(107 街のファッション begin)
107 街のファッション
一雨ごとに春が過ぎる。花が散って、町の服装は変わっていきます。厚いコートを着ている人は少ない。テレビで今日の服装を勧めているのでしょう。天候に合わせて。道行く人のファッションは、かなり見事に、マッチしています。
さりげなく歩いていますが、出がけには、着るものを探したり、鏡を見たり、髪をとかしたり、苦労しているでしょう。天候は戻ったり行きすぎたりして、せわしない。筆者は年を取って寒がりなので、厚手のジャケットに襟巻をして、前を開けたり閉めたりで温度調節しています。外気は不定、室内はだいたい暖かいが、信用できない。服装について、しまった、とおもうことは毎日あります。
自分の姿は見えないので、気にしませんが、道行く人のファッションはすれ違いでも、きちんと見えます。だいたい、しっかり考えているらしい、と感心します。
桜坂の花は、満開。実際、花見に最高の日は、年に三、四日しかありません。この季節、雨がよくふるし。年度切り替え。若い人には人生の節目だったりします。
学校の入学、就職など、浮遊したような感覚。引退した老人には関係ありませんが、思い出は、はっきりあります。新しい服を着る機会もあるでしょう。刺激と緊張は重要です。休みの日は、当然カジュアルですが、季節が変わるし、冬着は脱いで、シャツ、セーターでしょうか?筆者は保守ファッションで、ジャケットとシャツです。こういう古臭い服を着ている人は、年配でも少なくて、セーターかパーカーですね。筆者はシャツを着ていて、パーカーというものは持っていません。大昔、山に行ったときなど、ウインドパーカーと言っていたものを着たくらいです。今の人が来ているのは、ヨットパーカーの派生形でしょう。逗子マリーナの売店で、昔買おうかな、と思ったことがありますが、実際着る気はしないので、マリーナと書いてあるマグカップを買いました。
暖かくなって黒いダウンコートを脱いだ町行く人々は、セーターやジャケットを見せて歩いています。軽い感じの生地で季節が夏に変わったことを知らせてくれます。ジャケットといっても、ビジネス風襟付きではなくて、襟なしで、ジッパーやフード付き。カジュアル性、つまり若さを演出しています。昔のジャンパーは実用からきていたからか、裾と袖口は防寒のため締まっていました。今のは裾は短く、締めていません。実際、女子は、ミニスカートのときだけ、前が閉まった厚手のジャケットを着ていますが、ジーパンのときは上着は軽くて、前のジッパーを開けて着るようです。フード付きを着ている人が多いけれども、かぶっているのは見たことがありません。雨になると傘をさして、フードは使いません。幼さを演出する飾りのようです。昔、米国の寒地に住んでいたころ、幼児がフードを被せられているのを見て、いかにも、幼児の象徴的衣装と思い込んでいました。娘が幼児のころ、フードを嫌がってすぐ脱いでしまうので、気温の違いか、と思っていましたが、親のしつけの違いかもしれません。
朝晩は冷えるけれども、日中は暖かい。男は半ズボンやティーシャツが出てきました。女は長スカートを愛用している人が多い。長いドレスの上から皮ジャケットなど、粋です。スリットがおしゃれな感じを出しています。おじさんもおしゃれな上着を着ています。どこかで、いろいろ買っているのでしょうか?筆者は、もう十年近い古ジャケットです。季節はすぐ変わるから、古くても気になりません。いや逆に、どうせ気温も行ったり戻ったりですから、すこし厚地のでよし、としています。
季節が巡って、衣替えになると、去年の繰り返しですから、クローゼットから一年前にしまったものを出せばよし、となります。そのはずですが、去年と同じでよいのか?そうではないようです。ファッションというものがあって、毎年新しくなります。今年は、すこし、きちんとしてきたファッションらしい。ベルトを見せたりしています。腰回りが見えています。シャツをベルトにしまったりしています。去年までは、上着でウエストは隠れていました。上着丈も短いらしい。わずかに違うだけなので、かまわないとすれば、去年のものを着られます。しかしこのわずかが、問題にするのかどうか?素人にはまったくわかりません。洋服屋さんにきけば、たちまち分かります。分かるべきかどうかが、しかし、そもそも分かりません。
ファッションは数年で変遷する。アパレル業界が、顧客のクローゼットを一新できる機会を狙っているのは、確かでしょう。一九七〇年代に、はじめてミニスカートがはやったころ、たんすのなかには、これに似合う服は、ひとつもありませんでした。パンティストッキングのメーカーが、ミニをはやらせて大成功した、と言われています。イギリスからツイッギーが来日して大成功したという説が今でも残っています。日本経済は世界的な高度成長。現在のアジアの大成功が開始されたころです。その後、一九九〇年代の大不況。物価高騰。いったん長くなったスカートは、生地が惜しいから、また短くなるかと期待されたが、そうはなりませんでした。スカートが景気をつくっているのではないらしい。いずれにせよ、数年たつと、飽きが来る、というのが大真理でしょう。
この不況では、スカートの流行と景気が無関係なことがはっきりするでしょう。今度は、ファッショなど気にする記事を書いている暇はなさそうです。
季節の変わり目は風が強い。トレンチコートが目立ちます。風が吹くと、特に気持ちがよい服です。第一次世界大戦の塹壕で使うためにできた、という原型を現代でも保存していた、いかにも風に強い、雨に強い。襟を立ててベルトを締めれば相当な防寒に使えます。それを春風では、前を開けてカジュアルに使うので、急に楽な服になっています。この季節、女性は特に好んで長いコートを着ています。
若いころ、先輩が格好良く着ているので、真似して買いました。季節が夏になるころ、ようやく慣れてベルトを脇に止められるようになったころ、先輩は、もう着ていませんでした。
防寒コートがいらないとなると、急にジャケットでかっちりした服装が出てきます。腰回りが出るからベルトやズボンのウエストを見せる必要があります。今年は前が開いたり、コートなしだったり、ズボンが腰から見えて、カジュアルではあっても、ちょっときちん、という風のようです。暖かいから、ミニで足を出していると映えます。ミドリフとか肩出しとかも目立つ、先にしてしまえば勝ち、ですかね。一方、厚手のツイードもいます。それは筆者です。夏服を出すのが面倒で、四月半ばまでいいだろう、と、していますが、汗をかきそうです。
ジーンズはハイライズにしてウエストをはっきり見せる。上着の裾は短くするか、たくし込んで脇はふくらます。ジーンズのウェストクロスは。ますます幅広になっているようです。ジーンズが目立つ季節ですが、あえてきっちりの長スカートも負けることはないでしょう。短いコートも使われますが、季節が早めに進むので、追いつかれて危うい場面が出てきます。サングラスや帽子も早めに使わないと、追いつかれます。あわただしい時期です。そのうちかき氷が出てきますから、油断できません。
