
今日も寒いです。
中国の表面処理業者さん見学の第2回目です。この号では合肥と昆山の2軒に
ついて書いています。
中国で硬質クロムめっき業者を見学してきました。その2
翌日の午後、合肥市政府の紹介で硬質クロムめっきを工程の一つとして持っ
ている油圧機器・軍事機器のメーカーを訪問した。前日の業者とは全く異なり、
国策として大規模に業務展開を行っている。従業員数3,000名。
ミグやスホーイのライセンス生産アルミ部品へのアルマイト・硬質クロムめっ
きを行うとともに、民生用のジャッキや可動式カーポートをも製品として出荷
しているとのこと。
友好都市の顔繋がりとはいえ、外国人によくもまあ、軍事機器製造工程を見
せてくれるものである。
事業所の門をくぐると、幅広い通路が遠くに霞むまで一直線にはしっている。
その両側に大きな建物が数十棟。とても全工程をみることはできないと観念し、
めっき部門と研削部門のみ見学させてくれる様に頼んでみた。
まず、めっき部門棟に入るが、アルマイト・硬質クロムめっき・カドミウムめっ
きの各ラインが並列に数十メートルの長さに設置されている。やはり中国であ
る。その規模に圧倒される。整流器(※6)の型式こそ古めかしいが、回路全体
に安全電流(※7)に対する配慮が行き届いている様に感じられるし、その他設
備も磐石な様である。
要求精度の高い軍需に対応するのだから、当たり前といえば当たり前なのだ
が。
研削工場を訪れると、CNC機械こそ置いていないが、芯間20メートルはあ
りそうな円筒研削盤を筆頭に100台になんなんとする機械群。但し、私を含め
た一群が作業場に入っていくと、お菓子を食べながら無駄話をしていた女性従
業員達が急に機械に向かっていたのには苦笑させられた。
案内してくれた総経理によれば、旧国営企業ではあっても、航空機部品製造
で培った技術を油圧機器等の民生品への加工に生かしつつ、従業員個々に採算
感覚を持たせる努力をしているそうだが、現実には「親方五星紅旗」感覚がな
かなか抜けないのかもしれない。
他にも、翼下吊り下げ用燃料タンク内面のバレル研磨(※8)作業や50メート
ルプールサイズの廃水処理施設を見たりと、いかにもこれが中国といった物量
に圧倒されつつ、旧国営工場の見学を終えた。

(安徽省は上海市・江蘇省の西隣です)

(安徽省全図です。合肥市はちょうど中央部、省都(中国語では省会)です)
合肥から上海に戻った処で、広州行きの予定に1日の余裕ができたので、
また、Yさんの飛び込みアポイント能力に頼り、上海西隣の昆山市にある外
資系の合弁表面処理企業を訪れた。
上海から昆山まで列車に乗り、昆山駅からタクシーに乗り10分で目的の工
場である。昆山市は台湾系合弁企業の一大集積地で、この会社も台湾人が経
営者だ。
従業員数は約900人、年商は1.5億元(約23億円)とのことで、一人当たりの
生産高は日本国内の業者平均値の1/4程度である。さすがに上海市を東隣に
いただく江蘇省の先進都市であり、田舎の安徽省とはかなりの差がある。も
ちろん、外資系であることや客筋の差により異なった数字の出方となる為、
地域的な差異を言いつのりすぎると眉唾ものとなってしまうが。
場内を見渡すと、事務所内のレイアウトから工場の建て方まで、そのまま
日本の(台湾の、と言い換えてもよいか)中堅企業のイメージで、中国本土の
化粧煉瓦壁感覚からするといかにも近代的な、ある種プラスチッキーな印象
さえある。電子材料向けのハンダめっきや接点用の貴金属めっき・無電解ニ
ッケルめっき・樹脂めっきなどと並んで、目当ての硬質クロムめっきもある。
サージェント浴(※9)とブランド不明の高速浴(※10)を持っている。
処理する主な品物はダンボール製作用のロールとのことだが、処理数が多
くないらしく、作業場全体に活気が無い。設備に対して無頓着で、陽極とブ
スバー(※11)が点接触(※12)となっていても平気でいる。ここでも陽極の間
隔が不統一で、どうもクロムめっきの付き回りや均一電着性に対する意識の
有無に問題がありそうだ。
ただ、事業所全体をみると非常に活気があり、めっき種毎の市場動向にか
なりの差異があるのではないかと思われた。こと、硬質クロムめっき被膜の
需要については、まだまだ小さいままなのかもしれない。勿論、一軒の硬質
クロムめっき業者を見ただけで総需要量に言及するのは愚かに過ぎるのでこ
こでやめておくことする。ちなみに、昆山市を含めた蘇州行政市域に立地す
る表面処理業者は200軒前後あるらしく、江蘇省全省やひいては中国全体に
立地する総軒数については想像もつかないとのことである。
【以下次号】

(昆山市の表面処理業者正門)
※6 整流器 電気めっきを行う際の電源のこと。サイリスタ型・ベル
トーロ型などがある。
※7 安全電流 任意の断面積の導体に対し、良好に安全性を保ちつつ流す
ことができる電流量。例えば電気銅の場合、安全電流は
1平方㎜で2アンペア。つまり、10㎜×200㎜寸法の銅板は
4000アンペアが安全電流の値。
※8 バレル研磨 通常は、密閉容器の中で被処理物を研磨材(メディアと
呼ばれる)にて、高速回転・強振・吹付け等の手法で研
磨してやることを指すが、この場合は燃料タンク自体を
前記密閉容器に見立て、その中のメディアを強振するこ
とにより、タンク内面を研磨していた。
※9 サージェント浴 クロムめっきの代表的浴種の一つ。
※10 高速浴 サージェント浴に較べ、析出スピードが速く(30~40%程度)、
被膜硬度が高く(10~20%程度)、錆にくい、という優れた特
徴を持つ。欠点は薬品が非常に高価であること。ドイツ製の
「アンカー」、イギリス製の「マック」、アメリカ製の
「ヒーフ」が主なブランド。
※11 ブスバー 陽極や陰極をめっき液中に釣るし下げる為の渡し板、通常
は電気回路の一部をなしている為、銅材であることが多い。
※12 点接触 電気回路の中で良好に通電させる為には、通電線とブスバー
またはブスバーと陽極など電流のネックになる可能性のある
地点の接触面積は、極力大きくせねばならない。この場合は
極く小さな接触面積だったことが目視にて確認できた。

(昆山は、江蘇省東南端、上海直轄市域境からすぐ西側です。蘇州と太湖の東)
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または、TEL:0942-34-1387 へお願い致します。
● シリンダーロッド・シャフト・ピストン・インナーチューブ・ロール等、
円筒形状機械部品のクロムめっき再生が得意です。
● 窒化クロム・窒化チタンアルミ・酸化クロム・窒化チタンクロム・
窒化チタン他、各種高硬質被膜をアークイオンプレーティングで
生成します。
● ローター・ファン・クランクシャフト等のバランシング(回転体釣合せ)
● ラジアルクラウン研削を始めとした円筒研削加工や、内面研削・
平面研削も行います。
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