国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

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『相棒』とゴッホ(絵から感じるゴッホの生き様論)

2010年11月11日 | マスターの独り言(日々色々なこと)
『相棒』の新シリーズが始まっている。
キャラクター性の強いドラマであるが、
その内容の重厚さと時節をとらえた話でなかなかに面白い。
完全にマンネリ化をしないようにかなり気をつけている制作者側の意図が伝わってくる。

昨日は絵画の贋作が絡んだ事件の話。
夭折の天才画家が遺作の絵を切り裂き、死の床についたことが
事件のきっかけとなっている。
これだけ聞くと、まず興味を惹かれるのはその天才画家の生き様である。
忘れ去られていた天才画家の作品が見つかり、
生前には開かれなかった個展が開かれ、小説にまでその生き様はなっていく。
「人は絵に惹かれるのではなく、その画家の生き様に惹かれる」とのセリフもあった。

僕はこれが先日観に行ったゴッホとかぶってならなかった。
ゴッホは生前に売れた絵は1枚である。(しかも本人が気に入らなかった絵だ)
ようやく認められるようなきっかけが出てきたころにはゴッホは自殺をしてしまう。
他にもアルルでの画家の共同生活やその中での「耳切り事件」。
精神病院に入っていたなど「ゴッホ伝説」はかなり多い。

日本人の好きな画家のトップにあげられるのが、ゴッホだという。
それはやはり絵に対してよりもその生き様に惹かれるのかもしれない。
死の直前に暗雲の立ちこめる麦畑にカラスの飛ぶ絵がある。
これなどはゴッホの死の心境を表しているなどと後生の人が都合良く解釈をしている。
激しいまでのタッチは、ゴッホの短い生涯を象徴するように
荒々しく生き急いだ人生を表しているなどともいうものもある。

そんなイメージ先行型のゴッホであるが
実はよくよく観ていくとかなり凝った構成を作り、色具合やバランスを考えている。
絵の具を塊のまま乗せているかのような印象だが、
その実はかなり丁寧に描き込み、荒々しくも繊細な仕上がりになっている。

ゴッホ自身画家としての活動は短く、描き始めも遅い。
確かに残っている手紙ではかなりの早筆であるかのようだが、
何度も手を入れ直していたり、同じ構図のものを何度か描き直していたりと
やることは丁寧なのだ(絵に関してだが)。

嵐のような激しい気性で、そのくせに小心者。
傲慢でありながらも、手紙の量は数多く、女性との関係も上手く結べない。
社会不適格者の烙印を押されながらも、自分の信念と絵は絶対に捨てなかった。
その激しさは絵からもにじみ出ている。
技術的なものは分からなくても、そこにゴッホ自身の魂が絵に塗り込められている。
渦巻く夜空はゴッホの心を表しているのかどうかは分からないが、
やはり生き様が見えてきてしまう。

本で「ゴッホ伝説」は知ることができる。
でもそこで知ったことを絵から感じられて、
初めてゴッホを「知った」と言えるのではないだろうか。