「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

歳歳年年人同じからず Long Good-bye 2021・09・19

2021-09-19 05:06:07 | Weblog




  今日の「 お気に入り 」。


   「 昆虫には昆虫の時間があり 、魚には魚の 、鳥には鳥の時間がある 。生命体の時間もそれぞれ違い

    ます 。ただ 、共通して言えるのは 、生命というものが刻々と変わっていくということです。だか

    ら、時間が積み重なっていく。ロボットは変わりませんから、生物のように時間が累積していきま

    せん。

     ロボットの大きな利点は疲れを知らないことと、同じことを何回でも繰り返せること。だから

    結果が予測できる。それが機械の持つ信頼です。

     かたや 、生物は彼ら自身が刻々と変わっていきますから 、まったく同じことは繰り返せません 。

    つまり、同じことは期待できない。期待するとしたら、同じ ” ような ” ことなのです 。こうした

    変化も含めて私たちは相手への ” 期待 ” をつくっていきます 。それは、機械に対するものとはま

    ったく違う期待です 。

     だからこそ 、相手の変化や状況に思いを巡らせる必要があるのです。それが実はとても楽しい

    ことなんですね。自分も刻一刻と変わっていくし 、相手も刻一刻と変わっていく。

     たとえば 、『 夫婦 』や『 親子 』というように、ある二人の関係を文字にしてしまったら、そ

    の時点で化石化して 「 変わらない 」ように見えるけれども 、実は変わっていくものなんです 。

     夫婦の間で 「 あなたと私の関係は一生変わらないよね ? 」と話しているときの関係は 、文字

    にした場合の 「 変わらない 」とは明らかに違います 。

     もしかしたら、ある日 、どちらかが盲目になるかもしれないし、事故によって片足を失うかも

    しれない し、病気で寝たきりになるかもしれない 。でも 、そんなふうにお互いの状況が変わる

    ことはあっても、あなたに懸けている私の想 ( おも ) いは変化しませんよという宣言のようなもの

    なんですね 。」


   ( 出典:山極寿一著 「 京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ 」. 朝日新聞出版 刊 )




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