国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

She continues loving songs (前)

2010年04月04日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
ジャズブーム流行が一昔前のこととはいえ、
全盛期をくぐり抜けてきたミュージシャンはまだまだ健在である。
今回は初めてのジャズボーカルライブである。
ヘレン・メリルは日本ではとても好かれているジャズ歌手だ。
何がかといえば『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』という
名盤が思い浮かぶ。
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム」で知られる
あの甘くズンと落ちてくるような重い声、
かといってそれは不快なものではなく、
心まで溶かして音楽と同化させてしまいそうな不思議な魔力をもった声である。

今回のライブにあたり、
このアルバムを聴いてみれば1曲目「ドント・イクスプレイン」の
出だしてやられてしまった。
ギターとピアノに導かれるように
「はっしゅなう~(Hush now~)」とメリルが絡みつくように聞こえると
そこに独特の情緒溢れる雰囲気が広がる。
甘えているのではない。絞り出すように歌を喉の奥から少しずつ押し出しているのだ。
間奏にクリフォードの語り尽くさずにはいられないトランペットが緩やかにソロを取れば、
もう名盤の完成である。

そして2曲目がメリルの日本での人気を不動のものにした
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム」である。
「っゆっび~そ~」と包み込むようなメリルの歌声が出だしから聞こえれば、
切なさに胸をつかれる。
途中で止めようとしても止められない。
たかが有名盤だろうと期待もせずに思っていたが、なるほど人気が出るのも分かる。
こりゃあ、この声にやられちまいますなぁ。

そのメリルがまだ歌っているのだから、
この前のボブ・ディランといい、がんばっている人はがんばっている。
生でその演奏にふれるのが一番である。
てなわけで、ブルーノート東京に足を運んだ次第でございます。