国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

黒い音が心地よくなってきた。これを「ジャズ中毒」と言います。

2009年08月02日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
ジャズを聴き始めると
「そんなの聴いてるの?」というような
「俺ってもっと知ってるんだぜ」症候群にかかることがある。

今日の1枚はそんな気持ちを生み出してしまいがちな物である。
ソニー・クラークの『ソニー・クラーク・トリオ』ブルーノート盤である。
ソニー・クラークはあまりアメリカでは人気が出なかった。
しかし日本ではもてはやされている。
そうなるとついつい天の邪鬼的に「大したこと無いヤツだ」と
決めかかってしまいがちなのである。

僕自身も『ソニー・クラーク・トリオ』を買ったばかりの時は、
その良さが理解できずに、ずっと奥の方で眠っていた。
それが最近になってソニー・クラークのピアノの黒さが
異様に気持ちよく感じられるようになってきたわけだ。

今日は4曲目(B面)から聴いてみると、
クラークの粘りっこくも軽やかなピアノへのタッチングを感じることができる。
ベースがポール・チェンバースで、
ドラムがフィリー・ジョー・ジョーンズと当代きっての実力派であるが、
クラークのピアノが全体の演奏をコントロールし、
穏やかで心地のよいスイング間を生み出している。

5曲目は名曲の「朝日のようにさわやかに」であるが、
いつも聴くたびに「どこら辺がさわやか?」と思ってしまうメロディーであるが、
クラークの黒っぽいピアノは、
ピンと張りつめるように、一音ずつ力強いタッチで弾いていく。

6曲目、「四月の思い出」は、ソニー・クラークのソロである。
パウエルの影響を受けた感じが伝わってくる演奏だが、
どっしりと構えながらも耽美的なその響きは、
十分に満足できるものだ。

ジャズはやっぱり一回ではなかなか良さまで掴み取れない。
何度も何度もガムを噛むように、
耳を慣らしていくことで、
そこにある美しさが見えてくるもんなのだ。