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哲学の科学

science of philosophy

アートを見る(6)

2025-08-10 | その他


ARTNEWS JAPAN7/30 によれば、イギリスの素人が家財整理セールで一五〇ポンドで購入した水彩画がサルバドール・ダリ(1904-1989)の真作と判明されて、一〇月のオークションに出される(予定落札額2,3万ポンド)とのこと。この素人はBBCのお宝鑑定番組のフアンで、お宝発掘を狙っていた、という。サルバドール・ダリの鉛筆サインがある版画は筆者も昔、オークションで落札(3万円)して、今も壁にかけています。額がぼろで壊れそうなのでガムテープで補強してあります。
一九九〇年国際宇宙会議はドイツ統一直後のドレスデンで開かれました。次期会長を推薦する指名委員だった筆者は、五代富文氏の推薦スピーチをして、日本から初の会長を出した記念の会議です。東ドイツだったドレスデン市街は荒廃した瓦礫の中に王城が残っていてそこに国立美術館がありました。目当てのルーカス・クラナッハ(父) 『ザクセン公ハインリヒ四世とカタリナ・フォン・メクレンブルクの肖像』(1514) を見つけて絵ハガキを買おうとしましたが、売店でそういうものはない、と言われてしかたなく、分厚い所蔵品カタログを買いましたが、白黒で当時の価格で六千円でした。
ルーカス・クラナッハ(父)(1472-1553)はザクセン選帝侯フリードリヒ三世の宮廷画家でありドイツで最大の絵画工房を持っていましたが、プロテスタントの始祖マルティン・ルターを支援して彼の肖像画を描き、版画の印刷工房を使って聖書のドイツ語訳を印刷し配布しました。宗教改革のおかげで宗教画の注文は減ってしまいましたが、代わりに貴族諸侯がヴィナスの裸婦などを買ってくれましたので、クラナッハは最大の画家であり続けました。彼の作品は美人画の典型となり、ドイツをはじめ世界中の美術館に所有されています。
絵画アートは、制作過程から見ると、時代と文化圏によって違いがあり、互いに影響しあって変遷があるが、見る側から見ると、二次元に置かれた図柄と色調です。現代のデジタルデータとしてみると、ピクセルから構成するものとなって、原則的には、二次元の三要素ないし多要素のデータで表現できます。
宇宙開発で使われる衛星画像の技術はアポロ計画で基礎が作られ、地球観測衛星を使った地表画像の処理から大発展しました。日本に導入されたのは一九七〇年代初頭ころですが、そのころ宇宙開発事業団の新入社員だった筆者は、だれもよく知らない衛星画像処理をやらされて日本初の疑似カラー衛星画像を作ったりしていました。今から見ると、これが日本のデジタルアートの走りだった、のかもしれません。
アートには販売高、興業価額、オークション落札額など商業実績が付随して、人気度合いが測られます。人々がどれほどそのアートを欲しているか、が金額で表現され、ランキングなどで評判になります。評価額に比例した報酬が作者に支払われ、アートの商業サイクルがなりたちます。それぞれの時代の権力者階級や富裕階級の人々がアートを購入し次世代に残されます。評価の高いものは、最終的に公共の美術館、学校などに所有され、一般の人々の鑑賞に供されます。鑑賞者の側から見ると、そういうものがアートであり、価値を認められて世の中に存在するものとなります。
アートの作者の側では、展覧会などで入賞することが実績となります。オークションなどで価格が付くこと、売れた実績がいわゆる人気度を表し、公表されて、確定していきます。。それぞれのシステムで評価の虚実は論評されますが、それも込みで実績となっていきます。評価自体、場所と時代の関数でもあり、変遷は免れません。
バブルのころ、一九八〇年代はデパートの最上階などにアートの販売コーナーがあって、値段を見ては、高いとか、安いとか楽しんでいました。意外と、買えそうな価格もあって感心したものです。たまに買ってみたりしましたが、壁に収まらなかったりして苦労したりしました。石膏ボードの壁には特殊なくぎを使ったりピクチュアレールからつったりしなければなりません。安い絵を買うと古すぎて額が壊れていて、そこから修理しなければなりません。それでもうまく飾れるといい気分で眺めることができます。








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