今日の「 お気に入り 」は 、ノンフィクション作家 ビル・ブライソンさん の
著書 " The Body ― A Guide for Occupants " からの 抜き書き 。
” Because of our frailties, much of our own planet is off-limits
to us. Earth may feel like a generally benign and kindly place,
but a very large part of it is too cold or hot or arid or lofty for us
to live successfully on it. Even with the advantage of clothing,
shelter, and boundless ingenuity, humans can manage to live
on only about 12 percent of Earth's land area and just 4 percent
of the total surface area if you include the seas. It is a sobering
thought that 96 percent of our planet is off-limits to us.
The thinness of the atmosphere puts a limit on how high we
can live. The highest permanent settlements in the world are in
the Andes in Northern Chile on Mount Aucanquilcha, where
miners live at 17,500 feet, but that appears to be absolutely at
the limits of human tolerance. The miners themselves choose to
trudge an additional 1,500 feet up the slopes to their workplace
each day rather than sleep at 19,000 feet. For purposes of
comparison, Mount Everest is about 29,000 feet. ”
( 出典 :Bill Bryson 著 " The Body ― A Guide for Occupants " .
Knopf Doubleday Publishing Group. 刊 )
上掲の英語の文章は 、翻訳本の中で 、次のように 日本語訳されています 。
「 脆い体をもつわたしたちにとって 、この惑星の大半が立ち入り禁止
区域だ 。地球は概して快適で恵み深い場所に感じられるかもしれない
が 、実はその大部分は 、わたしたちがうまく暮らしていくには寒すぎ
るか 、暑すぎるか 、乾燥しすぎているか 、標高が高すぎる 。衣類
や住居や限りない創造力という強みはあっても 、ヒトがどうにか住め
るのは地球の陸地の約十二パーセント 、海洋も含めれば全表面積のた
った四パーセントにすぎない 。
人間がどのくらいの標高に住めるかに制約を加えるのは 、空気の薄
さだ 。世界で最も標高の高い人間の定住地は 、チリ北部アンデス山脈
のアウカンキルチャ山にあり 、鉱山労働者たちが標高五千三百四十メ
ートルの土地で暮らしているが 、これは紛れもなく人間に耐えられる
限界に思える 。鉱山労働者たちでさえ 、仕事場のある標高五千八百
メートルの場所で寝るのではなく 、毎日苦労しながら四百六十メー
トルのぼることにしている 。比較のために書いておくと 、エベレス
トは標高約八千八百五十メートルだ 。」
( 出典 : ビル・ブライソン著 桐谷知未訳 「 人体大全 ― なぜ生まれ 、
死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか ― 」新潮社 刊 )
原書および翻訳本からの引用はここまで 。
ヒトが生存可能な環境が地球の全表面積のたった4%と 、言われてみれば当然のこと
ではありますが 、ショックです 。
少しでも暮らしやすい場所 、限られた安住の土地を求めて 、移動し続けるのが人類の
宿命なのでしょうが 、これからの世界 、移民や難民の問題を避けて通ることは出来なさ
そうです 。
原書の第11章の表題は「 EQUILIBRIUM 」ですが 、抽象的にすぎるためか 、
翻訳本では 、「 ヒトが生存可能な環境とは 」と変更されています 。この章では 、
ヒトの「 細胞 」に関する興味深い事実や研究成果が数多取り上げられて
います 。モノマニアックな研究者たちの逸話、その変人 、奇人ぶりが
ユーモアたっぷりに書かれてもいます 。
同じ章の最後の方に出てくる 、ナチス・ドイツのドイツ軍や 、日本軍の
731部隊が行った非人道的な様々な行為についての記述は 、抑制的に語られて
いるだけに 、鬼気せまるものがあります。著者も翻訳者、日本の出版社もこの章の
タイトル付けに苦慮したことが察しられます 。