「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・07・31

2013-07-31 13:15:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」。

 「 だいぶ年をとってきた。スキーでは、急斜面も新雪でも転ばなかった僕が、けっして転ばない

  ような緩斜面で転んで骨折した。単にドジだったわけではない。体力が衰えて、運動神経が少し

  ずつにぶくなってきたのだ。これが年をとるということなんだろう。少しずつ死が近づいてきて

  いると思う。

  もしも、孫たちから『何で人は死ぬのか』と聞かれたら、僕はこう答える。

  『生きているすべての命には限りがあるんだよ。秋になると木の葉は枯れるだろう。落葉は大地

  に栄養を与える。季節が変わり、春に新しい緑を育てるために葉は散るんだよ』

   夏が終わって秋がくれば、僕も葉を落とす。たんたんと、たんたんと、葉を落とす。

  そうやって死んでいく。

   僕が『がんばらない』という本に書いた言葉がある。

  『今日は死ぬのに、とてもいい日だ』

   死が近づいたときに、こんな言葉を言えたらいいなあと思っている。」 

        (鎌田實著「大・大往生」小学館刊 所収)


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