国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

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ジャズ・メッセンジャーズ+不思議なサックスの旋律=ウエイン・ショーターが目指した音楽

2010年11月08日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
ジャズ黄金期の50年代から60年代を駆け抜けて、
今も活躍しているジャズミュージシャンの数はあまり多くない。
その中でも異形の巨人がウエイン・ショーターである。

ウエイン・ショーターはアート・ブレイキーの下でまずは活躍し、
その後にマイルスバンドでは参謀役を務めている。
ブレイキー大学とマイルス・スクールの2大ジャズスクールで活躍した
数少ないミュージシャンなのだ。
特にマイルスバンドにおける作曲での貢献は多大なものがある。
のちにソプラノサックスを吹くことになり、
その演奏の幅は広がり、現在でもコンスタントな活躍がみられる。

ウエイン・ショーターの特徴を上げれば、何といってもそのソロである。
「黒魔術的」と評されるようなうねうねと拗くれ曲がったテナーの旋律は、
変化が効き過ぎて大暴投かと思われているところに、
いつの間にかズバッとストライクを取っている魔球的な動きをしている。
「あれ?」と思わせていながらも、しっかりとスイングをさせてくれるところが
ショーターの魅力なのだ。

さて、今日のアルバム『スキッツォフリーニア』である。
邦訳は「精神分裂症」となるのだが、
そのためかジャケットは鏡合わせでショーターの姿がある。

このジャケットからうかがえることが、ショーターの目指したものでもある。
マイルスの所ではクインテット形式であった。
もちろんそれはリーダーであるマイルスの目指すものである。
だが、ブルーノートの吹き込みに
ショーターは2管、3管とかなりガッチリした形式で臨むことが多い。
スモールでもビックでもない、ミドルバンドで厚みのある音を目指している。

これはブレイキーのジャズメッセンジャーズも同様の形式になることが多い。
ショーターも何だかんだとテナーをブリブリと吹きまくり、
激しくビートに乗ることが好きだったのではないか。
そのためかマイルスバンドで
同僚のトニー・ウィリアムスを使ったアルバムが限られている。
不仲説もある2人だが、つまりはショーターの目指す音に合わなかったのだろう。

ショーターのテナーと作曲にカーティス・フラーのトロンボーン、
そして渋いながらもその存在感が気になるジェームズ・スポルディング。
摩訶不思議をプラスしたジャズメッセンジャーズの誕生である。