「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・07・12

2013-07-12 07:30:00 | Weblog


  今日の「お気に入り」は、中野孝次さん(1925-2004)の著書「ローマの哲人 セネカの言葉」より。

  「 ふつうの旅なら、よく整えられた道に従い、土地の者に聞けば迷うことはありません。が、この旅

   では事情が違って、最も好まれる、最も多くすすめられる道が、実は一番誤らせるのです。だから

   ここで何よりも注意しなければならぬのは、羊が群についてゆくように本能的に先行者の後ろにつ

   いてゆくことで、これではみなの行く道を行くことになり、本来辿るべき道を行くことになりませ

   ん。

    ところで、多数者の賛成したことを最善と見做して、大勢の意見に従いたがる我々の性向くらい、

   我々を大きな災厄に陥れるものはありません。これではただ数に従うだけで、人生を理性の判断に

   よって導くのではなく、模倣するだけだからです。

                              『幸福な人生について』1-2・3」

  「 最も害があるのは、ただ先行者に従って行くことです。というのは、誰にとっても、ある事柄に

   ついて自分で判断を下すよりも、何かを信用して受け入れる方がやさしいのですが、それでは決

   して自分で自分の人生を導くことにはならないからです。そうやっていつでも他人に頼りきって

   ゆくことで、過ちは手から手へ渡り、我々は愚弄され、奈落の底に突き落とされてしまう。他人

   に従って身を律すれば、破滅あるのみです!
                                『幸福な人生について』1-4」

  「 人間の問題に関しては、多数者の気に入る方が善ということにはなりません。むしろ大勢が集ま

   るということ自体、それが最悪のものだという証拠なのです。

                                『幸福な人生について』2-1」

   ( 中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収 )

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