今日の「 お気に入り 」は、「 放哉俳句 」をいくつか 。
「 なぎさふりかへる我が足跡も無く 」
「 たつた一人になり切つて夕空 」
「 雨の幾日がつづき雀と見てゐる 」
「 墓石洗ひあげて扇子つかつてゐる 」
「 何か求むる心海へ放つ 」
「 考へ事して橋渡りきる 」
「 こんなよい月を一人で見て寝る 」
「 淋しいぞ一人五本のゆびを開いて見る 」
「 わが顔ぶらさげてあやまりにゆく 」
「 にくい顔思ひ出し石ころをける 」
「 なんにもない机の引き出しをあけて見る 」
「 犬よちぎれる程尾をふつてくれる 」
「 人を待つ小さな座敷で海が見える 」
「 いつしかついて来た犬と浜辺に居る 」
「 思ひがけもないとこに出た道の秋草 」
「 たまらなく笑ひこける声若い声よ 」
「 帯のうしろに団扇をさしてお婆よく歩く 」
( 出典:「 尾崎放哉句集 」池内 紀編 ( 岩波文庫 ) ㈱岩波書店 刊 )