国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

まるで水面に波紋が広がるように…

2010年04月20日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
最近の僕のお気に入りは
ゲイリー・バートンの『アローン・アット・ラスト』である。
ゲイリー・バートンはヴァイブ奏者であるが、
僕はまずヴァイブの音が好きなようだ。
一聴するとピアノのような澄んだ音なのだが、
ピアノよりも硬質で、その残響感はみみにすっと馴染んでくる。
ミルト・ジャクソンにボビー・ハッチャーソンなどと
有名どころのヴァイブ奏者はその澄んだ音にネットリしたジャズの味付けをしている。
上品でありながらもジャズ的なそのアプローチは
どことなく歪んだ美しさがあり、そういった感じが僕の好みに合う。

ゲイリー・バートンだが、
有名盤の『ダスター』は聴いてもどうもピンとこなかった。
「いーぐる」の大音量の中で流れたとき
ふっと耳のダイヤルが合ったようで
それからゲイリー・バートンの良さに気づくようになったのだが、
『アローン・アット・ラスト』も「いーぐる」で聴いて
「これは!」という驚愕の美しさに度肝を抜かれた。
それから探し続けてようやく中古で手に入れることができたわけだ。

1曲目の「ムーン・チャイルド~イン・ユア・クヮイエット・プレイス」が素晴らしい。
4本のマレットを操り、ソロ演奏を繰り広げるバートンの
澄みながらも粘り溢れスイングする音色は静かながらも興奮する。
2曲目、3曲目とバートンのソロ演奏だ。
ピアノのようにタッチの感覚で強弱を変えられる訳ではない。
硬めの音は、空気中に張りつめた緊張感が残り、
次から次へと塗り重ねられていく。
無数の音がすっと消えていく瞬間にたまらないほどの感情が揺れ動く。

このアルバムでは、
自分でピアノ、オルガン、ヴァイブと全ての演奏をこなしてもいるのだが、
そちらも聴き所はたくさんある。
何度聴いても飽きることがない上に、ヴァイブの独特の美しさが生きた1枚なのだ。