映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画 チェイサー

2010-05-02 22:51:48 | 映画(自分好みベスト100)
韓国映画「チェイサー」は凄い作品だ。予想を上回る出来である。
昨年2009年のキネマ旬報ベスト4というだけある。個人的には1位「グラントリノ」は過大評価されていると思っていて、3位「チェンジリング」の方が上だと思っている。でもその「チェンジリング」とこの作品は甲乙つけがたい。

韓国映画は暴力描写の残虐さがきつすぎる。日本の感覚をはるかに超越する。この映画は最たるものだ。それに加えてストーリー展開も、必ずしも倫理的、正義の味方的でない。実話が基準とするとやっぱり怖くて韓国には遊びにいけない。

主人公は元警官、辞めたあと出張デリヘルを経営している。彼のもとにいた2人の女性が、多額の支度金を払ったにもかかわらず逃げられたことを気にしていた。
そんなある日、一人のお客から呼び出しがあり、風邪で寝込んでいた子持ち女性を無理やり呼び出し客の元に行かせる。そのときふと男の電話番号の末尾4885に見覚えがあることに気づく。帳簿を開いて以前デリヘル嬢が行方不明になった時に呼んだ男の番号4885と同じであった。そこで出張させた女性に「着いたら住所をメールするように」伝える。
彼女は待ち合わせ場所から移動して相手の自宅に着いたとき「トイレに行く」と言ってメールをする。しかし電波が通じていない。窓を開けようとすると出入りが不可能になっていた。「車に忘れ物」と言って出ようとしたら、鍵がかけられていた。気がつくと彼女は拉致されていた。
連絡を待つ主人公は連絡が来ず車の中でいらだっていた。そんなとき女性を呼び出した男と車で鉢合せをする。その男のシャツに血がついていることに気づき、車から逃げる男を追いかけるが。。。。



このあと主人公はあっさり男を捕まえ警察に突き出す。映画のまだ前半である。どうなるのかと思ったが、ストーリーは単純にはいかない。数多くの起伏をつくりながら、転結に結ぶ。すんなりはいかない。むしろやるせない気持ちにさせる。これにはゾクッとさせられた。何でこんな結末に持っていくの??残虐だ。

昨年の日本映画でこのレベルに達している映画は残念ながらないと思う。よくできた韓国映画のレベルには現在の日本レベルではどうしても達し得ない。ある意味日本がお上品すぎると言うべきか、ええかっこしいのコンプライアンス社会になってしまった気がする。警察の暴力的取調べなんてマスコミの糾弾を浴びる。足利事件のような万に一つの過ちでぼろくそである。韓国はまだ違うようだ。一時代前の「仁義なき戦い」あたりで見せたハチャメチャさが日本社会から姿を消しつつある気がする。ヤクザはいてもサギ犯罪中心のインテリヤクザであって、こういう暴虐的な世界とは違う気がする。

この映画は音楽もいい。ソウルの街中を駆けめくる犯人と風俗店店主とともに情感をじわり盛り上げていく。あとは背景にある街がいい。坂が多い街でわりと高級住宅地のようだ。長崎、横浜などの港町のような住宅風景で逃走劇を映すには絶好のロケーションであった。何はともあれ完ぺきなクライムサスペンス映画である。



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