「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・07・04

2013-07-04 07:30:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、中野孝次さん(1925-2004)の著書「ローマの哲人 セネカの言葉」より。

 「 いずれは去らねばならぬところを早く去ろうが遅く去ろうが、それがどうしたというのです? 

  長く生きることではなくて、我々が配慮しなければならぬのは、満足して生きることです。なぜ

  なら、長く生きるかどうかを定めるのは運命ですが、満足して生きることは当人の心掛け次第だ

  からです。充実して生きたのなら、その人生は十分に長い。しかし充実して生きたと言えるのは、

  心がその善き素質を十分に育て上げ、完全に自分自身を支配しきったときです。

   八十歳生きたところで、もし怠惰に過しただけなら、何になるでしょう? そんな人は生きた

  のではなく、人生に在ったにすぎません。遅く死んだのでなく、長く死んでいたのです。『あの

  方は八十年生きた』と言う。問題はいつから彼の死を数え始めるかです。
                                 『手紙』93-2・3」

 「 小さい体型の人こそ人間として完全でありうるように、期間の短いほど人生は完全でありうる。

  寿命というのはつまらぬ外的な事柄だ。僕の人生の長さは、僕には決められない。いのちあるあ

  いだ本当に生きることだけが、僕のやるべきことです。
                                   『手紙』93-7」

  ( 中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収 )


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