宝石ざくざく◇ほらあなJournal3

ロシア語をはじめ、外国語学習に関するあれこれを書いておりましたが、最近は…?

1粒で3度おいしい

2019年06月22日 | 
角川文庫の4月の新刊『フィンランド語は猫の言葉』(稲垣美晴)を読む。
この本について知ったのは、ご多分にもれず、言語学者というかロシア語の先生というか、の黒田龍之助さんの著書の中でだったと思う。
具体的にどの本だったかは覚えていないけれど。
この文庫の解説も黒田さんが書いている。

この本はこの文庫の前にすでに3つの版が出ていて、2008年に出たという猫の言葉社版のハードカバーを見たことがあったけど、その時は買わずにいたのだった。表紙はこの版のが圧倒的にかわいいのだけど。
文庫だとやっぱり気軽に手に取って読んでみようかなという気になる。

1970年代、フィンランド、フィンランド語が日本にとってまったくマイナーだった頃の留学記、初版は1981年文化出版局から出ている。
この本の面白さについては、たぶんもうよく知られているし、解説でも黒田さんが余すところなく伝えておられる。
留学記、異文化遭遇記の類を読むのが好きで、言葉の話も好き(フィンランド語について全然知らなくても、その分からなさが分かりやすく書かれていて面白い)、加えて著者の稲垣さんの文章が面白く、私にはちょっと懐かしい感じ。自分がローティーンだった頃の、子供向けの本からちょっと背伸びして読んでみようと思う本の文体がこういう感じだったなぁというか。

というわけで、私には1粒で2度おいしい的な本だったのだが、さらにもうひとつ。
著者は1952年東京生まれ、東京藝大卒業、藝大は美術学部だけど、ピアノに親しんでおられ、ピアニスト舘野泉さんの話も出てくる。
読みながら、あーなにかどこかにあったはずと思ってネット検索してみたのだけどなにも出てこず。
んー違うかなー、と読み進むと、終盤に、あ、YMOのライブ盤「公的抑圧」を聴いた話が出てくる。
「中でも、私は『東風』と『The end of Asia』が好きになった。」とのこと。

そこで確信。坂本龍一さんの本か記事かに、たしかフィンランド語の翻訳家にについてあったはずなのよーと探したら、ありました(笑(^^;)
89年発行の『SELDOM-ILLEGAL 時には、違法』(というタイトル、今はもうご法度ですね・・・あ、今見てるこれも角川文庫だわ)。
中学生のときに初めてラブレターをもらった話があり
「そうしたらその女性から、三十歳ぐらいになってからかな、コンタクトがあって、実はその時のラブレター事件の女の子は私よ、というんで、会ったんですよ。それがわりと有名な翻訳家になっていて、フィンランド語の唯一の翻訳家なんだよ、今。何冊も本を翻訳してて、自分も本を書いてて、フィンランド文学にかけては日本でのオーソリティになっているんだよね。」
とあるから、これは稲垣さんだろうなぁ、と。

だからどうだというわけではないのだけど、ヘウレーカ!(ちがうか(^^;)と、なんとなく嬉しい。
と、同時に、この『SELDOM-ILLEGAL 時には、違法』のこの辺の描写、当時30代、盛りの人が振り返る中坊時代って感じがよく出てて(取材・構成は見城徹氏)、そこからまた流れた長い時を思ってなんともいえない気持ちになってしまった。

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