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哲学の科学

science of philosophy

現代を生きる人々(8)

2020-11-07 | yy75現代を生きる人々


「羊飼いはいない。いるのは羊の群れだけである。(一八八五年 フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』)」

鄧小平の座右の銘とされている、耐冷耐苦耐煩耐閑不激不躁不競不随以成事(王陽明の四耐四不の辞 一五〇七年頃)では耐閑、つまりひまに耐えることが一番むずかしい、と言われます(拙稿43章 「ひまを守る」)。開発独裁を進めても血沸き肉躍る戦いにはなりません。高度成長期が終わるにつれ夢が消え大義が見えなくなります。日常的ビジネスの退屈に耐えることが、大国のエリート層の資質になってきます。

こうして現代の平和は続きます。その巨大な退屈からどう抜け出せばよいのか?

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや(一九五七年 寺山修司「われに五月を」)
失われた大きな物語を背後に感じられる世代は、まだ退屈は少なかったでしょう。現代人はかつてそのようなものがあったことさえ思い出せません。
宗教が消え、ナショナリズムが消え、マルキシズムが消え、さらに政治組織であろうと地下組織であろうとゲリラであろうと、献身を求めるコミュニティはどれもが消えかかっています。
世界を征服したアレキサンダー大王(紀元前三五六年―三二三年)の死後に興隆したエピクロスの庭(哲学の道場 紀元前三〇七年)は心の平安(αταραξία:ataraxia)を最高価値としましたが、神秘的あるいは崇高なものをすべて否定する哲学です。宗教の敵ですね。
なにか現代人の心情に似ています。ディオゲネス(紀元前四一二年―三二三年)のシニカル哲学もこのころできました。 








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