今日の「 お気に入り 」は 、ノンフィクション作家 ビル・ブライソンさん の
著書 " The Body ― A Guide for Occupants " からの 抜き書き 。
” ・・・ For nearly all vitamins and minerals, the risk
of taking in too much is as great as the risk of getting too little.
Vitamin A is needed for vision, for healthy skin, and for fighting
infection, so it is vital to have it. Luckily, it is abundant in many
common foods, like eggs and dairy products, so it's easy to
get more than enough But there's the rub. The recommended
daily level is seven hundred micrograms for women and nine
hundred for men; the upper limit for both is about three
thousand micrograms, and exceeding that regularly can
become risky. How many of us could begin to guess even
roughly how close we are to getting the balance right ? Iron
similarly is vital for healthy red blood cells. Too little iron and
you become anemic, but too much is toxic, and there are
some authorities who believe that quite a number of people
may be getting too much of it. Curiously, too much or too little
iron both provide the same symptom, lethargy. " Too much
iron in the form of supplements can accumulate in our tissues
causing our organs literally to rust, " Leo Zacharski of
Dartmouth-Hitchcock Medical Center in New Hampshire told
New Scientist in 2014. " It's far stronger risk factor than
smoking for all sorts of clinical disorders, " he added. ”
" The greatest of vitamin controversies was stirred up by the
American chemist Linus Pauling ( 1901 - 94 ) who had the
distinction of winning not one but two Nobel Prizes ( for
chemistry in 1954 and for peace eight years later ). Pauling
believed that massive doses of vitamin C were effective
against colds, flu, and even some cancers. He took up to
forty thousand milligrams of vitamin C daily ( the recommended
daily dose is sixty milligrams ) and maintained that his large
intake of vitamin C had kept his prostate cancer at bay for twenty
years. He had no evidence for any of his claims, and all have
been pretty well discredited by subsequent studies. Thanks to
Pauling, to this day many people believe that taking a lot of
vitamin C will help to get rid of a cold. It won't. "
" ・・・ Eight of the twenty amino acids cannot be made in
the body and must be consumed in the diet. If they are missing
from the foods we eat, then certain vital proteins cannot be
made. Protein deficiency is almost never a problem for people
who eat meat, but it can be for vegetarians because not all plants
provide all the necessary amino acids. It is interesting that most
traditional diets in the world are based around combinations of
plant products that do provide all the necessary amino acids.
So people in Asia eat a lot of rice and soybeans, while indigenous
Americans have long combined corn with black or pinto beans.
This isn't just a matter of taste, it seems, but an instinctive recognition
of the need for a rounded diet. "
" The most prudent option, it seems, is to have a balanced and
moderate diet. A sensible approach is, in short, the sensible approach. "
( 出典 :Bill Bryson 著 " The Body ― A Guide for Occupants " .
Knopf Doubleday Publishing Group. 刊 )
上掲の英語の文章は 、翻訳本の中で 、次のように 日本語訳されています 。
「 ・・・ ほとんどすべてのビタミンとミネラルは 、とりすぎると 、不足
したときと同じくらい大きな危険がある 。ビタミンAは 、視力や健康な
肌 、感染症の撃退のために必要なので 、食事でとることが必須だ 。
幸い 、卵や乳製品など多くの一般食品に豊富に含まれていて 、じゅう
ぶんすぎるほど簡単に摂取できる 。しかし 、それが厄介なところなの
だ 。一日当たりの推奨摂取量は女性七百マイクログラム 、男性九百マ
イクログラムで 、男女とも上限は約三千マイクログラム 、習慣的にそ
れを超えると危険になる 。大まかにでも 、どのくらい食べれば正しい
バランスが取れるか見当をつけられる人がいったい何人いるだろう 。同
じく 、鉄も健康な赤血球を維持するために不可欠だ 。鉄が不足すると
貧血になるが 、とりすぎると中毒を起こす 。一部の専門家は 、かなり
多くの人がとりすぎているのではないかと考えている 。不思議なこと
に 、鉄の過剰摂取と欠乏はどちらも同じ 、嗜眠 ( しみん ) という症状
を引き起こす 。『 サプリメントという形で鉄をとりすぎると 、体の
組織に蓄積して 、文字どおり器官をさびつかせてしまうことがある 。』
と 、ニューハンプシャー州のダートマス・ヒッチコック医療センター
のレオ・ザカルスキは 、2014年 、≪ニュー・サイエンティスト≫
誌に語った 。『 さまざまな臨床的障害を招く 、喫煙よりはるかに強
力な危険因子といえる 』 。」
「 最大のビタミン論争を引き起こしたのは 、アメリカの化学者ライ
ナス・ポーリング ( 1901 - 94 ) だった 。ふたつものノーベル賞 ( 1954
年に化学賞 、その八年後に平和賞 ) を受賞するという栄誉に輝いた人
物だ 。ポーリングは 、ビタミンCの大量投与が風邪やインフルエンザ 、
ある種のがんにまで効果があると信じていた 。一日四万ミリグラムの
ビタミンCをとり ( 一日当たりの推奨用量は六十ミリグラム ) 、ビタミ
ンCの大量摂取のおかげで自分の前立腺がんを二十年間食い止めること
ができたと主張した 。どの主張にも根拠はなく 、すべてはのちの研究
で 、ほぼ信用に値しないと判断された 。ポーリングのせいで 、今でも
多くの人がビタミンCをたくさんとれば風邪が治ると信じているが 、
そんなことはない 。」
「 ・・・ 二十種類のアミノ酸のうち八種類は体内でつくれないので 、
食事でとらなくてはならない 。わたしたちが食べるものの中にそれら
が欠けていると 、ある種の重要なタンパク質がつくれなくなる 。肉を
食べる人にはタンパク質不足の心配はほとんどないが 、菜食主義者の
場合は問題になることがある 。必要なアミノ酸すべてがとれる植物は
限られているからだ 。興味深いことに 、世界のたいていの伝統的な
食事は 、必要なアミノ酸すべてがとれる植物性食品の組み合わせを基
本にしている 。たとえばアジアの人々は米と大豆をたくさん食べる一
方で 、アメリカ先住民は昔からトウモロコシとクロマメまたはインゲ
ンマメを組み合わせていた 。どうやら味の問題だけではなく 、バラ
ンスのよい食事の必要性を本能的に察知していると思われる 。」
「 ・・・ 最も賢明な選択肢は 、バランスの取れた適度な食事をとる
ことらしい 。結局 、分別のあるやりかたこそが 、合理的な方法な
のだ 。」
( 出典 : ビル・ブライソン著 桐谷知未訳 「 人体大全 ― なぜ生まれ 、
死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか ― 」新潮社 刊 )
原書および翻訳本の第14章からの引用はここまで 。
ビタミンC のご利益は 、戦後の日本人の頭に刷り込まれましたね 。
頭のどこかで 、摂れば摂るほど体にいい 、と信じ切っています。
余分に摂っても 、不要な分は勝手に排出されると聞かされ 、安心しています 。
それが証拠に 、みかんを沢山食べると指の先が黄色くなり 、尿が黄色くなるからと 。
若き日に受けた洗脳は 、一生ついて回ります 。
脳裡を去ることはありません 。
死して事已む 。