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今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「旅は記憶のためにするものではない。思い出のためにするものではない。記憶と思い出は勝手に残るもので、残そうと
心がけるものではない。
それなのに、残らないことを恐れる。写真にとって痕跡を残し、残っているから記憶していると思いたがる。
痕跡至上主義は、カメラの普及によって生れた。海外旅行するものは、写真をとるのに追われている。せっかくヨーロ
ッパに来たのである。忘れては残念だと、ぱちぱちうつしてばかりいる。
カメラを捨て、肉眼で見て、忘れるものは忘れるがいい。いくら名所古跡だろうと、縁がなければ忘れる。残ったものが
自分の旅である。
古人はそうして旅をした。古人の心を心とせよ、カメラの目で見て、自分の目で見ないのは、何よりもったいないし、み
っともないからよせ、と何度書いても聞かないだろう。」
(山本夏彦著「毒言独語」中公文庫 所収)
「旅は記憶のためにするものではない。思い出のためにするものではない。記憶と思い出は勝手に残るもので、残そうと
心がけるものではない。
それなのに、残らないことを恐れる。写真にとって痕跡を残し、残っているから記憶していると思いたがる。
痕跡至上主義は、カメラの普及によって生れた。海外旅行するものは、写真をとるのに追われている。せっかくヨーロ
ッパに来たのである。忘れては残念だと、ぱちぱちうつしてばかりいる。
カメラを捨て、肉眼で見て、忘れるものは忘れるがいい。いくら名所古跡だろうと、縁がなければ忘れる。残ったものが
自分の旅である。
古人はそうして旅をした。古人の心を心とせよ、カメラの目で見て、自分の目で見ないのは、何よりもったいないし、み
っともないからよせ、と何度書いても聞かないだろう。」
(山本夏彦著「毒言独語」中公文庫 所収)