映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「夜の蝶」 京マチ子&山本富士子

2015-06-15 20:24:42 | 映画(自分好みベスト100)
映画「夜の蝶」は1957年(昭和32年)の大映映画。名画座で見てきました。


これも上映を楽しみにしていた映画だ。二人の主人公にはモデルがいる。京都の芸妓出身で銀座の名物マダムだった「おそめ」ママ上羽秀と銀座の老舗クラブ「エスポワール」の川辺るみ子ママである。まさに「おそめ」ママは飛行機で週3日京都、週4日東京を往復していた売れっ子だった。それをモデルにしたんだから当時はかなり話題になったようだ。書いたのは川口松太郎で両方の店を贔屓にしていた。

アクの強い京マチ子のママ姿もすばらしいけど、やはりここでも山本富士子が冴えまくる。
ストーリー自体は大したことないけど、映画としてはよくできている。夜の世界に精通する吉村公三郎監督作品だ。

銀座のバー「フランソワ」のマダム・マリ(京マチ子)はやり手で政治家や人気作家も手玉にとりながら店を繁盛させている。その銀座で、京都の芸妓出身のおきく(山本富士子)が新たに4丁目にバーを開業することになった。新参者のおきくは各酒場に挨拶廻りするが、その中にはマリの妹分けいのバーもあった。おきくは、女給を集めるため、スカウトを業とする秀二(船越英二)に接近する。いきなり現ナマ五万円を積み、東京での女給の周旋を依頼して、無事開店にこぎつけた。おきくは満員盛況となり、夜の銀座の話題となる。マリをはじめとした他店のママたちは落ち着かない。ここに関西の堂島デパート社長白沢(山村聡)が東京に進出すべく、腹心の木崎(小沢栄太郎)とともに登場する。


繁盛のうわさを聞いて、マリがお客とともに「おきく」に乗り込んでいくと、「フランソワ」の常連も多数来ているの驚く。しかも、白沢は「フランソワ」に最初に立ち寄ったのに、用があると出て行った先が「おきく」で気まずい感じとなる。
マリとおきくの因縁は古く、かつて大阪道修町で結婚したマリの夫が京都に囲った女がおきくだったのである。しかも、白沢は実はおきくのパトロンで、彼女の銀座進出に骨折っていた。こんな男をめぐってのトラブルも尽きないのであるが。。。


1.山本富士子
一橋大教授で若き経営学者の楠木建が絶賛するノンフィクションの傑作石井妙子著「おそめ」を読むとそこに昭和30年前半の「おそめ」の写真がある。そこに写る姿をみると、彼女を意識して山本富士子が髪を結っているのがわかる。コンパクトにまとめた髪型が素敵で、巧みに男性をあやつる京都弁は男心をいかにもそそる。この映画の山本富士子は特に美しい。

2.おそめと俊藤氏
実際のおそめは元々京都生まれで新橋の置屋で見習いをした後、故郷の京都で芸妓となる。


スポンサーに落籍されて京都木屋町に住んでいたところで知り合った1人の男が、のちに東映敏腕プロデューサーとして名をあげる俊藤浩滋氏なのである。映画ファンには富司純子の実父、寺島しのぶの祖父といったほうがいいだろう。おそめは旦那と別れたあと作った小さなバーでのちの名声のかけらもなかった与太者の俊藤とともに店を切り盛りするのである。もちろんおそめと富司純子とは血縁関係がない。最初は独身だといいつつ、おそめのところへ入り込んだ訳だから俊藤は悪い奴だ。

自分は30年以上前から六本木にある俊藤浩滋氏の長男が経営する店に飲みにいっている。「おそめ」ってどんな人なの?と恐々聞いたことある。きれいな人だったよ。とさっぱりいう。それ以上にその長男が父の愛人であった「おそめ」で修業をしていたと聞いて驚く。

3.京マチ子とエスポワールのママ
女の最大の悪は嫉妬と愚痴というが、そういった女の業を演じさせると、京マチ子は天下一品だ。山本富士子を睨む目は憎たらしい。映画の設定では大阪出身となっているが、モデルとなった川辺るみ子ママは実際には秋田美人である。大正生まれにはめずらしく、167㎝の大柄だったママとは、粋人白洲次郎が仲良かったらしい。でもこの映画同様おそめの店にも行っていたようだ。というわけで白洲をモデルに山村聡が関西の経済界の大物を演じる。堂島デパートなんていって、どこを意識しているのかなあ。

のちの大映のスター叶順子も光ってはいるが、ここではまだ1人のホステス役に過ぎない。川崎敬三はこのころは三枚目というよりもふられ役、どれもこれも情けない顔を見せる。それに対して、大映きっての男優スター船越英二はここでも二枚目役でモテモテだ。この女給周旋業は今でいうとホステスのスカウトマンと同じじゃない。ついこの間見た「新宿スワン」を思わず思い出し、同じじゃないかと吹き出してしまう。

先週も銀座の夜を楽しんだけど、銀座の美女と一緒にいると魔界の夜って感じになるよね。

(参考作品)
夜の蝶
銀座の頂点に立つ女の対決


夜の河
山本富士子が京都の染物屋の跡取りを演じるよろめきドラマ


おそめ―伝説の銀座マダム
銀座の女を描いたノンフィクションの傑作

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