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哲学の科学

science of philosophy

アートを見る(7)

2025-08-21 | その他


一九九〇年代は、石版画の限定版が売れていました。今でもありますが、リトグラフにエディションナンバーが振ってあって、73/300などが多かったですが、後になると、7/10など限定版的な数字になってきて、サインが鉛筆できちんと入っていました。筆者もありがたがって買った時期もあります。その後、また1000部くらいになったり、印が入ったり、サインなしなどが出回って、限定版の権威は落ちたようです。
デジタルアートは、無限に複製できる。印刷が発明されたころは、これが大きな利点でしたが、アートにとってデジタルの時代、複製コストが無限に廉価になり、アートの価格維持が不可能になります。作者に適切な報酬が行くためには、著作権やオリジナリティの価値の維持が必要です。これに適応するために作られた現代のシステムがNFT(Non Fungible Token)でしょう。これによって絵画アートの価値が維持されて、その権威が保持できるのか?それは今後の人々の価値観がどう推移していくの問題です。
高松和樹(1978~)は現代画家。Artpedia注目のアーティスト。多重レイヤーを通して描かれる銃や刀を持つ少女の絵が特徴。髑髏と下着少女という漫画古典的な図柄を影絵のように描く。若い人に人気らしい。筆者の子供世代だから昔風な絵柄なのでしょう。メッセージも戦争、少女、死など単純といえます。
現代画家は、まず新鮮な手法を作り出して、それを繰り返すことで独自の世界を創出します。それに時代を先取りするテーマを盛り込む。作家がそれに執着するストーリーを語る。それを見て、作品を欲しい、という人が現れれば、アートがなりたちます。
「KYNE-girl」。若手現代画家、KYNEの油絵やシルクスクリーンが最近、オークションで価額暴騰し時々、不落札になったり、おもしろいようです。モノクローム線描きの女性の顔、キネガールは現代イラストそのまんま、プリントを逆に油絵にした、といえます。これが高額で売れる。現代日本を象徴する現象です。ただ同然のプリントにこそ、時代的価値がある、というメッセージかな?
作家がどう考えて自作の値段をつけているのか、分かりませんが、油絵、アクリル画などの場合、画廊やアートフェアなどで数万円から百万円くらいの低価格です。名も知らない顧客でも買う気になります。若い画家としては、売れれば時間給としても生活費になる、という程度の価格です。
これがオークションに出るときは何十倍にもなります。オークションのコストとしても最低価格は数十万円にならないと、運営が難しいでしょう。それで、ある時は数百万円以上になる。素人から見れば、アートは高い、と思います。
九月六日から北海道立三岸好太郎美術館では、フゴッペ洞窟で三岸好太郎の絵画を展示して、そこで現代画家鈴木ヒラク(1978~)が新たにドローイングを行う、というパフォーマンスが開かれます。北海道では夏も終わり良い季節でしょう。良い絵が描けるといいですね。
フィンセント・ ファン・ゴッホの、「夜のカフェテラス」の油絵をポスターにしたもの。アマゾンで2千円くらい。家の壁に飾れます。印象派の有名絵画、映画のポスター、などがよく売れているようです。アートの原点ですね。
フィラデルフィア美術館印象派コーナーの突き当りの奥に、ピエール・オーギュスト・ルノワール、Grandes Baigneusesがかかっていました。一歳になる娘を抱いていましたので、円柱の椅子に座って、休んでいました。そのルノワールしか見えない椅子で数分も見ていました。だれもいませんでした。外は酷暑。五十年近く前です。
二〇二一年、愛知県美術館所蔵の宮本三郎「家族」の油彩キャンバスの下に宮本が描いた旧作「裸婦」が隠れていたことが発見されました。宮本が二重キャンバスを保存していたことは誰も知りませんでした。この年は宮本死後四七年で秘密が解除されたタイミングになっています。絵画に秘密が残るというのもロマンがあります。ちなみに、宮本画伯は家内が美大の学生だったころの教授だったそうで、絵は好きだったとのことです。
















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