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S20年生、後期高齢ゾーン、人生最終コーナー「遊行期」の
徒然残日写真録

181108 帚木蓬生(ははきぎほうせい)「逃亡」読了、戦争の不条理、S20年前後の状況彷彿!

2018年11月08日 | アフターセブンティ

 新潮社から1997年に発行された細かい字の662ページにおよぶ大著。

 

第十回柴田錬三郎賞受賞とある。義兄から譲り受けて読み始めたが読了するのに大変。当時の新聞の書評欄に売れ続けている秘密は不条理を読み通させる筆力と解説されている。社会派小説と言っていいのか範疇はよくわからないが、表紙見返しに故国が終戦と同時に憲兵に牙をむいた。日本のために諜報活動に明け暮れた報いが「戦犯」の二文字だった・・。身分を隠し名を偽り命からがらたどり着いた故国も人身御供を求めて狂奔していた・・・。緊張感にみちた展開とあふれる感動の2000枚と・・記されている。

 著者、帚木蓬生さんは1047年福岡生まれ。私より二つ下。東大仏文卒―TBS勤務―九大医学部卒、現在精神科医。だいぶ頭の出来が私とは違いそう。冒頭に資料収集に協力してくれた人が紹介され謝意を述べておられるが第二次大戦中の香港で活躍した憲兵の話。敗戦と同時に支配者から非支配者に劇的に変化した一憲兵の心理描写、緊迫した逃亡生活、つかまって巣鴨プリズンにいれられ、死刑判決への怯えを心理学者的筆致で描かれている。


五木寛之さんなどは幼少の頃の平城での敗戦、引揚の実体験から執筆しておられるが帚木さんは未体験の敗戦、逃亡生活を原稿用紙2000枚も書ききるのだから、その構想力、筆力は確かにすごいのだろうね。鬼畜米英の戦前から神国ニッポンがやぶれてGHQのいいなりに日本人がコペルニクス的価値観変換を遂げる様、天皇の戦争責任問題などをからめせて読ませる本に仕立てあげている作者はやはりすごいものですね。

 私の記憶に薄い小学校入学前の数年の敗戦日本の日本人の生きようがこの本で詳細に描かれている。内田康夫の旅情ミステリーはすいすい読めるがこの本は字の小ささと622ページの暑さで読むのに苦労したが刑事とのおっかけっこの緊迫感や戦中の憲兵のスパイへの拷問場面には引き込まれた。この民間スパイへの拷問や虐殺が戦後戦犯容疑者として米英と日本の警察から追われることになるのである。今も続く不条理との戦いの小説である。

 戦後73年、まだアメリカの占領は続いているのか?沖縄対政府、本土、内地との出口なき戦いが続いている!天皇、皇后両陛下の懺悔の行脚は来年5月に終了するが・・・アメリカ、トランプ大統領の中間選挙、上院は共和党が過半数を維持したが、下院は民主党に過半数を奪還された。しかし大統領の好戦的、保守姿勢はかわらないに違いない・・日本は・・・


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