国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

つぅーっと手元を抜けていくように彼の音楽は流れていく

2010年04月12日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
今日は右膝が痛い。
駅前の文房具屋の出入り口付近で思いっきりすっこけたからだ。
足下が雨で濡れていたのは仕方がないにしても、
底の磨り減った靴が、つぅーと滑ったときには
「これはマズイ」と思いながらも態勢を立て直すことができなかった。
今のところ痣にはなっていないが、
徐々に痛みが来てるし、青くもなってくるだろう。
あぁ、イタイ。

濡れたタイルの上は滑りやすいのだが、
手元を上手く抜けていくウナギのように
自分から抜けていってつかみ所のないジャズミュージシャンがいる。

オーネット・コールマンの『ザ・シャープ・オブ・ジャズ・トゥ・カム』
邦訳の『ジャズ来るべきもの』という方がなじみ深いだろう。

オーネットに関しては一筋縄ではいかない。
何度も聴き込み、耳を慣らしていくことで
オーネットの目指すべきジャズの姿が見えてくる。
フリージャズの開祖的な位置づけがよくされるが、
オーネットの作ろうとする音楽は非常に単純なものだと思う。
それは理論的単純さではなく、
幼児が無意識に生み出してしまうメロディーを
どうにかこうにか創り出そうとしているように思える。

1曲目、オーネットの名曲「ロンリー・ウーマン」では
盟友ドン・チェリーと分厚いテーマを聴かせながらも
その枠組みから何とか飛び出そうとするオーネットの姿がある。
バックのチャーリー・ヘイデンとビリー・ヒギンズが
しっかりとリズムを取っているため軸はぶれないのだが、
オーネットは独自のリズム感でそれに挑み、
2つのリズムがぶつかり合うような感じになっている。
そこがまるでウナギのように手元を抜けていってしまう感覚を僕に与えるのだろう。

今日は思いもよらず足を取られて転倒してしまったが、
オーネットには何度も耳を取られないとその味がつかまえられないようだ。