国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

誰のヒゲか分かります?(答えはすぐ上に)

2010年04月22日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
最初に『スピリチュアル・ユニティー』を聴いたときはぶったまげた。
一応ジャズのつもりで買ったものだから
あの幼稚園児辺りが思いつきそうな単純かつ明快なメロディーと
高音から一気に低音に、低音から一気に高音にとブローする
アルバート・アイラーのサックスにフリージャズという
全く思いも寄らなかった音楽に出会ったわけだ。

2度目に大音量で聴いたとき、
密閉された室内でストーブがついていたせいか
とてつもなく気分が悪くなってきた。
「何なんだ、これは!」とアイラーが悪いわけでもないのに
ひどく『スピリチュアル・ユニティー』を恨めしく思った。
(黒沢清の『CURE』を観たときの気分の悪さに似ていた)

そして3度目に聴いたときに、
「こいつには何かあるぞ!」と気づいた。
何度聴いてもその「何か」がまだ完全につかみきれないのだが、
さりとて毎日腰を据えて聴くにはちょっと重すぎる。

僕の経験からも分かるようにアルバート・アイラーなる人は
ちょっと難しそうなイメージが消えない人だ。
だが一度取り憑かれるとその魅力はじわじわとボディーブローのように利いてくる。
複雑そうだからいいのか?
単純なメロディーと明瞭なサックスの音がいいのか?
未だに分からない。

分からないのだが、このアルバムを聴いてちょっと分かってきた。
『ニュー・グラス』である。
ここのアイラーは全く難しくない。
サックスの心地よい音が耳に溶け込み、
全身をリズムが駆けめぐる単純かつ明瞭なアイラーを聴ける。
ゴスペル、ロック、R&B、そしてジャズと
1つのジャンルに縛られず、
破天荒なほどの明るさとハッピーさを身に纏い
自由闊達にブローするアイラーがそこにいる。

ジャケットの顎髭もチャーミングだ。
なるほど、「新しい芝生」か。
ちょっと白いけど…