国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

阿部薫のサックスにやられてしまいまして……

2009年08月25日 | マスターの独り言(日々色々なこと)
「いーぐる」の連続講演でもやっているが、
実際に音を聴きながら、その音についての解説を聞くというのは、
これは一番分かりやすい。
ただ雑誌などで羅列された美辞麗句よりも
音は何よりも明確にその音楽を表してくれる。

そんなわけで昨日は倣うわけではないが、
動画で実際に音を載せてみようとしたのだが、
まぁ、上手くいかなかった。
ちょっとずつ勉強していくしかないだろう。

何を載せたかったのかというと
「13人連続暴行魔」という映画のワンシーンである。
相当物騒なタイトルであるが、内容はそのタイトル通りのようである。
「ようである」というのは、僕自身、それを通して見たわけではない。
その中に阿部薫のサックスソロシーンが入っている。
「YouTube」でタイトルを入れるとすぐに出てくるので、
これをぜひ見てほしい。

基本的に僕は日本のジャズミュージシャンは聴かない。
ナベサダ、ヒノテルときて、今のお若いお嬢さん方のは全く敬遠である。
これは完全な好き嫌いだと思って欲しい。
阿部薫も名前は知っていたが、聴いたことがなかった。
ところが聴いてみてこれは一発でシビれてしまった。
全くのフリーなのだが、その言葉での表現を越えきったサックスの荒々しさ!
エッジの立った力強く輪郭のはっきりした音が耳を突き抜け、脳天を揺るがす。
荒々しさも行き着くところを越えれば逆に神々しさにも思えてくるから不思議だ。

これにはちょっとやられてしまった。
それが音楽であるか、ジャズであるかという問題もあろうが、
そんな「ちっちゃいこと」を気にするようなことはない。
世の中にはこういう音の嵐もあるもんなのか、と感嘆しっぱなしなのだ。

では、なぜ急に阿部薫なのかというと…
それが今日の話だったのだが、ちょっと長くなってきたので続きは明日に。


YouTubeより「13人連続暴行魔」より 阿部薫
http://www.youtube.com/watch?v=E6gyIHldJyg

スイングしたけりゃグッドマンを聴け!

2009年08月22日 | 他店訪問
今日は「いーぐる」の連続講演に行ってきた。
今日のテーマは「ベニー・グッドマン特集」である。
「キング・オブ・スイング」と言われるグッドマンであるが、
実際はあまり日本ではメジャーではない。
僕もグッドマンのカーネギーホールでのコンサートについては知っているが、
その演奏を聴いたことは全くなかった。

そもそも「アーリー・ジャズ」は、日本ではメジャーにならない風潮がある。
後藤さんも言っていたが、
ジャズ喫茶がその頃のジャズをあまり流していないことも
理由にあるのではないかとのことだ。
ジャズ喫茶というと「ハード・バップ」など
一般的に60年代前後10年の演奏がよくかかるので、
それ以前のジャズというのはあまり聴く機会がない。

今回の講師は小針俊郎さんで、
グッドマンの演奏を6つのパートに分けて解説をしてくれた。
僕が特によかったと感じたのはパート3の歌付きの演奏である。
グッドマンは歌手も美人しか雇わないというような話であるが、
初代のオーケストラの歌い手、ヘレン・ウォードは、
声質も歌い方もとてつもなくよかった。
2代目のマーサー・ティルトンもよかったし、
あまり歌付きのジャズは聴かないのだが、
これからはちょっと注目してみようかとも考えた。

後はパート6のカーネギーホールのコンサートである。
ジャズ最初のコンサートを行ったグッドマンの演奏は、
録音状態はあまりよくないが、それでも十分にスイングするほどの
熱く燃え上がりのある演奏だった。
小針氏は言っていたが、
「スイングは1人できなくて、種類の違う楽器と 演奏者同士の息が
 どこかでピッタリと合った時にスイング生まれるのではないか?」
とおっしゃっていた。

他にもグッドマンエピソードが面白く、
例えばテディ・ウィルソンやライオネル・ハンプトンなど黒人ミュージシャンを
白人のグッドマンが雇っていて、
当時のアメリカの人種差別化では異例のことだと言われているが、
グッドマンは「演奏がうまけりゃいい」ぐらいの考え方だった。とか、
タクシーに乗っても5分間ぐらい行き先を告げず、
運転手に「どこに行くんですか?」と聞かれ、
一歩も進んでいないことに気付かず「いくらだ?」と返したという
「音楽のことしか考えていなくていつも上の空」伝説など
その人となりも結構知ることができた。
グッドマンが、名の通り「グッド」な男ではなく、
ケチで無愛想というのも実は「上の空」状態が
悪い評判として残ってしまったのかもしれないとのことだった。

白人としてジャズオーケストラを作り、
「スイングの王様」とまで言われるようにまでなったグッドマン。
たまにはその「グッド」なサウンドを聴いてみるのも
ジャズの幅を広げてくれるだろう。

音楽はツイテまわる

2009年08月21日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
時季外れな夏の暑さが今更になって押し寄せてきた。
そんな夜には怪談が合う。
「四谷怪談」やら「番町皿屋敷」やら
(日本の怪談ばっかりなのは気にしないで欲しい)
とにかく幽霊たちの恨みは深く、成仏するまで憑いてまわるのだ。

ところがこれは音楽にも同じことが言える。
もちろん恨みがどうこうの話じゃない。
音楽は、そのミュージシャンが死んだ後も付いてまわる。
今日の1枚は、ジャズギターリストのウエス・モンゴメリーの死後発売された。
『ソリチュード』パリでのライブの模様を2枚組にしたアルバムだ。

ウエス・モンゴメリーという人は、
とにかくライブで燃えまくる人だということが分かる。
この『ソリチュード』をウエスの最高傑作に取り上げる人は多い。
聴いみれば一聴でそのグルーブを感じるだろう。
ウエスはとにかく技術的にスゴイ人なのだが、
「ジャカジャカ」としたギター独特の硬い音とは違い、
弦の関係もあるだろうが、「じゅわぁーん」としたおっとりとした
やわらかな響きで、高速で弾きまくる。
しかもリフが出てくるたびに、盛り上がっていく感じがとてつもなくするのだ。

このアルバムには、ウエスのライブ定番曲も取り上げられているし、
コルトレーンの「インプレッション」までもやっている。
ライブのためピアノの音が遠いかなとか思ったりもするが、
痺れるような燃え上がった演奏が繰り広げられているのだ。

もちろんこれで満足できない人は、2枚目に耳を伸ばして欲しい。
昔、ウエスと共演したあのテナーマンがゲストとして参加をしているのだ。
これは『フル・ハウス』の再現だ!

ミュージシャンは自分の死後も演奏したものが残ってしまう。
こっちとしては未発表のライブ音源が出るたびに嬉しく思うのですが、
ミュージシャンたちは一体どう思っているのやら?

攻めろ! エヴァンス -いい加減なフランス語書いてスミマセン-

2009年08月20日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
「ミダン,ミダマゼール,ミスユー……」
とても特徴的なフランス語のアナウンスで始まるのは、
シオン城の写ったジャケットで有名なビル・エヴァンスの
『アット・ザ・モントゥルー・ジャズ・フェスティバル』
通称「お城のエヴァンス」である。
1967年よりジャズ・フェスティバルが行われるようになり、
エヴァンスはその2回目にベースのエディー・ゴメスと
ドラムのジャック・ディジョネットのトリオで出演した。

冒頭、例のアナウンスが入る。
発音は平坦であり、ちょっと妙な切れ方。でもどこか上品。
異国の風に心を鷲掴みされるような最高のアナウンスである。
「…ピアニスト…ビッ・エヴァズ」と紹介があり、拍手が終わると、
「タターンタ、ターンタ、タータ」と激しく力のあるピアノ音が鳴り響く。
そこにエディ・ゴメスの
乱暴な「ガチャ、ガチャ」というベース音が重なる。
「チチチン、チチチチ」とジャック・ディジョネットのシンバル音も盛り上げ、
1曲目の「ワン・フォー・ヘレン」が始まる。

とにかくエディ・ゴメスの「ブン、ブブン」と力任せのソロは圧巻。
それに弾き出されるようにエヴァンスのピアノも勢いづく。
締めのテーマは急ぎ足でどことなく強引にまとめ込んでいるようにも感じるが、
それでも有無を言わせない勢いが溢れていて、
これはもう大喝采以外のリアクションは取れないだろう。
だって今聴いたってめちゃくちゃに興奮するんだから、
その場にいたら手が赤くなるほどの拍手で讃えるしかない。

このアルバムに収録された演奏は、どれもエヴァンスの攻めのピアノが聴ける。
エヴァンスには「リリカル」という言葉がつきまといがちであるが、
いつもただ甘いわけでない。
このアルバムからは十分に曲の意味を探り、
至高の演奏を目指す力強いエヴァンスの姿が見えるはずだ。