映画「私が、生きる肌」を劇場で見た。
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の新作である。鋭い色彩感覚と意外性のあるストーリー展開、ちょっと常識外れの映像をいつもたのしませてくれる。今回は評論家の評価が極端に分かれる。逆に怖いもの見たさの気分にさせてくれる。衝撃的な予告をみてドキドキしながら新作を見たが、期待を裏切らない作品だった。
形成外科医ロベル(アントニオ・バンデラス)は、画期的な人工皮膚の開発に没頭していた。皮膚移植の事例を学会で発表するシーンからスタートする。大豪邸の屋敷に帰るとそこには一人のメイドが待っていた。そして部屋から見るモニターテレビに映るのはタイツを全身に着用した一人の女性(エレナ・アナヤ)だった。彼女は大きな部屋で一人でヨガをしながらたたずんでいた。
大豪邸の地下には、手術が可能な大きな診察室がある。主人公はそこで人工皮膚を移植していた。そしてもうすぐ完成しようとしていた。物語はある人物の来訪で動く。虎のコスチュームに身をまとった一人の男だ。TVインターホンに映る男はお尻にあるあざを見せてメイドを呼び出す。彼はメイドの息子だったのだ。メイドは玄関先で対応するが、強引に家にあがりこんできた。テレビの画面には街で銀行強盗があったニュースが映り、犯人として虎男が映っていた。あわてるメイド、拳銃を向けるが逆に虎男に縛られてしまう。そのとき虎男は画面をもう一度見て、そこに女性がいるのに気づく。
虎男は懸命に広い家の中を探し回る。扉を次から次へと開け、ようやくたどり着く。女の顔には見覚えがあった。虎男はまさに飢えた野獣のように個室のタイツ女を求める。虎男が女の上で暴れまわっているころ、主人公が家に戻ってきた。主人公はピストルをもって女の個室へ向かう。そして男に拳銃を向けたのだ。。。
話は10年前に戻る。主人公は妻と娘と暮らしていた。妻はやけどをしてしまう。その時この虎男も一緒にいた。彼女は全身やけどの瀕死の重傷であったが、虎男は逃げた。主人公は懸命の看病をするが、自分の姿を見てショックで妻は自身の命を絶つ。そして娘も大きなショックを受けるという過去があったが。。。。
重層構造のストーリーで、もう少し先まで語りたいがこのくらいにしておこう。
映画を見始めると、全身タイツの奇妙な女性が映る。何だろう?妻なのか、単なる監禁されている女性なのかまだわからない。そうしていくと突如虎のコスチュームの男が来る。こういうぬいぐるみを着た男が出てくるのはデイヴィッドリンチ監督の映画によくあるパターンだ。怪奇ものなのか?いや違う。理解に苦しむ。音楽が緊迫感を高める。ドキドキしてくる。
その後2度ほどタイムスリップしてようやくある程度ストーリーが読めてくる。それまでずいぶんと時間がかかる。心因性ショック、監禁、強姦、皮膚移植と題材自体はどきつい。変態マンガの世界ともとれるが、そんなに不自然な話ではない。でも伏線をいたる所に散らせたかなり手の込んだ作りかただ。
先を読ませぬ脚本は類推がしづらい。最後まで予測困難であった。
主役を演じるアントニオバンデラスはまさに適役といえよう。整髪料で固めた髪をびしっと決めたうえ、細いセンスの良いネクタイをしめたスーツ姿はなかなかスタイリッシュだ。タキシードの着こなしもかっこいい。タイツ姿の女もなかなかの好演だ。肌をさらし、ワイルドな男たちの愛撫にも耐える。
彼が住む豪邸が想像を絶する屋敷だ。これは凄い。そこに掛った絵画も素晴らしく、美術の見事さもいつも通りだが、原色のトーンが若干抑えられているのがセンス良く見える。。
賛否両論の意味はわかった。
自分は素晴らしい作品だと思う。
スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の新作である。鋭い色彩感覚と意外性のあるストーリー展開、ちょっと常識外れの映像をいつもたのしませてくれる。今回は評論家の評価が極端に分かれる。逆に怖いもの見たさの気分にさせてくれる。衝撃的な予告をみてドキドキしながら新作を見たが、期待を裏切らない作品だった。
形成外科医ロベル(アントニオ・バンデラス)は、画期的な人工皮膚の開発に没頭していた。皮膚移植の事例を学会で発表するシーンからスタートする。大豪邸の屋敷に帰るとそこには一人のメイドが待っていた。そして部屋から見るモニターテレビに映るのはタイツを全身に着用した一人の女性(エレナ・アナヤ)だった。彼女は大きな部屋で一人でヨガをしながらたたずんでいた。
大豪邸の地下には、手術が可能な大きな診察室がある。主人公はそこで人工皮膚を移植していた。そしてもうすぐ完成しようとしていた。物語はある人物の来訪で動く。虎のコスチュームに身をまとった一人の男だ。TVインターホンに映る男はお尻にあるあざを見せてメイドを呼び出す。彼はメイドの息子だったのだ。メイドは玄関先で対応するが、強引に家にあがりこんできた。テレビの画面には街で銀行強盗があったニュースが映り、犯人として虎男が映っていた。あわてるメイド、拳銃を向けるが逆に虎男に縛られてしまう。そのとき虎男は画面をもう一度見て、そこに女性がいるのに気づく。
虎男は懸命に広い家の中を探し回る。扉を次から次へと開け、ようやくたどり着く。女の顔には見覚えがあった。虎男はまさに飢えた野獣のように個室のタイツ女を求める。虎男が女の上で暴れまわっているころ、主人公が家に戻ってきた。主人公はピストルをもって女の個室へ向かう。そして男に拳銃を向けたのだ。。。
話は10年前に戻る。主人公は妻と娘と暮らしていた。妻はやけどをしてしまう。その時この虎男も一緒にいた。彼女は全身やけどの瀕死の重傷であったが、虎男は逃げた。主人公は懸命の看病をするが、自分の姿を見てショックで妻は自身の命を絶つ。そして娘も大きなショックを受けるという過去があったが。。。。
重層構造のストーリーで、もう少し先まで語りたいがこのくらいにしておこう。
映画を見始めると、全身タイツの奇妙な女性が映る。何だろう?妻なのか、単なる監禁されている女性なのかまだわからない。そうしていくと突如虎のコスチュームの男が来る。こういうぬいぐるみを着た男が出てくるのはデイヴィッドリンチ監督の映画によくあるパターンだ。怪奇ものなのか?いや違う。理解に苦しむ。音楽が緊迫感を高める。ドキドキしてくる。
その後2度ほどタイムスリップしてようやくある程度ストーリーが読めてくる。それまでずいぶんと時間がかかる。心因性ショック、監禁、強姦、皮膚移植と題材自体はどきつい。変態マンガの世界ともとれるが、そんなに不自然な話ではない。でも伏線をいたる所に散らせたかなり手の込んだ作りかただ。
先を読ませぬ脚本は類推がしづらい。最後まで予測困難であった。
主役を演じるアントニオバンデラスはまさに適役といえよう。整髪料で固めた髪をびしっと決めたうえ、細いセンスの良いネクタイをしめたスーツ姿はなかなかスタイリッシュだ。タキシードの着こなしもかっこいい。タイツ姿の女もなかなかの好演だ。肌をさらし、ワイルドな男たちの愛撫にも耐える。
彼が住む豪邸が想像を絶する屋敷だ。これは凄い。そこに掛った絵画も素晴らしく、美術の見事さもいつも通りだが、原色のトーンが若干抑えられているのがセンス良く見える。。
賛否両論の意味はわかった。
自分は素晴らしい作品だと思う。
「ミッドナイト…」と「私が…」の両方共こちらに書かせていただくことお許しください。
タイムトラベルものは大好きですが、時にタイムパラドックスの難解さに頭痛がすることがあり^_^;)、優しいウッディアレンのことですし、レビューを読む限りそういう心配はなさそうだと思うのですがどうでしょうか(^○^)
文学と芸術に造詣の深くない私ですが、それでも知的好奇心をゆさぶられ、上等な気分になれそうな映画ですね!
アルモドバルは、「神経衰弱ぎりぎりの女」を最初に見、度肝を抜かれて以来のファンです。必ずしもすべての作品が好きということはないですが、この人のインモラルなヒューマニズム、とでも言うのか、ともかくクセになる監督です。豪華なんだかチープなんだかわからない色遣いもイイ!
まだハリウッドデビューする前の、「アタメ」で愛すべき(?)ストーカーをやっていたアントニオバンデラスが古巣に戻って、どんな演技をするのかも楽しみです。
素敵なレビューをありがとうございました。
この監督が新作を撮ったら劇場に見に行くというパターンが続いています。うれしい日々です。
>タイムトラベルものは大好きですが、時にタイムパラドックスの難解さに頭痛がすることがあり
文学、芸術の話をコメントしましたが、この映画の中で難しいことは何も言っていません。ヘミングウェイ、フィッツジェラルドその存在自体を示す強い特徴を観客に示すだけですからご安心ください。
しかも、何でこんなところに行ってしまったのというからくりの話は一切ありません。だからすんなり入って行けたのかと思います。
>この人のインモラルなヒューマニズム、とでも言うのか、ともかくクセになる監督です。豪華なんだかチープなんだかわからない色遣いもイイ!
本当にくせになる監督ですよね。この映画見ようによっては変態的に見える方もいらっしゃるかもしれない。だから賛否両論に分かれるのでしょうね。ネタばれもあるのでコメントにかけない題材もあるくらい、ものすごく多い題材なのにこの時間で簡潔にまとめる脚本、編集は実に見事だと思う。
しかも彼の色彩感覚はここでも見事でしたよ。絵画などの小道具も上手に使っていましたね。しかも、凄いお屋敷がロケに使われていて、スペインの金持って半端じゃないなあと思いました。
両方とも必見でしょうね。実はもう一人好きな監督の作品劇場で見たんですけど、気分が乗らずブログアップできないところです。それだけ2作の衝撃が強かったんでしょう。
またよろしくお願いします。