今日の「 お気に入り 」 。
「 人間は『 共に生きる 』という感覚なしには幸福感が得られない動物だとつくづく感じます 。それは
そもそも人間の定義がそうだからです 。だから 、自分が行う行為の先には常に相手がいる 。物理的
には誰もいなくても 、神であったり 、不特定多数の世間のような何かしらの相手が必ずいるのです 。
そのなかで自分がつくられていく 。自分が自分を定義するだけでは成り立たない社会を生きているか
ら 、誰かといるという感覚が常につきまとっている 。子どもといたり 、恋人といたり 、あるいは嫌
なヤツと一緒にいることもある 。いずれにせよ 、決して一人ではない 。誰かがいるという 、そうい
う世界 。人間というのはもともと社会的な動物なんです 。
もし引きこもっていっさいの人間を遮断してしまったら 、そもそも人間であることを否定している
ことにも繋がりかねません 。なにも会話によるコミュニケーションが取れなくてもいいのです 。少な
くとも誰かが共にいるという感覚を受け入れることができれば 。もっと究極的なことを言えば 、『 誰
か 』は人間でなくてもいいのかもしれません 。そばに生き物がいることを受け入れられれば大丈夫で
す 。でも 、それすら拒否し始めたら危ういかもしれません 。」
( 出典:山極寿一著 「 京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ 」. 朝日新聞出版 刊 )