goo blog サービス終了のお知らせ 

哲学の科学

science of philosophy

絶滅する人々(4)

2015-11-07 | yy48絶滅する人々

そうならない場合があり得るとすれば、婚姻生態は人間の身体に埋め込まれてはいないのでしょうか?有史以来、人類は営々として結婚し続け、家族を再生産し、その結果今日の人口に達しました。人類学によれば、人類の婚姻形態は、単婚、一夫多妻、一妻多夫など多様性が認められますが、長期にわたる婚姻の内側で妊娠出産育児が行われる繁殖生態は、人類普遍的とされています。
そうであれば、婚姻が人類共通の繁殖生態であることになり、その生態は人類共通であるその身体機構にもとづいていることになります。少なくとも婚姻を構成する多くの行動因子が人間の身体に埋め込まれているに違いありません。しかしそうであるとすれば、最近の先進国にみられる少子化現象は、婚姻生態を構成する何らかの因子が欠損する現象である疑いがでてきます。
その欠損因子は文化、あるいは社会機構に起因するものである、という議論がマスコミあるいはアカデミズムに広く行われています。もし文化が婚姻構成因子の欠損に関わるものであるとすれば、かつては身体反射からなる行動因子によって構成されていた婚姻生態に、ある時代から、文化あるいは社会機構に起因する行動因子が決定的役割を果たすものとして入り込んだことによる、といえるでしょう。
たとえば文化が人間の婚姻可能条件を決定するようになってくれば、文化的社会的な条件不備による婚姻不可能、つまり未婚、晩婚現象を招来することになります。未婚、晩婚現象がつい最近の先進国に限って起きていることから推論すれば、この条件不備は、狩猟採集文化では存在せず農耕牧畜文化においても存在せず近代産業化の初期にもなかったにもかかわらず現代のたかだか百年足らずの間に欧米、日本、韓国など高度産業化諸国において急速に顕在化した現象である、といえます。

ではここで、最近百年の高度産業化にともなって文化的社会的な婚姻可能条件の何かが致命的に欠損するようになった、という仮説を立ててみましょう。
まずマスコミあるいはインターネットなどに表れている多くの議論では、未婚化晩婚化の原因は、女性の就職が容易になったことで、未婚女性が経済的に自立して快適な生活を維持することが可能となったことである、とされます。
また高学歴を獲得した女性たちは、組織内出世競争に参加し高収入と社会的地位を得る希望を持つので、独身生活を中断して結婚する場合は、人生の交換に値する高収入高ブランドの男性を要求するから、となっています。つまり現代社会においては女性を婚姻に誘導する文化的社会的因子が委縮してしまった、とされます。わかりやすい理論です。
現代的問題を経済から説明している点で冷静な優れた理論といえます。しかし拙稿の関心は、それら理論の裏にある原始時代から人類の身体機構に埋め込まれた行動因子です。








Banner_01

コメント    この記事についてブログを書く
« 絶滅する人々(3) | トップ | 絶滅する人々(5) »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

文献