映画とライフデザイン

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地下鉄のザジ ルイマル

2011-04-06 20:13:17 | 映画(フランス映画 )
フランス・ヌーヴェルヴァーグの代表格ルイ・マル監督が『死刑台のエレベーター』、『恋人たち』に続いて撮り上げたのが『地下鉄のザジ』だ。前2作のイメージとは別人のタッチだ。戦前のコメディを意識した早回しやコマ落としなどの、映像トリックをふんだんに使っている。
ルイマルは1人の10歳の少女をパリの街の中に放つ。そして数多くの奇人変人と出くわさせる。カラー作品のこの映画では60年のパリの風景、風俗、ファッションが色つきで楽しめる。コメディ感覚は多少自分の感覚とずれるが、次から次へとパリの街を奥深く見ているのは楽しい。


十歳の少女ザジことカトリーヌ・ドモンジョは母とパリにやってきた。駅では母の弟が待っていた。母の恋人も待っていて、2日後にまた会おうと母はザジを預け恋人と消えてしまった。叔父さんはナイト・クラブの芸人だった。ザジは地下鉄に乗りたかった。でも地下鉄はストライキで動いていなかった。叔父さんの友達で運転手シャルルの車で家に向かった。家では美人の叔母さんが出迎えた。
翌朝もザジは地下鉄の乗り場に行った。門は閉っていた。落胆して泣き出したザジのそばに一人の得体の知れぬ男が近寄った。ザジは男とノミの市に行ったり、レストランに入ったりした。その男は一緒に叔父さんの家に向かう。美しい叔母さんに色目を使って叔父さんにつまみだされた。叔父さんはザジを連れてエッフェル塔に出かけたが。。。。。


このあとザジはパリの街を縦横無尽に走り回る。そして、奇人変人と次から次へと出くわす。
ロケが中心で、街の片隅からセーヌ川のほとり、エッフェル塔まで次から次へと映像が変わっていく。展開は早い。ザジは監督の無理のある指示に答えて、変態と思しき奇人たちと互角の演技をする。常に全力疾走だ。10歳に似あわぬ大人の会話もする。これはすごい。また、エッフェル塔の高所でのロケにも恐れ知らずに立ち向かっていく。エッフェル塔の非常階段でのロケは日本では到底無理なシーンだろう。あんな高いところで撮影したらたちまちストップが入るはずだ。見ている自分の方が肝を冷やす。

タッチとしてはチャップリンを思わせる。基本はドタバタコメディだ。最終に向かいその色彩をより強くする。ハチャメチャぶりには正直驚かさせる。

パリの映像では車に注目した。いわゆるクラッシックカーと思しき、40年代以前と思われる車が数多く走っていた。意外に思えた。フランスの代表車亀型シトロエンも走っているが、そうは目立たない。80年にパリに行ったことがある。その時は至る所に亀型シトロエンが目立った。もう型が変わりつつあったときだと思う。フランスは一つの車を大事にする傾向があるのであろうか?車ファンにも楽しめる映画だ。
あとはこの観光バスが傑作である。セーヌ川の遊覧船を思わせるそのスタイルが凄い。


余計なことだが、亀型シトロエンは私の大好きな車である。子供のころ、フランス映画で「ファントマ」というのを見た。これが実におもしろかった。ジャンマレー演じる主人公怪盗ファントマが乗っていたのがシトロエンである。追いかける警察を後ろに見ながら、手前のスウィッチを押して空に飛んでいく。ほくそ笑むファントマ。あの雄姿に憧れた。幼稚園から小学校にかけての親友の家にシトロエンがあった。彼の家でシトロエンをいつも舐めるように見ていた。凄いなあと思っていた。父にその話をしたら、その車は彼の家の車じゃないよと言っていた。そもそも普通のアパートに住む彼の家にあるわけないとの話であったが、実のところ彼の親はお偉いさんのお抱え運転手だったようだ。そんな身近にあった車が今でも好きだ。


コメディのセンスは合わないけど、パリの風俗研究家には必須の映画かな?

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