映画とライフデザイン

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映画「ジュリエッタ」 ペドロ・アルモドバル

2016-11-06 20:25:38 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
スペインの奇才ペドロ・アルモドバル監督の最新作映画「ジュリエッタ」を見てきました。
深みのある脚本とあわせ、映像美にすぐれる実によくできた作品である。



ペドロアルモドバル作品は久々だ。前作は珍しくコメディタッチでちょっと合わなかったが、アントニオバンデラス主演「私が生きる肌」では思いっきり、ペドロアルモドバルの世界を堪能させてもらった。この映画も音楽編集美術といつものコンビとペドロアルモドバルが組んで、いつもながら色彩設計に優れた映像美を堪能させてくれる。お見事である。

マドリードに住む中年女性ジュリエッタ(エマ・スアレス)はつき合っているロレンソからポルトガルへの移住を説得され、引越しの準備に入っていた。そんな時街で偶然娘の親友だった女性に出くわす。彼女は失踪した娘アンティアに先日会ったという。元気で子供もいるようだと聞き動揺する。娘は18歳になった時に一人で瞑想にふけると言って、飛び出したままだったのだ。


ジュリエッタはポルトガル行きを突如止めて、昔住んでいたアパートへ行き部屋を借りることにするのだ。そして、どこに住んでいるのかわからない娘あての手紙を書きながら、過去を振り返る。

雪の中ジュリエッタ(アドリアーナ・ウガルテ)が列車で一人移動している時、食堂車で一人の男性に出会い、意気投合する。彼は漁師で妻がいたが、五年間寝たきりということであった。その後来た手紙には、妻が危篤状態と書いてある。自分に会いたいと思って手紙をくれたのと、ジュリエッタは彼の住む海辺の町へ向かう。その時はすでに妻は亡くなっていた。久々の逢瀬に2人は熱く交わり合い子供アンティアができた。


その後3人は家政婦とともに暮らしていた。娘が9歳になり、友人とキャンプに出発したあと、ジュリエッタが夫といさかいを起こした直後に彼の乗った漁船が嵐にあい、夫は亡くなってしまう。その後、ジュリエッタは精神のバランスを崩すようになるのであるが。。。

1.深みのある脚本
カナダのノーベル賞作家アリス・マンローの「ジュリエット」という短編集の3つの作品をペドロアルモドバルが巧みに脚本化している。ジュリエッタとその夫、そして娘アンティアという主要三人だけでなく、映画に深みを与える数人の登場人物を放つ。この隠し味が抜群に効く。


元夫の家にいる家政婦、元夫が親しくしていた女性、ジュリエッタの父母、病床につく母を介護するために雇った家政婦兼父の愛人である外国人女性、娘アンティアの友人とその母親、ジュリエッタの今の恋人、列車でジュリエッタを最初に誘った中年男性
登場人物が多いように見えるが、そうは感じさせない。それぞれに役割をもたせ、その関係がジュリエッタの今の精神状態に影響を与えている。ジュリエッタが何人かの死をみて感じる人生の無常感がにじみ出て、重厚感のある脚本となっている。当然ながら原作は読んでいないが、原作はかなり良くできた短編なのであろう。

2.対照的なジュリエッタ
前髪の長い中年女性が主人公として出てくる。どこか色あせた女だ。精神が安定しないので、そうならざるを得ないのであるが、若き日のジュリエッタは実にいきいきとしている。短髪のアドリアーナ・ウガルテは実に魅力的だ。元夫と出会ってすぐに列車の中で騎上位で派手に交わる。そして海辺の町の彼の家に向かい、大胆に肌を合わせる。アドリアーナ・ウガルテはヌードになり、弾力性のあるバストを露出する。美しい。


3.ペドロアルモドバルの映像美
アルモドバル映画の美術と編集の水準の高さは極めて高い。ここでも色合いが美しく、海辺の町の描写とあわせすばらしいものとなっている。また、バックではアルベルト・イグレシアスの不安な心を増長させる音楽が鳴り響く。50年代から60年代までの映画では、バックで高らかに音楽が鳴り響くものが多い。最近はアクションものくらいで、若干抑え気味のものが多いのではないか。でも映像が流れる間ずっと音楽が続くが、映像へのマッチングが鋭いのでまったく違和感がない。というよりも表現を強く見せる効果をもっている。


脚本は次から次へとジュリエッタに苦難の道を進ませる。それでも最後に向けては若干光がさす。スイスの山道の中を真っ赤な車が走る。テーマカラーの赤が効果的に目に焼きつく。






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