国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

仕事の都合で

2010年04月21日 | 休業のお知らせ
今日は仕事で飲み会があって、ただいま帰途の途中です。
そのため今日は臨時休業にします。またのご来店お待ちしています。

ジャッキー・マクリーンの『デモンズ・ダンス』を聴きながら…

まるで水面に波紋が広がるように…

2010年04月20日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
最近の僕のお気に入りは
ゲイリー・バートンの『アローン・アット・ラスト』である。
ゲイリー・バートンはヴァイブ奏者であるが、
僕はまずヴァイブの音が好きなようだ。
一聴するとピアノのような澄んだ音なのだが、
ピアノよりも硬質で、その残響感はみみにすっと馴染んでくる。
ミルト・ジャクソンにボビー・ハッチャーソンなどと
有名どころのヴァイブ奏者はその澄んだ音にネットリしたジャズの味付けをしている。
上品でありながらもジャズ的なそのアプローチは
どことなく歪んだ美しさがあり、そういった感じが僕の好みに合う。

ゲイリー・バートンだが、
有名盤の『ダスター』は聴いてもどうもピンとこなかった。
「いーぐる」の大音量の中で流れたとき
ふっと耳のダイヤルが合ったようで
それからゲイリー・バートンの良さに気づくようになったのだが、
『アローン・アット・ラスト』も「いーぐる」で聴いて
「これは!」という驚愕の美しさに度肝を抜かれた。
それから探し続けてようやく中古で手に入れることができたわけだ。

1曲目の「ムーン・チャイルド~イン・ユア・クヮイエット・プレイス」が素晴らしい。
4本のマレットを操り、ソロ演奏を繰り広げるバートンの
澄みながらも粘り溢れスイングする音色は静かながらも興奮する。
2曲目、3曲目とバートンのソロ演奏だ。
ピアノのようにタッチの感覚で強弱を変えられる訳ではない。
硬めの音は、空気中に張りつめた緊張感が残り、
次から次へと塗り重ねられていく。
無数の音がすっと消えていく瞬間にたまらないほどの感情が揺れ動く。

このアルバムでは、
自分でピアノ、オルガン、ヴァイブと全ての演奏をこなしてもいるのだが、
そちらも聴き所はたくさんある。
何度聴いても飽きることがない上に、ヴァイブの独特の美しさが生きた1枚なのだ。

ボーン&バリ

2010年04月19日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
昨日も名前を出させてもらった寺島靖国氏は、
ジャズ喫茶「メグ」の有名店主である。
よくインタビューで自身のトロンボーンについて語る。
ジャズ喫茶の店主たる者、楽器演奏も必要だということで
トロンボーンにはまって練習をしているそうだ。

最近あまりジャズでトロンボーン奏者というのは聞かないのだが、
トロンボーンも大事なジャズ楽器の1つである。
映画の「スイング・ガールズ」を観てみれば分かるように
ビックバンドにはトロンボーンも欠かせない楽器であった。
曲の演奏スピードが上がったせいか、
はたまた人気がなくなってきたのか、
詳細は不明だが、
ジャズでのトロンボーン奏者は少なくなってきてしまった。

僕は上から5番目ぐらいという微妙な位置でトロンボーンの入ったジャズは好きである。
一聴でそのほわ~んとした音色は聴き分けられ、
意外に曲の低音部を引き締めている。
そんなトロンボーン奏者の中でも名前を挙げるとなると
カーティス・フラーは外すことができないだろう。
有名なアルバムやサイドメンとして参加したアルバムは数多いが、
ちょっとマイナーどころで『ボーン&バリ』を上げよう。

ボーンはトロンボーン、
バリはバリトンサックスの略である。
ブルーノートにバド・パウエルとの録音の翌日、
今度はフラーがリーダーとなりスタジオに入った。
トロンボーンにバリトンサックスを組み合わせようという発想が素晴らしい。
お互いに低音を得意とする楽器である。
フラーとテイト・ヒューストンのマイナーコンビが作り出すのは、
どっしりと腰のしっかり入った力強くも柔らかい演奏である。
そこにソニー・クラークがアクセントを付けるようにバックを務める。

A面にあたる1曲目から3曲目まではフラーの自作。
タイトル曲ではお互いの楽器を生かしたソロ演奏が光る。
ジャズを聴き始めたばかりの人がこのアルバムを取ることは少ないだろうが、
トロンボーンとバリトンサックスというあまり陽の目を見ない楽器を味わいたいなら
もってこいのアルバムと言えるだろう。

あなたのジャズのふれかたは?

2010年04月18日 | 喫茶店に置いてある本
スイングジャーナル4月号で
2つの面白い記事があった。
1つは連載の「寺島靖国の辛口談話室」での寺島氏と守屋純子氏との対談で
もう1つが「春から始める新ジャズ生活」という企画ものだ。

「春から~」の方も
島本奈央子氏という「Something Jazzy」の著者と
佐藤ヒロオ氏というミュージシャンの人との対談である。
こちらの方は初めてジャズを聴く人が何を聴けばいいか
というところから話を始めているが、
コンピレーション物やベスト盤、ネット配信など
とにかくまずジャズを聴くという
スタンスから入るのがいいだろうという話から入っている。
「なるほど…」とは思うも、ベスト盤から入って
ジャズを一回挫折しかけた僕にとって「そんなもんなのかなぁ~」と思ってしまう。
後半の方でライブも大切という部分にふれていて、そちらは納得いくのだが、
世間一般に出回るコンピ物の量に対してジャズ人口が増えないのは
あんまり得策じゃないような気がしたりもする。

そんなところとつながりがあると思ったのが寺島氏と守屋氏との対談だ。
今回は後編ということで
まずI-podの話から入っている。
今のジャズを志す人たちがジャズアルバムを買わないという現状や
I-podの広がりで音楽を聴く力が落ちていることについて触れている。
僕も持っていて愛用まではいかなくても使っているから分かるのだが、
確かにオーディオで聴いたときと感じが異なる。
ちなみにオーディオをヘッドフォンで聴いた場合と
ヘッドフォンを使わない場合でも異なって聞こえる。
僕の場合やI-podは前にもふれたが、
曲当て・アルバム当てゲームで使っているのだが、時折やっぱり物足りなさを覚える。

まぁ、人によりジャズのスタンスはいろいろあるわけだ。
あなたはどんな方法でジャズにふれていく?

マイルスの何度目かの分岐点

2010年04月17日 | マスターの独り言(曲のこと)
1968年5月17日。
ある1人のピアニストが新たな階段を上ることになった。
その日、スタジオに行くと
それまで弾いたことのないエレクトリックピアノが…
そしてリーダーから一言
「今日からお前、これを弾け」

あまりのことに当然ながらそのピアニストは面食らってしまったのだが、
次に面食らってしまうのは僕たちだ。
初めて弾いたエレピでの演奏があまりにも上手すぎる。
ちょっとは戸惑ったり、上手くいかなかったり
常人ならばあるだろうが、そこはそれ。
とても初めてだとは思えない。
まぁ、エレピとはいっても鍵盤で演奏するのは変わらないわけなのだが…

そのピアニストは、ハービー・ハンコックで、
リーダーとはマイルス・デイヴィスである。
そしてそのとき録音されたのが、
『マイルス・イン・ザ・スカイ』の1曲目「スタッフ」である。
冒頭からハービーの重く濁った感じのエレピが聞こえてくる。

エレピは通常のピアノよりも「もわ~ん」とした音だ。
ピンと張りつめたような音ではない。
何を狙ってマイルスはエレピを使ったのかは僕は全く想像もつかないのだが、
単なる流行りだからというわけではないだろう。
このアルバムからマイルスはエレキ路線を走ることになるのだが、
それは単に新し物好きといった感じではなく、
時代のもつ流れをジャズに的確に組み入れようとするマイルスなりの進化が見て取れる。

6分間もの間、同じテーマを繰り返し、
飽きがきたところでふっとマイルスのトランペットがソロを取り始める。
マイルスの統制の取れたソロから一変
ウエイン・ショーターのリズミカルなソロになるころには、
いつの間にか催眠術のようにメロディーが耳にこびり付いている。
そして背後には初めてのエレピを弾きこなすハービーと
おそろしいほど勢いのあるトニー・ウィリアムスのドラムが支えている。

正直このアルバムはマイルスがコンセプトを考えたのかもしれないが、
実際に演奏で主導権を握っているのはトニー・ウィリアムスだろう。
フリー系に走っていたトニーにとっては、
例えエレピだろうとアコースティックであろうと関係なく
自分のエネルギー尽きるまでスティックに全てを込めて叩きまくる。
あまりにもはっきりしすぎるドラムは、
間もなくマイルスと袂を分かつことを表しているかのように
進む方向性の違いを感じさせる。

ハービーもまた「スタッフ」でのエレピ体験が
その後を決めてしまったようで、
マイルスの元を離れる前の手みやげとしては大きなものを受け取ったようだ。
やがてマイルスのエレキジャズ時代が始まり、
世間一般の考えるおしゃれなジャズから
様々な音が洪水のように混じり合い、
溶け合いながら生まれていくジャズへと変わっていく。