緩い斜面の下り坂はよいです。適当な負荷があるので筋力が強くなったような錯覚になり気分が良くなる。速度が上がる。しかし速く歩くと前へ進むことばかり考えてしまいます。その必要は、老人にはないわけですから、重力に逆らわない程度に前に進むのがよろしい。下り坂の場合、進むことは落ちることです。落ちることは楽しい。スキーと同じです。宇宙ステーションは常時落下しているから無重力を楽しめる。
●インチキ料理
料理は全くできません。したことがないどころか、しようとしたことがない。現代社会人としては失格ですが、後期高齢者としては辛うじて許されるでしょう。
問題はもちろんあります。家内を怒らせたとき外食もかえって事を荒立てるので自炊する。ということにしたいが、まったく能力がない。コンビニへ行ってチーズとパンを買ってきます。それだけあれば引きこもりも可能、と何かの本にありましたが、自明解にすぎるので卵とブロッコリーも買う。
自炊といえる条件は何か?湯を沸かして卵を三個入れるとゆで卵が三個できるので一個食べて残りは次の食事に使う。火を止めても余熱があるのでブロッコリーを三分の一に切って入れると柔らかくなるので食べます。これは料理といえるか?
おかげで料理ができるようになりました、と言ってみたい。小さな自立は老人の楽しみ、といえるのではないか?
インチキ料理というのは、鍋に放り込むだけであるとか、言葉で言うと簡単すぎて、料理を作ったとはいえない類でしょう。案外、主婦も実はよくしているのではないかと思えます。
それでも少なくとも私だけはそれを毎日おいしく食べることができる、したがってこれは私にとっては料理である、といえるならば、自分で作って自分で食べる、という自炊原則を満たしたことになる。
食欲もあまりないし自己顕示欲もない老人ならこれでよし、といえるところが重要なわけです。
