国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

アルバムを聴き返すたびに、しゃぶり足りなかったことを知り、僕は恥ずかしくなるのだ。

2010年11月21日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
このブログも早1年半を過ぎてしまったかのように思われるが、
たくさんのアルバムを勝手気ままに話してきた。
ブログネタとして取り上げるのには、日々新しいものが望ましいのかもしれないが、
再度取り出して聴いてみたりすると
それまで気づかなかったそのアルバムの別の角度の魅力が見えてくることがある。
また、何の気無しにアルバムを聴いていて、
その魅力に取り憑かれ、何度も何度も聴き返すこともある。
そうなると新しいアルバムを紹介するよりも
その新たな魅力をちょっと文章にしてみようかと思うこともある。

今日のアルバムはそんな1枚だ。
ビル・エヴァンスの『ザ・パリ・コンサート エディション・ワン』だ。
日本にはエヴァンス愛好者が数多くいるが、
一方で大半がリバーサイド4部作で終わってしまっているのも現状だ。
確かにリバーサイドの4枚は、エヴァンスを知る上で非常に重要なものであるが、
エヴァンスの前期、中期、後期とその生き様を知ってこそ
エヴァンスの魅力を吸い尽くしたと言えるだろう。

『パリ・コンサート』はエヴァンスの最晩年に近い公式アルバムだ。
ジャケットはエッチングであろうか、セーヌ川が描かれていて
モノクロの風景はただ静かなたたずまいを伝えている。

そんなジャケットを象徴するわけではないだろうが、
この中のエヴァンスは、跳ねるようなジャズ感での演奏ではない。
流れるようなというと分かりやすいだろうか?
縦に跳ねるのではなく、セーヌ川が流れなければならないように音が
涼やかに宙に流れていく。
ドラムやベースとの絡みが抑えられているような感じもあるが、
抑圧されたピアノの音と
マーク・ジョンソンのベースのぶんと振るうような音の絡みから、
インター・プレイの面白さが伝わってくるからエヴァンスはやっぱりスゴイ。

A面、B面どちらもエヴァンスの手慣れた曲の演奏であるが、僕はB面が好きだ。
「ジャズは大人の音楽」という月並みな言葉は好きではないが、
このB面を聴くと、そんなアダルティーな雰囲気が否が応でも漂ってくる。