ゴールデン・リタイアーズ

S20年生、後期高齢ゾーン、人生最終コーナー「遊行期」の
徒然残日写真録

渡辺淳一の「孤舟」を読む

2010年12月30日 | アフターセブンティ

 渡辺淳一といえば時代を読み、ビジネスマンの願望をよく知ったベストセラー作家だ。「失楽園」や「愛の流刑地」など日経新聞に連載された時は仕事にでかける電車の中で毎日楽しみして読んだものだ。久しぶりに書店をのぞくと平台にベストセラーとしてつみあげられていた。20万部売れているらしい。テレビのエコポイントで交換した図書券をもっていたので購入。
 常務執行役員であった主人公が60歳で非主流派ということで子会社の社長に追い出されるのを拒否して退職してしてしまう。毎日が日曜日の生活になり、自由を楽しむどころか妻、子からけむたがられ、無視され、娘が家を出、妻も娘のマンションにうつりヨガの助手をして働くという。ペットのビーグル犬と広い家に残され、一人住まいを余儀なくされる。主婦の仕事の大変さを思い知るも、会員制デートクラブに入会し、娘くらいの年頃の女性との逢瀬を楽しみ始める。ホテルでの食事や酒代、車代などで大枚を浪費したり、数回デートをかさねるが、その女性との思いがとげられない。ある日、結婚すると告げられ愕然とする。いままで付き合ってきたのはやさしいし、おいしいものを食べさせてくれるし、自慢げに昔話もしないし、権威をかさにきないからつきあってきたと言われ、目が覚める。もう大会社の重役ではない、犬を散歩させている、ただのおじさんになったのだ。だから風呂掃除もし、ごみ出しもし、ペットの世話もし、なんならプライドをすてて、駐車場の案内係員でもなんでもやらなければだめということを
自覚すべき。明日から変わろうと決意するところで小説は終わる。
 作家というのはいろんな形で取材したり、テレビほかで情報収集して、創造力を働かせて小説を書くのであろうが状況設定が少々極端な気がしないでもない。今まで、自分の秘書をもち、部下を動かし、銀座の高級クラブで接待をし、午前様で帰っていた男がいきなり24時間家におり、妻や家族を部下と同じようなつもりで相対していたのならうまくいくはずはない。専業主婦の仕事はやってみれば分かるが大変な仕事である。退職金、貯金、その他財産、すべて折半して別れましょうと言われても仕方ないくらいだ

私の場合、62歳で10年ぶりに福岡に帰り、妻との生活に戻ったが、65歳までは週3日の勤務を継続した。収入は半減、立場も変わったがいつも妻と顔を突き合わせているわけでなく、母親の介護の応援もあったので何回か妻との間でいさかいがあったがソフトランディングがまあうまくいった方だと思う。

経験上言えることはリタイアをうまくするには
1、自由になる軍資金はある程度確保しておくこと(月5~10万円)
2、よく言われるように自分なりの趣味をもっておくこと(一人でできるもの)
3、家族のために稼ぐという役割ではなくなったのだから、妻との共同生活者の立場で自分でできる家事は応援すること
4、ビジネスマン時代の価値基準を家に持ち込まないこと。昔話もきらわれる
5、つまらぬプライドはすてること
6、できるだけ地域のひとと触れ合う、自治会役員もかってでる
7、家にこもっているとろくなことがないので、できるだけ散歩、ジョギングなどの生活習慣をつけること
いずれにしても、しがらみから解放された自由人をめざし、こころ静かに生きたいものである。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする