつ。これで終わりなのか?
それで終わりなら普通のドラマである。一気にラストで変化球を投げてくれる。


結果的には究極の腐れ縁映画である。
原作はノーベル賞作家が書いたっていうけど、なんかポルノ映画によくありげなストーリーだよね。
谷崎潤一郎だってノーべル文学賞の候補になったことあるくらいだから、純文学なんてそんなものか。
違うのは美しいオーストラリアの海辺の風景と2人のベテラン女優が脱がないってことだけかな。
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